アルバニアで開幕のジロ・デ・イタリア アルプスの山岳ルートや未舗装路が勝負のポイントに
福光俊介
- 2025年01月14日
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ロードレースシーズン最初のグランツールとなる、ジロ・デ・イタリア2025年大会のルートプレゼンテーションが現地1月13日に行われた。かねてから発表になっていた隣国アルバニアでの開幕に加えて、この日は3週間・全21ステージの行程が明らかに。総距離42kmの個人タイムトライアルステージ、6つのスプリントステージ、山岳コースがひしめく大会最終週、そして30kmに及ぶグラベルロードと、激闘間違いなしの要素が詰まったルーティングに注目が集まっている。
15回目の国外開幕はアルバニアで
今回で108回目を迎えるジロは、5月9日(金)から6月1日(日)の日程で行われる。既報の通りアルバニアで3ステージを行い、5月12日(月)は移動日に充てられる。第4ステージ以降はイタリア国内を行き、途中でスロベニアにも足を運びながら最終目的地ローマへと向かっていく。全21ステージの総距離は3413km(大会開幕までにレース距離調整で総距離が多少変わることも想定される)で、ステージ平均距離としては162.5kmとなる。
前回大会では山岳比重を幾分減らし、オールラウンドに活躍できる選手向きのコース設定とされたが、今回の総獲得標高差は52500mと、主催者発表によれば前回から10000m増という大幅な変動がもたらされている。それを表すように、丘陵ステージは8つ、山岳ステージは5つ設けられる。加えて山頂フィニッシュも5ステージ設定された。
アルバニアはどんな国?
15回目となるイタリア国外でのジロ開幕。その地に選ばれたアルバニアは、アドリア海をはさんでイタリアと隣り合っている地理的関係もあり、現在は両国間における経済・文化的な結びつきが強い。国情が不安定だったおおよそ30年前には、多くのアルバニア人がイタリアに移民として渡ったことで緊張状態となったこともあったが、ときを経てそのムードは緩和されている。
アルバニアでは3ステージを実施。第2の都市ドゥラスが栄えの開幕地となり、164kmの丘陵ステージで3週間の旅が始まる。第2ステージでは13.7kmの個人タイムトライアルが行われ、早くも選手間でのタイム差が生まれる。続く第3ステージでは160kmの丘陵ステージをこなして、翌日にイタリアへと移動する。
トスカーナの“白い道”を走る第1週
第4ステージから3日間はスプリンター向けのコースが続く。とはいっても、終盤が上り基調の第5ステージ、前半部で丘陵地帯を行く第6ステージと、決して攻略は簡単ではない。
今大会最初の山岳ステージにして、最初の山頂フィニッシュとなる第7ステージ。アペニン山脈へと進み、最大勾配14%のタリアコッツォの上りにトライする。続く第8ステージも複数のカテゴリー山岳を越える。
第1週のハイライトとなるのが第9ステージ。3月開催のレース、ストラーデビアンケのフィニッシュ地でもあるシエナのカンポ広場を目指す間に、トスカーナの白砂の道を30km突き進む。181kmに設定されるレースは、110km地点を過ぎたところから未舗装路となり、全5セクターが選手たちを待ち受ける。最後のセクションを終えたところで、残される距離は14km。プレゼンテーションの壇上に立ったアルベルト・コンタドール氏(2008年・2015年個人総合優勝)は、「マリア・ローザ争いにおける重要なテストステージになる」と展望している。
スプリンターにチャンスが膨らむ第2週
休息日をはさんで、第10ステージから大会の2週目へ。ピサの斜塔が立つミラコリ広場にフィニッシュする28.6kmの個人タイムトライアルは、1977年のクヌート・クヌーセンによる勝利をオマージュしたものになるという。
イタリア半島の背骨ともいえるアペニン山脈へは、第11ステージから再び足を踏み入れていく。このステージ中盤に控える、最大勾配19%のサン・ペッレグリーノ・イン・アルペは、2000年大会では最終決戦地にも選ばれたタフな上り。主催者は今年も波乱があるのではと見込んでいる。
第12ステージから3日間は、再びスプリンターにチャンス。丘陵にカテゴライズされる第13・第14ステージも全体を見通せば平坦基調で、要所の上りをクリアできれば勝負ができそうだ。第14ステージではスロベニアに入国する。
この週を締める第15ステージは、今大会最長の214km。2つの大きな上りをこなしたときには、マリア・ローザ争いはどこまで絞り込まれているだろうか。
アルプスで最後の決戦
大会終盤、第3週はイタリア北部を東から西へ横断する形で針路をとり、やがて最終決戦地アルプスへと入っていく。コンタドール氏とともにステージに上がったヴィンチェンツォ・ニバリ氏(2013年・2016年個人総合優勝)は、「展開次第で簡単に大きな差がついてしまうコースばかり」と分析する。
