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料理好きの憧れの一品、中華蒸篭「大川セイロ店」

電子レンジが登場して以来、家庭で蒸し器が活躍する場はずいぶんと減ってしまった。しかし、電子の力で温める料理と、蒸気でじっくりと蒸し上げる料理では、味もさることながら、料理をする充実感も違う。さらに、蒸篭の選び方ひとつでも、蒸し料理の味が変わってくる。中華街や量販店に行けば安価なものも手に入るが、職人の作る蒸篭は、いかに蒸気を逃さず、いかに器の中で蒸気を対流させられるかが計算されている。多少の面倒はともなうが、素材の美味しさを最大限に引き出すため、本物の蒸篭を知ってみてはいかがだろう。

各地の職人の技術がひとつの蒸篭に

蒸篭の胴輪に穴を開け、桜の皮を通してしっかりとつなぎ合わせる、匠の技のひとつ。

昭和8年に創業した曲げ物専門店・大川セイロ店は、今もなお、昔ながらの製法で、曲げ物を作り続けている。なかでもこだわっているのは、蒸篭の胴の接続部分に桜の皮を使うこと。ホッチキスなら数秒でできてしまう作業だが、あえて手間と時間と材料費をかけて、桜の皮でつなぐ。桜の皮を使ったこの製法は平安時代より前から続いているといわれ、現在東京で行っているのはここだけだという。

「セイロは食べ物を入れるものでしょ。だからできるだけ自然のものを使いたいんですよ」

安全面だけでなく、ビジュアルも良い。薄茶色の木の年輪に、焦げ茶色の桜の皮が交差し、それがアクセントとなってなんとも美しい。この桜の皮は奈良県の職人が皮をなめして作り上げたもので、大川氏自らそれを買いに奈良まで足を運ぶ。なぜなら自分の目で見て、指で触って確かめなければ、納得のいく材料が手に入らないからだ。

大川セイロ店 大川良夫氏

もちろん桜の皮だけでなく、本体の曲げ輪も、北海道の旭川の職人が削った胴輪を使っている。その職人が生み出す胴輪は、1枚の板でもわずかながら下にいくほど厚みをもたせ、合輪をはめ込んだ際に隙間ができない構造となっている。学生時代から父親と一緒に、各地の職人を訪ねて回っていた大川氏。その頃に培った確かな目で、全国から最も良い素材を集められるからこそ、最高の蒸篭を作ることができるのだ。大川氏が作る蒸篭は、年間100個程度。一つひとつ手作業で丹誠込めて作るためには、精 一杯の数だ。そのためお客を待たせてしまうこともあるし、値段も決して安いものではない。 それでも大川氏の工房には、常に注文の電話が絶えない。

父親の代から始まった蒸篭店を守り続け、技術を伝承するご主人の大川氏。

伝統的な製法を守り、すべて手作業で作り上げる

いい蒸篭を作るには、いい道具が不可欠だ。檜を削る小刀や、木を挟む万力などは、それぞれ信頼している鍛冶職人や大工の手で作られた特別なもの。小刀ひとつでも鍛冶職人により、切れ味が変わる。道具職人の腕が落ちると、大川さんの腕も発揮できなくなるというわけだ。

胴輪を削るための小刀。これはサイズ違いではなく、元々は同じ大きさの刃。右は20年間使い込んだもの。変形した柄の部分まで歴史を物語っている。小刀の刃は、信頼する鍛冶職人によるもの。

蒸篭を作るうえで、いかに蒸気を漏らさない品を作れるかというのも、職人の腕が問われるところ。サクサクと流れるように作業を進める大川さんだが、ほとんど定規は使わず、ほぼ目分量で作業を進めている。それでも気持ちいいほど、部品と部品がガチっとハマり、隙間のない完璧な蒸篭に仕上げていく。蒸気を漏らさないという構造については、蓋の部分にも工夫が隠されている。2枚重ねて使うあじろは、竹の網目を45度回転させ、ずらして重ねることで網目の隙間をふさいでいる。さらに大川セイロ店の品には特別な工夫が。2枚のあじろの間に、経木をはさんでいるため、より密閉度を高めている。こうしたひと手間が、より高品質な商品を生んでいるのだ。

木を細く裂いて作った、蒸篭の一部分となる「ウズ」。工房の中には、様々な大きさのウズが並ぶ。

大川さんの熟練の技

ひと工程ずつ丁寧に、丹誠込めて作られる蒸篭。昔ながらの技術を伝承する、熟練された技をじっくりと見ていこう。

1.身(本体)の胴部分の「まちをかく」

セイロの胴部分で、輪が重なり合う端の片方を、小刀を使って丸く削る。この作業を「まちをかく」といい、削る長さや曲線の形は、職人により異なる。目分量で削るのだが、まったく同じに形に仕上がるのが職人技だ。

2.桜の皮で胴の接続部分を止める

胴の接続部分に仮止めとして木工用ボンドを塗り、万力で挟んで固定する。「皮さし」という桐を平らにしたような道具で、接続部分に穴を開け、桜の皮をなめしてひも状にしたものを通していく。

