
タデイ・ポガチャルがシーズン初戦で快勝 2025年はツールとブエルタ、ワンデーにも軸|UAEツアー

福光俊介
- 2025年02月24日
もくろみ通りの華々しいシーズンイン。ロードレースシーンの絶対王者、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)が2月17~23日のスケジュールで行われたステージレース、UAEツアー(UCIワールドツアー)で始動。山岳ステージ2つを制し、文句なしの個人総合優勝を決めた。「1つ目の大きな目標を達成できた」と喜ぶとともに、2025年シーズンの方針も明言。連覇を目指すツール・ド・フランスのほか、ワンデーレースにも注力していく構えだ。
山岳、スプリント、逃げ…何でもありのシーズンイン
今年のUAEツアーは全7ステージ・総距離1013.2kmで争われた。UAE(アラブ首長国連邦)を構成する7つの首長国のうち、6つを通過。7ステージ中4ステージが平坦、2ステージが山岳、1ステージが個人タイムトライアルで構成され、総合系ライダーはもちろん、プロトンの先頭を行くスプリンターたちも多く大会へと乗り込んだ。

ポガチャルにとっては3年ぶりのUAEツアー。過去2回、個人総合優勝をしており、このレースの戦い方は熟知している。そして何より、所属するUAEチームエミレーツ・XRGにとってはホームレース。首脳陣も「シーズン序盤の最大目標」と口にするなど、外すことのできない大事な戦いでもある。昨年、一昨年とチームは大会制覇を逃しており、現役ツール王者にして世界チャンピオンでもある、“絶対的切り札”をUAEに送り込む格好となった。
そのポガチャル、試運転の意味合いもあった今季初戦だが、ここぞという場面ではしっかりと踏み込んだ。平坦にカテゴライズされた第1ステージから動いて、上り基調のスプリントで一気に先頭へ。フィニッシュを目前に失速したが、走りのインパクトは大きかった。「仕掛けるのが早すぎた」とはレース後の談だが、そこはシーズン初戦で感覚がつかめきれていなかったあたりが関係しただろうか。
12.2kmの個人タイムトライアルで競った第2ステージを3位でまとめると、1つ目の山頂フィニッシュとなった第3ステージに照準を定めた。全長21.6km・平均勾配5.4%のジュベル・ジャイスの上りをアシスト陣がペースメイク。それまで逃げていた選手たちを捕まえて、残り1kmで集団を約20人まで絞り込む。ポガチャルは最終局面までアタックを我慢すると、残り200mで急加速。上りスプリントさながらのアタックでライバルの追随をかわすと、今季初勝利となるステージ優勝を決めた。

これで個人総合リーダーとなったポガチャルは、第4ステージでもチーム力でもって横風分断を仕掛けるなど決して手は緩めない。堅実にジャージを守ると、第5ステージではなんとレースリーダーみずから逃げに乗る驚きの展開を演じる。序盤にチームメートのドメン・ノヴァク(スロベニア)とともに集団から抜け出して、やがて先頭グループへ。途中では中間スプリントポイントを1位通過して3秒のボーナスタイムを獲得してみせ、総合リード拡大に成功した。逃げ切りはならずも攻撃姿勢を貫いて、大会終盤へと向かった。

スプリンター勢が主役となった第6ステージも無難に終えると、“本番”ともいえる最終の第7ステージで勝利を確かなものへ。レース前半にプロトンが2つに割れ、巧みに立ち回ったポガチャルは先を行く約40人のグループにジョイン。他の個人総合上位陣と並んでハイペースを構築すると、最後にそびえる登坂距離10.8km・平均勾配6.6%・最大勾配11%のジュベル・ハフィートの山頂を目指した。
このステージでは、チームメートのルネ・ヘレホーツとフロリアン・フェルミールスの両ベルギー人ライダーが機能。クラシックレースで鍛えた脚は中東レース特有の「風」にきっちり対処し、ポガチャルが戦える態勢を整えた。ジュベル・ハフィートの中腹まで集団牽引を担うと、彼らが役目を終えた残り7.8kmで真打ちポガチャルが満を持してアタック。
こうなると、あとは確実に山頂を目指すだけ。独走に持ち込んだポガチャルは、2位のジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)に33秒差をつけてフィニッシュ。最終コーナーに位置どったファンとハイタッチをかわしながら、チーム本拠での大会制覇を喜んだ。

