BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

ビニヤム・ギルマイが歴史的勝利! エリトリア選手として初のステージ優勝|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス2024の第3ステージが現地7月1日に行われ、今大会最初の平坦区間かつ最長距離のコースをビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)が制した。自身初のツール勝利であると同時に、エリトリア人ライダーとして初めて勝者に。このステージでは終盤に大規模なクラッシュが発生し、集団が崩壊。大多数の選手が救済の対象となり、トップと同タイムフィニッシュ扱いとなっている。なお、個人総合首位は同じ総タイムで並んでいる4選手のうち、3日間の全順位合計で最小のリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)に。マイヨ・ジョーヌに初めて袖を通している。

今大会の最長ステージ

6月29日の開幕から引き続きイタリアを走行中のプロトン。第3ステージはピアチェンツァからトリノまでの230.8kmで争われる。今大会最初の平坦ステージであり、ここまでの2日間を耐えてきたスピードマンたちの出番がやってきた。また、今大会の最長距離で、その行程には3カ所の4級山岳が控える。ただ、レースの流れを左右するほどではなく、スプリンターチームによるコントロール下で進行していくものと予想された。

その見立ての通り、逃げらしい逃げがないまま、リアルスタートから少しおいてアルペシン・ドゥクーニンクが集団牽引を開始。ポイント賞のマイヨ・ヴェール2連覇を目指すヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を押し上げるため、まずはレースコントロールを担う。ヨナス・アブラハムセンとヨハンネス・クルセット(ともにノルウェー)のウノエックスモビリティ勢が先行する場面もあったが、逃げの態勢に入るところまでには至らない。ポイント賞と山岳賞で首位のアブラハムセンは、70.8km地点に設置された4級山岳を1位通過し得点を伸ばしている。

© Keita YAMAUCHI

なおもひとつのまま進む集団では、94.3km地点に置かれた中間スプリントポイントに向けてスピードアップ。スプリントフィニッシュさながらの争いとなって、マッズ・ピーダスン(リドル・トレック、デンマーク)が1位通過。このときのトップスピードは77.3kmを記録している。

© Keita YAMAUCHI

再び落ち着いた集団は、平均時速40kmほどのスピードで進む。中盤以降はリドル・トレックやチーム ジェイコ・アルウラーもコントロールに加わって、スプリント勝負に向けた意思を示し始める。この間、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム、イギリス)がパンクしたタイヤを交換したほか、コース近くが地元のマッテオ・ソブレロ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、イタリア)が家族やファンクラブが待つ4級山岳でトップを走行。これらの流れからファビアン・グルリエ(トタルエネルジー、フランス)が単独で前に出る格好となって、集団に対して50秒ほどのタイム差を得た。

そのリードは一時的で、残り28kmで集団が労せずキャッチ。そこからは終盤に向けて各チームが隊列を編成して集団前方でのポジション争い。フィニッシュまで25kmを切る頃には、巡航スピードは50kmを超えた。

© Keita YAMAUCHI

終盤にかけて落車やトラブルが多発

緊張感が増していく中、ところどころで落車が発生。残り13kmではカスパー・ピーダスン(スーダル・クイックステップ、デンマーク)が地面に叩きつけられたほか、残り6kmではマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)がパンク。スピードが上がるばかりの集団に戻ることはかなわず、遅れてフィニッシュを目指すこととなる。

スプリントに向けて活況となる集団前方では、ロット・デスティニーやウノエックスモビリティ、リドル・トレックなどが主導権争い。残り2.6kmでは前線で大規模なクラッシュが発生し、この日の優勝候補筆頭と目されていたヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)が巻き込まれてしまった。

これで集団は崩壊し、最前線には20人程度しか残らない状況に。複数人を残したアンテルマルシェのトレインを先頭に残り1kmを切って、そのまま最終コーナーを抜けた。

© Keita YAMAUCHI

フィニッシュ前400mでデカトロンAG2Rラモンディアール チームやリドル・トレックが上がってくる。最高のシチュエーションとなったピーダスンが真っ先に加速すると、その脇からギルマイとフェルナンド・ガビリア(モビスター チーム、コロンビア)が迫る。コースサイドのバリケード側から伸びを見せたギルマイがピーダスンをかわすと、ついにトップに立ってそのままフィニッシュラインを通過。ギルマイはツールで初めて勝利を挙げると同時に、エリトリア選手初のステージ優勝者となった。

© Keita YAMAUCHI

エリトリア人ライダー初のステージ優勝

近年、アフリカ勢として屈指の強さを見せるエリトリア。アフリカ大陸北東部に位置する国で、1993年にエチオピアから正式に独立。その昔にイタリアの植民地だった時代があり、その影響で古くから自転車競技が盛んだった経緯がある。