3.細い輪を重ね合わせて身の内側の枠「ウズ」を作る

胴で使った素材と同じ檜を細く切り、輪になる接続部分を削って細い円状の枠「ウズ」を作る。木の端と端が重なる部分を、先端に行くほど薄く削り、ほぼ均等な厚さに仕上がげていく。最後に釘を打って固定。

4.複数のウズを重ねて胴にはめ込む「合輪」を作る

3で作ったウズを、胴の内側に隙間なくはめ込む。3の作業を繰り返し、ひと回り小さいウズを作り、内側に重ねるようにはめ込み「合輪(あいわ)」を作る。さらに繰り返し身の部分が完成。蓋の胴部分も同様の手順で作る。

5.竹で編んだ「あじろ」を切り、蓋を作る

蓋の表面には、細く薄く切った竹を、縦横に編み込まれた「あじろ」を使う。千葉の職人が作った上質なあじろで、これを蓋の曲げ物の大きさに合わせて丸くカット。ひとつの蓋にあじろを2枚使用する。

6.蒸気を逃さない蓋を作る

蓋の胴部分にカットしたあじろを押し込むように入れ、丸く切った経木をのせ、さらにもう1枚のあじろを重ねる。このときに初めに入れたあじろの網目を45度ずらして設置。蓋の内側の仕上げには、3本の竹をクロスさせて補強。

7.蓋の中央部分に取っ手を付けて完成

籐で編んだ取っ手を、あじろの隙間から通す。蓋の内側に付けた合輪の微妙な高低差を利用し、あじろがこんもりと盛り上がるように仕上げた。この丸みのある蓋が器の中に蒸気の対流を生み、食材を美味しく蒸し上げる。

中華蒸篭の正しい扱い方は?

いくら上質な蒸篭でも、使い方や手入れ方法が間違っていては台無し。末永く愛用するには、正しく使って丁寧なお手入れを!

使用中の空焚きと使用後の湿気には要注意

美味しく蒸し上げるには、必ず湯を沸騰させてから材料をのせるのがポイント。お湯がぬるい状態で加熱し始めると、熱の通りが悪く時間がかかり、水っぽい仕上がりになってしまう。長時間蒸す場合は、下の鍋の湯がなくならないよう、途中で様子を見ながら水差しを。空焚きしてしまうと、蒸篭が焦げてゆるんでしまうばかりか、火事の原因にもなるので充分に注意。また、蒸篭はデリケートなので、以下の手入れ方法や保存方法をよく読んで、末永く使えるように丁寧に扱いたい。

【使用前】まずは軽く水洗いを。香りのある洗剤は厳禁

初めに使う場合は、水道水で軽く洗ってから使う。洗剤は香料が木に染みこんでしまうのでの使用不可。水洗いした後は、蒸す前であればとくに乾かす必要はないので、軽く水を拭き取る程度でよい。

【使い方】鍋に湯を沸かして、その上にのせて蒸す

蒸篭をのせても沈まない大きさの段付き鍋や寸胴鍋を選び、湯を沸かす。沸騰してからその上にのせて蒸す。中華鍋を使う場合もあるが、蒸篭の底が焦げやすいので、あまりおすすめできない。

【敷き物】スノコの上に皿やペーパーを敷く

食材を並べる際は、スノコに皿やペーパーを敷いてからその上にせて蒸すとよい。スノコに直接食材をのせる場合は、サラダ油を薄く塗るか、キャベツや白菜などを敷くと食材がくっつかない。

【お手入れ】水洗いで汚れを落とし陰干しで乾燥させる

とくに汚れがちな底部分は丁寧に洗う。洗った後は乾いた布でよく拭き、風通しの良い場所で陰干しを。長期間使用しない場合は、樟脳以外の衣類用防虫剤と一緒に、新聞紙や通気性の良い袋に入れて保存。

中華蒸篭の使い方、これはNG!

  • 絶対に直接火にかけないこと。高さの低い寸胴鍋も、脇から引火する可能性があるので注意。
  • 洗った後に乾かす際は、日向では干さない。直射日光は歪みの原因になるので、必ず陰干しで。
  • 洗剤は使用せず水洗い。どうしても汚れが気になるときは、薄めた洗剤を使用し、充分にすすぐ。
  • 保存の際はレジ袋などのビニール袋には入れない。密閉する袋は、カビや虫食いの原因になる。

プロが欲しがる、もうひとつの銘品「馬毛の濾し器」

美しい網目としっかりしたハリが人気の秘密。

馬の尻尾の毛を使った漉し器も、大川セイロ店自慢の製品。ご主人が曲げ物の技術で胴部分を作り、奥様が馬毛を編んで網目を作るという、ご夫婦の優れた技術が1つになった芸術品だ。網目は小さめの機織り機で、1本1本丁寧に編みこんでいく。中国製の安い品も多いが、ここのできばえは何ランクも上。網目部分をグッと押しても、たわむことなくピンとはったまま。規則正しい網目も、プロからの注文が絶えない理由のひとつだ。

馬の尾の毛(写真上)を使って織り上げた漉し器の網。縦横の毛が均等に配され、網の目の形もすべて同サイズの正方形に整っている。この美しい網目は、ここででしか生み出せない。

 

大川セイロ店(おおかわせいろてん)
住所/東京都中野区上高田1-50-7 大川ビル3F
TEL/03-3386-5379
営業/9:00〜18:00
休み/日曜

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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