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輪行チョイ乗りで満喫する春のテンカラ釣り|RIDE&FISH

ともにアウトドアな遊びだからか、サイクリストには釣りが好きな人が多い。そして釣りをやってみたいと思っている人はもっと多い。それは2022年からバイシクルクラブ本誌で連載している「RIDE & FISH JAPAN」や、2023年の特集「自転車×釣り」に寄せられた大きな反響をみれば明らか。

春は新しいことを始める季節。そして釣りには最高の季節でもある。2024年春、自転車乗りのみなさんには、ぜひ渓流釣りをおすすめしたい。手軽に身軽に、自転車ライドと合わせて楽しめるテンカラ釣り「RIDE & FISH -TENKARA」を始めてみよう!

テンカラ釣りが自転車と好相性なワケ

釣りには膨大な対象魚がいてその数だけ釣法もあるけれど、ここでテンカラ釣りをおすすめする理由は次のとおり。

  • 渓流釣り場が峠を走るサイクリストの行動範囲と重なっている
  • 管理釣り場なら軽装で安全に釣りができる
  • テンカラ釣りはとにかく荷物が少なくロードバイクでも十分運べる
  • よく釣れる(これは人次第?)

峠道を走るのが好きなロードバイカーやグラベルライダー、あるいはトレイルを楽しむMTBerなら、コース脇の渓流で釣り人の姿を見たことのある人も少なくないだろう。実際、田舎の山間部のサイクリングルートには、だいたい渓流魚の釣れる川が流れている。

サイクリングで走り応えのある山間部には、大抵の場合釣りにいい渓流が流れている

とはいえ、本格的な渓流釣りは危険を伴う。川のリスクを理解していないと気軽には勧められない。しかし、自然の川を利用した管理釣り場(釣り堀)なら、足場も安定していて安全に楽しむことができる。何より魚が必ずいる。

「関東には特に自然渓流を利用した管理釣り場が多いんです」と語るのは、奈良子釣りセンターの渡辺 勲さん。山梨県大月市にあるこの管理釣り場は、ビギナーフレンドリーでありながら本格渓流エリアも兼ね備え、県外からも釣り人がやってくる人気スポットだ。

奈良子釣りセンターのリバーキーパーを務める渡辺 勲さん。日夜、楽しい釣りを訪れる人に提供する渓流釣りのスペシャリスト

近隣のサイクリストなら、奥多摩地域の峠を走ることでこのあたりの土地勘をお持ちだろう。筆者も何度か、JR大月駅発着のヒルクライムライドを楽しんだことがある。山に囲まれた好ロケーションで走りごたえは十分。そして都心からJR中央線で1時間弱というアクセスの良さもとても魅力的。

今回は輪行ライドでこの奈良子釣りセンターを目指し、一日釣りを楽しむプランをご紹介しよう。

自転車に加えて、こんな釣りの楽しみを同時に味わえるのが、「RIDE&FISH」という遊び

輪行から始まる釣り

富士山方面を目指す観光客に混ざってJR大月駅に降りたら、バイクを組み立てよう。駅から奈良子釣りセンターまでは10km弱、ほとんど上りになるから軽めのギヤがついたバイクが望ましい。

JR大月駅。中央線で都内からも1時間強とアクセスがいい。富士山方面へ向かう観光客が多いので、組み立ては通行の妨げにならない場所を選ぼう

今回はフラットバーのグラベルバイクをチョイス。釣り場での利便性を考えてフラットペダルでスニーカーにした。ロードバイクで来る人は、履き替えられるシューズがあるといいだろう。バイクには多くのバッグを積載できるが、テンカラ釣りなら荷物は最小限。竿をトップチューブに、釣具をハンドルバーバッグに入れればそれでOK。道具一式で考えても、小さめのバックパックにも余裕で入るサイズ感だ。

