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東洋のリヴィエラと呼ばれた真鶴でフォトサイクリング|ひとりこぎ

神奈川県足柄郡の小さな港町「真鶴」かつては「東洋のリヴィエラ」と呼ばれた。都心からだと電車で1時間半ほど、静かな漁村の雰囲気と豊かな自然を味わえる場所。BicycleClub編集部ニシヤマがオールドレンズをつけたカメラを携えて自転車に乗る「ひとりこぎ」に出かけてみた。

近くもなく遠くもない、行ったことのない港町へ

急傾斜の町で、階段も多い。立体感があり尾道っぽくもある。その地形ゆえ自転車はほとんど走ってない

自転車で一人、あてどもなくぶらぶらしたい。どこか知らないところで、といっても旅といえるほどのものでもない。このごろ、日常から飛び出して旅に出るほどのテンションもない。自転車旅は、それなりにルートも考えなきゃならないし大変だ。

そんな非アクティブな自転車乗りなので、近所をただぶらぶらしているのが好きだが、違う景色も感じたくなった。つまり飽きてきたということだ。
いちばんいいなと思うのは、ピンポイントで知らない町をうろうろ走るシチュエーションだ。ある場所で自転車があって、エアポケットのように時間があるという3つの条件がそろったところで、そんないい時間が生まれる。それが、旅の途中だったりするわけだ。そういう瞬間が好きなのならば、と人為的に作り出すことを思い立ち、出かけることに。

真鶴港の端より高台を見上げる。こちらからの港の情景は、香港っぽい感じがする

決行日は、晴天が確定している明日。一人だから誰と予定を合わせる必要もない。近くもないけど、遠くもなく、行ったことのない場所「そうだ真鶴にしよう」。無計画にして無目的。あえて目的があるとすれば、海の写真を撮ること、あと小田原系とかいわれるラーメンを食べてみたい。

いつもは通りすぎる真鶴に、ワゴンの荷室に自転車を突っ込んで乗り込んだ。自宅から1時間のドライブだ。こういうサイクリングは、やはりクルマがあってこそ。足のある人なら、自走で行ける距離だが、自分は無駄なほどの滞在時間が欲しい。

お昼前の小さな港町は、ぽかんと時間が止まったような静寂感に包まれていた。後からジワジワくる系の地味なサイクリングになりそう。もくろんだとおりだ。

写真映えするコンパクトに凝縮した風情

真鶴半島の先端にある岩礁、有名な景勝地、三ツ石海岸。この岩場を散策するのが真鶴のメジャーな観光スタイルだ

駅からちょっと離れた500円のコインパーキングにクルマを止め、自転車を出して港まで下る。駅は高台にあって、そこから海までの傾斜地にへばりつくような町だ。

真鶴町は、小田原、箱根、熱海といったビッグ観光エリアに囲まれて、存在感が若干薄い。2017年に神奈川県初の過疎地域となり高齢化率も県内で一番高い。県で2番目に小さな町で、想像していたより狭かった。ただ路地をくまなく走るには適度なミニマムさ加減といえる。ただし、坂道が多く階段も多いので、自転車に向いているとは正直言えない。

今回、単眼のオールドレンズをデジタル一眼に装着しており、それで港を撮るのもひとつの目的。坂が多い町は写真映えする。フォトライドに向いている昭和な港町風情が、コンパクトに凝縮しており、撮影していて飽きない。

潰れた酒屋のガラスに写る自分。こんなことをしていたら怪しまれるわけだ

真鶴といえばというラーメン店は、「味の大西」というが、休みだった。もうひとつ目星をつけていた店も休み。やむなく海鮮にスイッチすることにした。観光地では、なぜか海に近いほど高い海鮮丼だが、真鶴魚座の向かいの店は良心的な価格だった。

出先での地元スーパーウォッチングは欠かせない。小田原百貨店パントリーが町に唯一のスーパーだ。だが、品出しをしている高齢の女性から、どうやら警戒されているようだ。

見慣れない自転車で撮影ポイントを探して坂を行き来するのも、目立つ。家の前を掃く老主人のいぶかし気な視線も感じる。よそ者が自転車でぶらぶらしているのは明らかに怪しく、警戒されるのは当然かもしれない。やむなく観光エリアの真鶴半島へ移動することに。

なんか記憶に残る、海辺の町の夕暮れ

真鶴港と自転車。古びたキャラダイスのサドルバッグは、カメラを入れての散歩には大きすぎるが、走っていると厚くなって衣類で満杯になる、春のライドあるある

港町の生活エリアから、雄大な自然ひろがる光景へ。このあたりは観光客にもお薦めできる一級の景勝地だ。ランドスケープは変化に富んでいて、自然もまた美しくもあるな真鶴と思った。ただ、けっこう足にくるなあ。

真鶴の町の北側の岩海岸のほうにやってきた。岩というけれど200mほどの砂浜が広がるエリアで、夏は海水浴客でにぎわうらしい。オフシーズンの今は静まり返っている。このあたりにしてはちょっとした平地があるエリアで、古い家が立ち並ぶが人の姿はまったくない。

民家の軒先に、はっさくが売っていたので100円を缶に入れた。3個のはっさくを前カゴに入れて走ると潮風に柑橘類のよい香りが混ざっていい感じだ。

真鶴道路の岩大橋がシュールなアクセントな岩海岸。多彩な海の情景が楽しめる真鶴

日も傾いてきた。この日4度目くらいの真鶴港に戻ってきて、撮影をした。やはり真鶴でビューポイントは、高台からの港か、港の端から高台を見た光景だと思った。

昭和の時代は、東洋のリヴィエラと言ったとかいうことだが、それはさすがに言いすぎだろう。今では立ち並ぶ建物のくたびれ加減が、香港っぽさを醸しており、それはそれでいい。

港のくたびれた水産加工工場の横の店で、干物を買って帰ることにした。気づけば、5時間以上も真鶴にいたことになる。本日における真鶴の摂取はもう十分と思われる。

心残りなのは、ラーメンだ。小田原系というからには、小田原にもあるのでは?と調べてみると、味の大西は小田原にもあった。小田原店に寄り、ワンタンメンを食べた。サイクリングの後だったので、ひときわおいしかった。

出典

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PROFILE

ニシヤマ

Bicycle Club / 副編集長

ニシヤマ

自転車暦35年以上。中学時代からランドナーに乗る、ヴィンテージ(ジャンク)自転車大好き人間。バイシクルクラブのバイク&キャンプなアウトドア系記事、自転車レストア&カスタム記事など製作。またマニアックな自転車ムック職人。加えて最近は、付録職人でもある

ニシヤマの記事一覧

自転車暦35年以上。中学時代からランドナーに乗る、ヴィンテージ(ジャンク)自転車大好き人間。バイシクルクラブのバイク&キャンプなアウトドア系記事、自転車レストア&カスタム記事など製作。またマニアックな自転車ムック職人。加えて最近は、付録職人でもある

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