転換期に必ず訪れる、本を通したメッセージ|田村浩二さんが読んできた本
buono 編集部
- 2020年10月30日
転換期を嗅ぎ分ける嗅覚という名のスキル
若きフレンチの鬼才として名を轟かせる田村シェフ。(2017年取材時)その才能とセンスは、シェフを目指してから巡り合った数々の名著により形成されてきた。
「実はこの世界に入ったきっかけはスイーツだったんです。最初はパティシエになりたいという思いが強く、食べ歩きに関してはフレンチよりもスイーツの方が多いかもしれません。『パティスリー・パリ セヴェイユ』でケーキの美味しさに衝撃を受け、『パリ↔東京 時差ゼロの菓子』を購入したんです。著者でありパティシエの金子美明さんを尊敬していて、実はシェフになってからお店に来ていただくことがあり、本にサインもいただいています(笑)。他にも初めてフランスに行った際に購入したレシピ本を参考書代わりにしてフランス語を勉強したり、フランスで修行することを決意させてくれた本など、これまでの料理人としての転換期には、必ず意味のある本の存在がありました。そして現在、香りによる料理へのアプローチを始めた際もそれは同じで、大切にしている本があります」
これまで読んできた書物を意味のあるものにする……。この才能と努力こそが、田村シェフの料理人として歩んできた人格を大きく左右している。その都度選ぶべき書物を嗅ぎ分ける嗅覚、これもまた料理人として必要なスキルなのである。
田村さんが読んできた本
【発展期の一冊】
「パリ↔東京 時差ゼロの菓子」金子美明/旭屋出版
料理人としての方向性を決定付けてくれた
「専門学生のとき、進路に迷っていた時期に読んだ本。スイーツに興味があったため、この本を購入しまし たが、結局はフレンチを学ぶことになりました。しかしスイーツにおける料理構成などは、現在の仕事にも 応用できている部分が多いですね」
著者の金子美明さんは尊敬する人物であり、考え方やセンスなどには影響を受けている部分も多いという。
【初渡仏時代の一冊】
「Le LAROUSSE des DESSERTS」Pierre HERMÉ / LAROUSSE
レシピを覚えるために独学で学んだフランス語
『エディション・コウジ シモムラ』で迎えた2年目の夏休みに、スタッフのほぼ全員で訪れたフランスで購入。
「全編フランス語なので、辞書片手に翻訳作業をしたのは良い思い出です」。 中にはびっしりと日本語訳が書かれている。フレンチはデザートまでできて一人前だという考えもあったため、スイーツにも真剣に取り組んでいた。
【成熟期の一冊】
「別冊専門料理 スペシャリテ 2011」柴田書店
日本から世界に目を向け料理の奥行きを知った
仕事を始めて5年。一通りのことができるようになってきたなと感じたタイミングで読んだ本がこちら。
「当時、まだ一般的ではなかった北欧料理が細かく紹介されており、その独創性は衝撃的でした。世界的に 有名なレストラン『noma』も掲載されていて、多いに刺激を受けましたね」。視野を日本から世界に広げ るきっかけとなった。
【転換期の一冊】
「なぜ、日本人シェフは 世界で勝負できたのか」本田直之/ダイヤモンド社
いざフランスへ! 料理人生の原点を探して
フランスで修行してみたいと思っていた田村シェフの背中を押してくれた一冊。
「フレンチをやるなら、やっぱり一度は行っておかなくては、と感じ、すぐに渡仏しました」
1年間の修行で得たものは大きかったという。ちなみに、この本には15人の世界で活躍するシェフのインタビュー記事が載っているが、中でも岸田周三氏の言葉に感銘を受けた。
【飛躍時代の一冊】
「フレーバー・クリエーション」JOHN WRIGHT/講談社
香りというアプローチで料理の幅を広げる
ワインの勉強をするなかで香りついて敏感な嗅覚を持つようになった。そのタイミングで購入した一冊がこちら。
「ひとつの食材を構成している様々な香りが細かく載っており、全く異なる食材でも同じ香り成分を持っているものは相性が良いということを知りました。その結果、飛躍的に料理の幅が広がり、料理に対する視野が変化しました」
Profile
田村浩二
『Edition Koji Shimomura』 で修業を始め、数々の店を経て渡仏。帰国後には複数の賞を受賞し、2017年より白金台の『TIRPSE(ティルプス)』でシェフを務め、厨房を取り仕切った。現在はチーズケーキ専門店『Mr. CHEESECAKE』の他、複数の事業を手掛ける事業家として活動。
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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