本は料理人として進むべき方向を導いてくれる|「KiKi harajuku」野田雄紀さんが読んできた本
buono 編集部
- 2020年11月06日
料理人としての転換期に必ず出会う名著の数々
クラシカルなフレンチを基盤としながらも、カジュアルなメニューが人気を呼ぶ原宿の『KiKi harajuku』。今月は、そのオーナーシェフである野田氏が、料理人人生を歩むきっかけ、そして独立に至るまでに手にしてきた名著の数々を紹介しよう。
「小学生の頃から、肉料理にワインを使ったり、趣味として料理はしていました。高校を中退し、料理の専門学校に入学した際に出会った栗原はるみさんのレシピ本が、料理人として料理が好きになるきっかけなんです。内容的にはいわゆる一般家庭の洋食レシピが載っているんですが、どれもすごく美味しそうなビジュアルなんです。でもレシピ通りに料理すれば実際に作れるというのがうれしくて、この本が料理人としての原点ですね。フランスや帰国後に出会った本も、自分が料理人としてどうあるべきかという方向性を示してくれました。伝統的な技術や考えをきっちり学んだからこそ、今kikiで提供している料理へと進化させることができたんだと思っています」
伝統的な技法や知識ををおろそかにしていては、料理人としての成長はない。そう考えたからこそ、料理に対して真摯に向き合った結果出会った珠玉の書。これこそが、野田氏のこれまでの料理人生を支え、これからの糧ともなる重要な栄養素なのである。
野田さんが読んできた本
【専門学生時代の一冊】
「ごちそうさまが、ききたくて。」栗原はるみ/文化出版局
“美味しい”に、ちゃんとアプローチしたレシピ本
料理人になろうと決意した頃に手にしたレシピ本。特別な料理ではなく、家庭料理としての洋食が掲載されており、ビジュアル的にも魅力的なものばかりだったという。
「専門学生時代は、このレシピ本を参考書代わりに、ハンバーグやパスタなどの料理を作っていました。食材の使い方などは今でも参考にしています」
【キャリアスタートの一冊】
「LE GUIDE CULINAIRE エスコフィエ フランス料理」柴田書店
クラシックフレンチの基本を学ぶために
フランスの名料理人オーギュスト・エスコフィエによる西洋料理書の日本語翻訳版。1400ページを超えるボリュームのなかには、とにかく伝統的な西洋料理の基本がしっかりと書かれている
「全編ほぼ文字という辞典のような本でしたが、この本からはマヨネーズや白ワインソースなどフレンチの基本を多く学びました」
【渡仏期の一冊】
「SAVEURS」Edition Hubert Buruda
料理の自由さや奥行きをビジュアルから学ぶ
22歳で渡仏した際に出合ったフランスの料理雑誌。星付きのレストランが多数掲載されていたが、どれもカジュアルさを優先するなど、その方法論に衝撃を受けた。
「特にアジアンチックなアプローチで仕上げたフレンチメニューなど、新鮮な料理が満載で、現在でも定期購読しています」
【帰国後の成熟期の一冊】
「アート オブ シンプル フード」アリス・ウォータース/小学館
提唱される思想や哲学は独立の参考にもなった
オーガニック料理の母とも言われるアリス・ウォータース氏監修よるレシピ本。フランスから帰国 後に出合った本で、美味しいオーガニックの食材で作るレシピがまるで絵本のような感覚で説明されている。
「料理だけでなく、地産地消といった思想や哲学的な考えも掲載されており、非常に影響を受けた一冊です」
【独立後の一冊】
「ELLE gourmet」発行:ハースト婦人画報社/発売:講談社
料理界のイマを知る大切な一冊
料理全般において、世界中のトレンドが掲載されている料理雑誌。様々な角度で今の流行を知ることができる。
「僕は伝統だけを続けていくのではなく、伝統の技術をベースとして、いかにトレンドとリンクできるのかということを常に考えているので、世界中の料理のイマを知る方法のひとつとして購読している一冊です」
Profile
KiKi harajuku オーナーシェフ 野田雄紀
専門学校卒業後に地元静岡の名店で修行。22歳で渡仏し、フレンチの基礎を学ぶ。帰国し、有名店で研鑽を積んだ後、原宿にカジュアルフレンチの店『KiKi harajuku』をオープン。
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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