© Keita YAMAUCHI

ギルマイ自身は2019年にUCIワールドサイクリングセンター(スイス)でヨーロッパでの活動を本格化させ、2020年にはNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスに所属。2021年の途中から現チームで走る。その後はビッグレースでの活躍が光り、2022年にはヘント~ウェヴェルヘム優勝やジロ・デ・イタリアでのステージ優勝などでトップライダーの地位を固めた。今季もシーズンインから好調で、1月のツアー・ダウンアンダーでは上位フィニッシュを連発。ジロ・デ・イタリアでは途中リタイアに終わっていたが、その後立て直してツールに臨んでいた。この勝利によって、一躍今大会注目の存在となりそうだ。

今大会はスプリントゾーンルール(通称「3kmルール」)の改正テストが実施されており、このステージはフィニッシュ前5km以内でのトラブルに関しては救済対象に。残り2.6kmでのクラッシュで大多数の選手が足止めを余儀なくされ、そのほとんどがギルマイと同タイムでのフィニッシュとして扱われる。

© Keita YAMAUCHI

個人総合時間は同じ総タイムで並ぶ4人のうち、3日間の順位合算で最小のカラパスが首位となって、自身初のマイヨ・ジョーヌ。この日イエローをまとって走ったタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)は、1日で手放す形になった。

© Keita YAMAUCHI

プロトンは翌2日に行われる第4ステージで、いよいよフランスに入国。イタリア・ピネローロを出発し、68.4km地点で国境越え。後半には名峰・超級山岳ガリビエ峠を超え、ヴァロワールにフィニッシュする。レース距離は139.6kmで、獲得標高は3600m。大会4日目にして、マイヨ・ジョーヌ争いの有資格者がある程度明確になってきそうだ。

ステージ優勝 ビニヤム・ギルマイ コメント

© Keita YAMAUCHI

「ついに自分のターンがめぐってきた。本当にうれしい。プランとしてはヘルベン・テイッセンとどちらかでスプリントをするというもので、実際に自分が前方に位置取りできたので勝負することになった。ツール・ド・フランスで勝つことは、最高のスプリンターの中で勝利を挙げるということを意味する。この結果は、私にとってはもちろん、長い間ステージ優勝を待ってくれていたチーム、エリトリア、そしてアフリカ大陸全体に大きな意味を持っている。今はまだ大きなレースの一部となっているので泣いて喜んだりはしないが、心の中では感動でいっぱいだ。言葉にならない」

個人総合時間賞 リチャル・カラパス コメント

© Keita YAMAUCHI

「マイヨ・ジョーヌにはとても驚いている。ツールまでとても長く感じていたし、ツール・ド・スイスでの落車リタイアや、その後の体調不良で走れない時期もあった。ただ、昨日のステージで自信を回復できて、今日はマイヨ・ジョーヌに挑戦してみることを決意した。特に最後の25kmでのチームの働きは見事だった。このジャージは私だけでなく、自転車競技が盛んとは言えない自国にとっても意味のあるものとなるだろう。ここ数年は家族との時間を犠牲にしてきたが、それでもサポートしてくれる人たちには感謝しかない。今日の結果はそんなみんなに捧げたい」

■ツール・ド・フランス2024 第3ステージ結果

ステージ結果

1 ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア) 5:26’48”
2 フェルナンド・ガビリア(モビスター チーム、コロンビア)ST
3 アルノー・ドゥリー(ロット・ディステニー、ベルギー)
4 マッズ・ピーダスン(リドル・トレック、デンマーク)
5 ディラン・フルーネウェーヘン(チーム ジェイコ・アルウラー、オランダ)
6 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)
7 ファビオ・ヤコブセン(dsmフィルメニッヒ・ポストNL、オランダ)
8 ダヴィデ・バッレリーニ(アスタナ・カザクスタン チーム、イタリア)
9 サム・ベネット(デカトロンAG2Rラモンディアール チーム、アイルランド)
10 ブライアン・コカール(コフィディス、フランス)

個人総合時間賞(マイヨ・ジョーヌ)

1 リチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル) 15:20’18”
2 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)ST
3 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)
4 ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)
5 ロマン・バルデ(dsmフィルメニッヒ・ポストNL、フランス)+0’06”
6 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)+0’21”
7 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)ST
8 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
9 ジャイ・ヒンドレー(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、オーストラリア)
10 アレクサンドル・ウラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)

ポイント賞(マイヨ・ヴェール)

ヨナス・アブラハムセン(ウノエックスモビリティ、ノルウェー)

山岳賞(マイヨ・アポワ)

ヨナス・アブラハムセン(ウノエックスモビリティ、ノルウェー)

ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)

レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)

チーム総合時間賞

モビスター チーム 46:01’06

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load