ヴィンテージ自転車を楽しむには? プロに聞く中古フレームを選ぶポイント
ニシヤマ
- 2024年12月29日
チープに自転車カスタムが楽しめるヴィンテージフレームは魅力的だが、新品とは違いそれなりにリスクを伴う。ここではフリマや、ネットオークション、中古ショップなどで入手できる中古フレームを買う際、悪いものをつかまないチェックポイントをレストアに詳しいビルダーの荒井正〈シルクサイクル/絹自転車製作所代表〉 に伺った。
やはり見て触ってフレームを確認したい
中古フレームを入手して組んだところが、乗ってみたらまっすぐ走らない!? という話はよく聞くし、そんな経験もある。フレームを修正するにしても、パーツをすべて外さなくてはならず、非常に面倒なことに。
そうならないために、まずフレームの段階でしっかりチェックをしておきたい。チェックと芯出しを行えればベストだ。
荒井さんによるとネットなど現物を見られない取引は、やはりリスクを伴うという。まっすぐ走らない自転車は事故で歪んでいることが多い。売り手の前の持ち主の事故ということもあり、販売時の説明文だけでは判別がつかないことも。また海外のサイトなどでは悪質なものも少なからずある。
目で見て触って確認できるほうがベターだ。モニターでは分からない不自然なところが、目なら容易に分かることも。ショップでも、フレーム修正の知識があるところのほうがより安心だろう。ある程度の歪みなら、芯出し(修正)で、しゃきっとした乗り味を取り戻せるのが鉄フレームの良いところでもある。
シワってないか触って確認
事故ったフレームはパイプがシワになっていることが多い。だいたいダウンチューブのヘッドのあたり。見ただけでは分かりづらいが、触ると膨らんでいるのがすぐ分かる。フォーク側で歪んでいたり、たまにハンガーの部分がダメージを負っていることも。歪んだフレームは、まっすぐ走らないだけでなく、残留応力によりパイプが割れることも。良いことはないので、基本は手を出さない。
ホイールを入れて前後の接地点を確認
まっすぐ走るか自分で判別する方法。まず前後のホイールを入れてみる。垂直に立てて、接地点の前後が直線上にあるか、真後ろから見て確認する。ハンドルはガムテープで壁に固定。スマホのアプリなどで垂直を確認するといい。前後の接地点がずれてないことは、自転車のキホンだ。
シートクランプ部に注意
量産フレームに多いプレスラグのシート部。シートクランプの過度の締め付けでつぶれてしまっている。つぶれをこじ開いてロウを盛って修正できるが、塗り替えが必要となる。
右ワン付きは要注意
古いタイプのシールドベアリングでないBB。右ワンは高トルクで締め付けられていることが多い。簡易なハンガーワン外ししか持っていない素人では外せない。JIS規格は逆ネジでもある。
アルミフレームはヘッド部にクラック多し
アルミフレームはクラックに要注意。特にヘッドパーツが圧入されているものは、クラックが入っているかいずれクラックが入る運命という。TIG溶接で補修できるが、塗り替えが必要。
やれた感じに塗り替えてあるものも
海外のオークションなどに多い悪い例。オリジナルのペイントに見えるが、じつは経年でやれた感じに演出して上塗りしている。シートクランプ部を見るとクランプボルトを入れた形跡がなく再塗装したのが分かる。こういう場合、サビを処理することなく上からそのまま塗っているものが多い。触るとサビの梨地が分かる。
特殊工具が必要なパーツも注意
今回持ち込んだフレームにあった例だが、特殊なヘッドパーツが使われている。70後半〜80年代にシマノで採用されていたもので、専用のヘッドワン外しが必要となる。一応32㎜で外せないこともないが、ナットをつぶしてしまう。工房に当時の工具があったので高いトルクで締まっていたナットをなんとか外せた。
フレームのチェック&芯出し
フレーム工房ならチェックと修正が可能だ。工房もそんなに多くはないので、まずポイント2の方法でチェックして「見て異常が認められたら、近くの工房を探して持ちこむのもあり」と荒井さん。絹自転車工房では、チェック&軽微な修正で工賃5000円だ。
教えてもらった人/荒井正ビルダー
片倉シルク・ジャイアントでの自転車製造、設計経験を生かし多くの名車をレストア。自ら設計した自転車を作れるフレームビルダー。
絹自転車製作所(シルクサイクル)
埼玉県比企郡鳩山町石坂1414
http://www.silkcycle.com/
「クロモリロードチープカスタム」として連載
プロローグはここまで。買うときにチェックはしたが、フレームに致命的なダメージがないか、改めてビルダーに見てもらうとよい。レストアの模様は「クロモリロードチープカスタム」として引き続き連載していく。
クロモリロードチープカスタム続きはこちら
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