その初日、第16ステージからカテゴリー山岳を5つ上る本格山岳ステージが置かれる。獲得標高4900mのコースで覇権争いが大きく動くか。続く第17ステージでは、後半におなじみのモルティローロを上る。今回は傾斜の緩やかなモンノ側から上るが、それでも平均勾配は7.6%(登坂距離約13km)。これらを終えると、第18ステージでは平坦路を進む。
第19ステージは、レース距離166kmに5つの上りが詰め込まれ、獲得標高は4950mに及ぶ。1級コル・ッツェコレ(登坂距離16km・平均勾配7.7%、最大勾配15%)、1級サン・パンタレオン(16.5km、7.2%、12%)、1級コル・ド・ジュー(5.1km、6.9%、12%)は、今大会のクイーンステージの呼び声にふさわしい登坂。
マリア・ローザをかけた最後の争いとなる第20ステージは、レース距離203kmで、獲得標高は4500m。2025年大会のチーマ・コッピ(最高標高地点)であるコッレ・デッレ・フィネストレは登坂距離18.5kmで、平均勾配9.2%。上っている間の緩急はそう大きくはないものの、頂上までの8kmから路面が一変し砂利道を走ることになる。ここを上り終えたらいったん下って、フィニッシュ地セストリエールに向かって最後の登坂。このステージを終えた時点でマリア・ローザに袖を通した選手が、大会制覇を実質決めることとなる。
最終・第21ステージはローマへと移動して、フィナーレを迎える。首都での閉幕は、これで15回目。第108回大会の覇者は、コロッセオと古代遺跡を見ながら戴冠のときを迎える。
ジロ・デ・イタリア2025
5月9日 第1ステージ ドゥラス(アルバニア)-ティラーナ(アルバニア)164km 丘陵 ★★★
5月10日 第2ステージ ティラーナ-ティラーナ 13.7km 個人タイムトライアル ★★★
5月11日 第3ステージ ブローラ(アルバニア)-ブローラ 160km 丘陵 ★★★
5月12日 移動日
5月13日 第4ステージ アルベロベッロ-レッチェ 187km 平坦 ★
5月14日 第5ステージ チェーリエ・メッサーピカ-マテラ 144km 平坦 ★★
5月15日 第6ステージ ポテンツァ-ナポリ 210km 平坦 ★★
5月16日 第7ステージ カステル・ディ・サングロ-タリアコッツォ 168km 山岳 ★★★★
5月17日 第8ステージ ジュリアノーヴァ-カステルライモンド 197km 丘陵 ★★★
5月18日 第9ステージ グッビオ-シエナ 181km 丘陵 ★★★
5月19日 休息日
5月20日 第10ステージ ルッカ-ピサ 28.6km 個人タイムトライアル ★★★★
5月21日 第11ステージ ビアレッジョ-カステルノーヴォ・ネ・モンティ 185km 丘陵 ★★★
5月22日 第12ステージ モデナ-ヴィアダーナ 172km 平坦 ★★
5月23日 第13ステージ ロビゴ-ビチェンツァ 180km 丘陵 ★★
5月24日 第14ステージ トレビーゾ-ノヴァ・ゴリツァ(スロベニア)186km 丘陵 ★★
5月25日 第15ステージ フィウーメ・ヴェーネト-アジアゴ 214km 山岳 ★★★★
5月26日 休息日
5月27日 第16ステージ ピアッツォーラ・スル・ブレンタ-サン・ヴァレンティーノ 199km 山岳 ★★★★★
5月28日 第17ステージ サン・ミケーレ・アッラディジェ-ボルミオ 154km 丘陵 ★★★
5月29日 第18ステージ モルベーニョ-チェザーノ・マデルノ 144km 平坦 ★★
5月30日 第19ステージ ビエッラ-シャンポルク 166km 山岳 ★★★★★
5月31日 第20ステージ ベレス-セストリエール 203km 山岳 ★★★★★
6月1日 第21ステージ ローマ-ローマ 141km 平坦 ★総距離:3413km、総獲得標高:52500m
女子はイタリア北部が舞台
このルートプレゼンテーションでは、ジロ・デ・イタリア・ウィメンのコース発表も行われ、総距離939.6kmの全容が明らかになった。
獲得標高差14000mは、前回から1000m増。ベルガモでの13.6km個人タイムトライアルで幕開けし、アプリーカへと上っていく第2ステージで個人総合争いが激化しそうだ。1級山岳ピアネッツェの山頂にフィニッシュする第4ステージが前半戦のヤマ場となり、同じく1級のモンテ・ネローネを上る第7ステージが女王を決める大一番。
2020年の世界選手権でホストを務めたイモラを走る第8ステージで、大会は閉幕。こちらは7月6日から13日までのスケジュールで開催され、男子と同じくRCSスポルト主催のもとレースが行われる。
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。