シーズン前半はワンデーに注力 ジロ回避でツール・ブエルタの2冠へ
今季初戦を最高の形で終えた絶対王者は、最終・第7ステージを終えて「ドーフィネ(クリテリウム・デュ・ドーフィネ)まではステージレースには出場しないと思う」と明言。ここからしばらくはワンデーレースに注力することを示唆した。
「今回の決定の大部分は私自身で行ったもの」とも続け、ポガチャル自身が希望するレーススケジュールをチームがサポートする方針だという。「1日走ればすぐに家に帰ることができるから」と冗談めかすポガチャルだが、チーム代表のマウロ・ジャネッティ氏も「シーズン序盤はクラシックレースに集中させる」と述べた。

具体的には、ストラーデ・ビアンケ(3月8日、イタリア)、ミラノ~サンレモ(3月22日、イタリア)、E3サクソクラシック(3月28日、ベルギー)、ヘント~ウェヴェルヘム(3月30日、ベルギー)、ロンド・ファン・フラーンデレン(4月6日、ベルギー)、アムステル・ゴールドレース(4月20日、オランダ)、ラ・フレーシュ・ワロンヌ(4月23日、ベルギー)、リエージュ~バストーニュ~リエージュ(4月27日、ベルギー)を予定。レコン(試走)を行ったことが話題となったパリ~ルーベについては、特段触れられていない。
クラシックキャンペーン後は、高地でのトレーニングキャンプを行ったのち6月のドーフィネへ。そして連覇のかかるツール本番へと向かう。
なお、昨年勝っているジロ・デ・イタリアは回避することが決定的。一方で、8月から9月にかけて行われるブエルタ・ア・エスパーニャへの意欲は見せており、最終的な出場の判断は今後なされる見通しとなっている。

ポルトガルでヴィンゲゴーが勝利 ポガチャルとの対決に期待膨らむ
ポガチャルがUAEで魅せた一方で、ポルトガルで開催されたステージレースのボルタ・アオ・アルガルヴェではヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)が個人総合優勝。最終・第5ステージの丘陵個人タイムトライアルで大逆転劇を演出した。

ヴィンゲゴーもこれが今季初戦。山頂フィニッシュが設けられた第2ステージでトップから10秒差の6位で終えると、以降上位をキープ。迎えた最終日、20km個人タイムトライアルでヴィンゲゴーが真価を発揮した。
最後の2.5kmで高度にして約200mを上るレイアウトをこなすと、この日一番のタイムを記録。土壇場で順位を5つ挙げて、逆転での大会制覇を果たした。
昨年はイツリア・バスクカントリーでのクラッシュによる大けがを乗り越え、ツールで復帰。ポガチャルに敗れ大会3連覇はならなかったが、個人総合2位と底力を示してみせた。その後数レースを走って、早めのシーズン終了。休息期間を長くとって、少しずつ今シーズンへと備えていた。

期待されるのは、もちろんツールでのポガチャルとの直接対決。こちらはステージレース中心のスケジュールが予定されていて、3月にパリ~ニースとボルタ・ア・カタルーニャに出場の見通し。少し空いて、ドーフィネではポガチャルとの直接対決の可能性も。ツール前哨戦、そして本番、さらにはブエルタへの参戦も見込まれており、両者の走りから目が離せなくなりそうだ。
また、アルガルヴェにはヴィンゲゴーとともにワウト・ファンアールト(ベルギー)も出場。スプリントでは不発に終わったが、個人タイムトライアルでは2位と上々の走り。3月1日のオンループ・ニュースブラッドからクラシック戦線に乗り込む構えで、いよいよ仕上がってきた様子だ。
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