1時間ほどかけてゆっくりと上って奈良子釣りセンターに到着。景色を見ながらのライドで、春はこの山間部には花が咲き乱れて気分も上々。

行きは10km弱、上り基調のコースになる。慌てることもないので、山間部の景色を見ながらゆっくり走ろう
山の上の集落の中にひっそりと奈良子釣りセンターはある

シンプル・フライフィッシングなテンカラ釣り

テンカラだけでなくルアーや餌釣りを熟知した渡辺さんは教え上手。奈良子釣りセンターでは釣り初心者にもスタッフがアドバイスをしてくれるというから、気軽に相談したい。かくいう筆者も、釣り経験こそあれどテンカラは初めて。道具立ては竿と糸と毛針だけ。こんなにもシンプルな釣りはなかなか無い。

レストハウスには釣りを愛する著名人のサインがたくさん。奈良子釣りセンターは多くの人に愛されてきた釣り場だ

「近年、アメリカでは“シンプル・フライフィッシング”としてテンカラ釣りが人気になり、日本へ逆輸入されるほどの盛り上がりを見せています。手軽ながら奥深い釣りですが、元々日本では川の漁師さんが手返し良く釣るための技術だったんです」

テンカラ釣りというと、入念な沢登り装備を整えた「ヤマヤ」風の人たちによる上級者の釣りというイメージがあったが、実際はもっとカジュアルに楽しめるものだという。ただし、フライフィッシングがOKでもテンカラがNGな管理釣り場もあるので、事前に問い合わせは必須。奈良子釣りセンターはテンカラ釣りの楽しさを広めるためにイベントも開催しており、デビューにはこれ以上ない環境だ。

池にはニジマスがたくさん……早く釣りたい!

どんな毛針でもいい!?

自分の道具で釣りをする場合は、あらかじめ家で仕掛けは作っておきたい。糸を結んだりという作業は屋外だと手間取ることがある。釣り竿の先端に仕掛けの一方を結び、もう一方に毛針を結べばいい。慣れればものの1分で準備完了だ。本当にシンプル。

バリエーション豊富な毛針は何を選ぶかが問題だが、魚が捕食している虫にサイズや色を合わせるフライフィッシングと違って、テンカラの場合はそこまで厳密でなくていいらしい。自分の好きなものを選べばよいとのこと。

渡辺さんの毛針ボックス。フライ含めたくさんそろっているが、テンカラではあまり種類に拘る必要はないとか

これは、本来テンカラが「移動する釣り」であることに由来する。リールがなく、4m弱の釣り竿が振れる範囲しか攻められないテンカラは、一箇所に留まらずどんどん上流へと移動しながら活性の高い魚を釣る方法だ。何でも食べてくる魚を選んで釣ることになるから、乱暴に言えばテンカラはなんでもいいのだ。大事なのは、ちゃんとポイントに毛針が入ることだという。

フライではマッチザハッチといって、より一箇所にステイして、魚が食べている虫に色と形状を合わせていって口を使わせるのが楽しさのひとつ。だからフライフィッシャーマンは多種多様なフライを持ち込むが、テンカラ釣り師はせいぜい数種類。似た釣りに思えるが、思想が全く違うのである。そしてそれゆえに、テンカラのシンプルさが際立つ。

毛針はまずは既製品で気に入ったものを買えばOK。はまっていくとみな自作になるという

腕の差が一番出るキャスティング

そんなわけでテンカラ最大のポイントは、毛針を魚のいるところに正確に落とすことである。そしてこれが初めてだとちょっと難しい。太い糸の重さを利用して軽い毛針を飛ばすのはフライフィッシングと同じだが、のべ竿を使うテンカラの場合は、竿の反発を生かして糸をムチのように走らせて毛針を飛ばす。

渡辺さんの指導のもと、10分ほど振っていたらだいぶコツがつかめてきた。腕全体で振るのではなく、手のスナップを効かせてコンパクトに振ると気持ちよく飛んでくれる。イメージ的には10時まで振りかぶって、2時で止める。手先はほとんど動かないけれど、毛針が一直線に飛べば成功だ。

最初はどんなにやっても渡辺さんのように飛ばないが、コンパクトな振りを心がけると次第に投げられるようになってきた
とはいえ、3回投げて1回成功すればいい方。すでに楽しくなってきた

正直、このキャスティング動作だけでもかなり面白い。夢中になってやっていると、そこは管理釣り場、水面の毛針に魚が食いついてきた! 慌ててアワせるけれど、針に掛からず。魚がくわえるシーンが丸見えだから、どうしてもエキサイトしてしまう。

釣った後の楽しみは、食べる!

そんなわけで魚の反応はいい。5回ほどアワせミスを繰り返してようやくフッキング! さほど大きくないニジマスだけれど、延べ竿でのダイレクトなやり取りが楽しい。主導権を握られないようにして取り込む。

小型でもニジマスの引きは力強い。延べ竿ではダイレクトにその引き味を楽しめる
釣れてくれたニジマス。きれいな体色をしている

シンプルな釣りだからこそ、釣り初心者にもおすすめだ。2、3投に一回はアタリがあるので釣りの面白みを簡単に味わうことができる。

そして釣った魚はぜひ食べよう! 奈良子釣りセンターでは、釣った魚を料理してくれる。定番の塩焼きはもちろん、フランス焼きとイタリア焼きというオリジナルメニューも。それぞれガーリックバターとオリーブオイルが効いていて美味。「バゲットやその他惣菜を持ち込むとよりおいしく楽しめますよ」と渡辺さん。

上がイタリア焼き、下がフランス焼き。1匹400円で調理をお願いできる。シンプルな塩焼きは300円

施設内にはBBQエリアがあり、事前予約でBBQも楽しめるという。仲間と釣った魚を食べつつ、肉も合わせて食べられるなんて。自転車で山を走った後で釣り&BBQ、なんて理想的な休日だろうか……!

キャッチ&イートは釣りの面白さでもある。塩焼きは小さい魚でも結構なボリューム

さらに奥深いテンカラの世界へ……

奈良子釣りセンターには、自然渓流エリアもある。本格的な渓流デビューの練習をするのにうってつけだ

テンカラ釣りをさらに楽しもうと思ったら、いつかは自然渓流にチャレンジしたい。川を上りながら、ポイントを見極めてテンカラを打ち込んでいく釣りのスリルと興奮は格別だ。ただし、ウェーダー(ゴム長)やその他装備(行動食・クマ対策)は入念に。慣れれば自転車で道具一式を運びつつ、源流域へアプローチする、なんて芸当も可能。釣果を上げるための道具として自転車が活躍する。過去のRIDE&FISHで紹介しているので、ご参考あれ。

【渓流解禁日】自転車と釣りを1日で。バイク&フィッシュで自然と遊ぶ|BIKE&FISH

【渓流解禁日】自転車と釣りを1日で。バイク&フィッシュで自然と遊ぶ|BIKE&FISH

2023年09月01日

奈良子釣りセンターには自然渓流セクションが設定されているので、池で釣り方を覚えたら、渓流エリアにトライしてみるのもよし。また違った難しさと面白さを味わえる。

さらに上級者は、鳥の羽を使ってテンカラを自作するという(タイイング)。渓流で拾った羽で魚を釣るなんてことも珍しくなく、なんとも自然との距離が近い、SDGs的でシンプルな釣りだともいえそうだ。

また、テンカラ釣りの基礎知識は、シマノ「ようこそ、渓流釣りの世界へ!」vol.21に詳しく紹介されている。この日使用した釣り竿「PACK TENKARA(パックテンカラ)ZW」はコンパクトに畳めて、RIDE & FISHにうってつけの一本だ。

畳むと寸法41cmになるパックテンカラ。自転車のトップチューブやフレームバッグからはみ出さないサイズ感でバイクとの相性は抜群
釣りの道具一式はROUTE WERKSのハンドルバーバッグに収納。ショルダーストラップもついているので、釣りをしているときにも持ち運びやすい
当日の装備一式。管理釣り場でのテンカラ釣りだとこれだけ軽装にまとめることができる。ただし山間部なので、帰路を考えて薄手のジャケットや、おやつなどがもう少しあってもよかったかもしれない。トップチューブ下に収まるロッドのコンパクトさにも注目

Information/奈良子釣りセンター

住所:山梨県大月市七保町奈良子10
電話:0554-24-7636
営業時間:6:30-17:00
休業日は公式サイト参照

奈良子釣りセンター
公式サイト

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PROFILE

小俣 雄風太

小俣 雄風太

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

小俣 雄風太の記事一覧

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

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