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デジタルなアートで20分のバトル! LIMITSはクリエイターの格闘技だ!

20分限定のアートでバトル!

『LIMITSワールドグランプリ』というイベントをご存じだろうか?

20分という制限時間の中、ステージ上で、2人のアーティストがワコムのペンタブレット『Wacom Cintiq Pro 16』を使って絵を描く競技イベントだ。

LIMITS(リミッツ)
https://limits.jp/

審査員の祭典と、会場・ネット配信のオーディエンスの採点を加えた100点満点で、勝者を決定する。2018年で開催されたLIMITSワールドグランプリの優勝賞金はなんと500万円!

そのLIMITSが2019年6月1~2日に東京で開催されたので、見に行ってきた。今回はOculus Rift Sを使ったVR部門が開催されるというのも気になったポイントだ。

20分のエンターテイメントに会場がヒートアップ!

まず、イラストレーションの部門の部門の準決勝を見学。

最初に、具象と抽象の2つのテーマが決定される。スロットマシンのように、テーマがグルグルと回って選ばれる。たとえば、冒頭に掲載したメイン写真の対決の場合は『海』と『疑念』。

そして、各国の予選を勝ち抜いてきたアーティストが、満場の観衆の前で、イラストを書き始める(使うアプリは選べるようだった)。

20分で、絵を描くとなると、かなり時間は限られている。やり直している時間はないから、一発勝負になる。

特に、2つのテーマを盛り込まないといけないから、テーマを与えられたその瞬間に、絵柄を考えて、構図や演出を考えて、描き始める必要がある。そこが難しそうだった。

「アイデア」「スピード」「テクニック」「ビジュアルストーリーテリング」という4つのテーマで審査されるということだが、見ていてもちょっと審査基準が不明瞭な気がした。観客の投票も入るというから、厳密な絵の審査というより、エンターテイメントとしての競技のような気はする。絵のカテゴリーが違いすぎて、審査は難しい気もするし。

途中で、フィルターをかけたり、拡大縮小を使ったりして、ガラッと絵柄が変わったりすると『ワーッ!』と盛り上がって点数が上がったりするから、そういう演出も大切な要素のようだった。

絵を描いて対決というと地味だと思うかもしれないが、大きな音楽が鳴り響き、きらびやかな照明はまるでクラブのよう。レーザー光線が飛び交い、声援や喚声で盛り上がる中で、20分間絵を描くというのもなかなか新しい演出だ。

サイトに動画もあるから、ぜひご覧になってみていただきたい。
https://www.youtube.com/channel/UC1FVt17iyF6R-BS-2QxhtVQ

トーナメント制で勝ち抜き、2日間をかけて勝者が決まる。

LIMITSのVR版が、Oculus Mediumを使って行われた!

さて、もうひとつが、私が興味があったのはOculus Rift Sの3Dグラフィックツール『Oculus Medium』を使ったVRアートのLIMITS。

Oculus Medium
https://www.oculus.com/medium/?locale=ja_JP

VR空間に入って描くVRアートは、イラストレーションのようでもあり、彫塑のようでもあり、空間アートのようなものでもあるはずだ。とても楽しみ。

当日はOculus Mediumの開発者であるBrian Sharp(ブライアン・シャープ)氏も壇上に上がり、その可能性を語った。

Oculus Mediumは、VR空間の中で左右の手に握ったコントローラーを使って絵を描く。左手が主にパレットやメニュー。右手がブラシだ(たぶん、逆にも出来ると思う)。

基本的な操作はチューブからひねり出す、粘土細工に似てる気がする。

右手のブラシから、ムニュムニュとひねり出し、盛り上げていく。

しかし、特徴的なのがそこには重力が作用しないことだ。

実際の粘土細工や彫塑では、『どうやって支えるか?』という構造的問題が重要なテーマになるが、Oculus Mediumの世界では、まるで無重力空間にチューブからひねり出したババロアで造型しているような感じでカタチを作っていく。

また、削ることも、表面をなでてスムーズにすることも、塗装することもできる。

また、ベクターデーターのとして、球や、直方体などの立体物を作り出すこともできる。動物や人間などを描く時と、ロボットや宇宙船などを描く時に、このあたりを使い分けるのだろう。

実際に。壇上に立って、VRアートを描いてらっしゃるのを見て、非常に大きな新たな可能性を感じた。

きっと、絵描き、イラストレーター、彫刻家、YouTuberなどの先に、VRアーチスト、VRモデラー、VR建築家、VR環境デザイナー……などの職業が生まれて行くに違いない。

まだ、競争は少ないようだから、チャレンジするなら今だ!

VR空間でのアートバトルはスリリング!

さて、Oculus Rift Sと、Oculus Mediumを使った競技『VR Sculpting Battle』を見学した。こちらも、イラスト版のLIMITSと同じく、テーマが選ばれ、20分間に限定してバトルが行われる。

しかし、アーティストはOculus Rift SをかぶってVR空間に入ってしまうから、よりショーとしては不思議な感じだ。

筆者が見た時に選ばれたテーマは『歯車』と『希望』

右のGio Nakpilさんは、実際に映画のキャラクターモデリングなどを手がけている人だそうで、キャラクターの造型が上手かった。歯車の一輪車に乗って、岩から岩へジャンプする光景を描いていた。

左のRoseさんは、ベクターデータの扱いが上手いそうで、カプセル状の形状を上手く組み合わせて、ロボットと歯車、歯車で構成された鳩を描いてらっしゃった。

物体を回転させてロクロのように成形するテクニックなどを使ってらっしゃって、場内から喚声が上がっていた。

絵を描くとともに、エンターテイメントでもあるという競技なので、見ていてとても面白かった。拡大縮小は自由なので、ゴジラのような巨大な怪獣を作ることもできれば、建築物を作ったりもできるだろう。

観客はモニターを通して見るわけだが、ゆくゆくは我々もVR空間に入ってアーティストのパフォーマンスを見たりもするのかもしれない。

このふたりの戦いはローズさんの勝利だった。これは面白い。動画もアップされていると思うので、ぜひご覧になってみていただきたい。

筆者も体験してみたが、とても面白そうだった!

さて、会場ではこのOculus Rift Sと、Oculus Mediumも展示されており、実際に体験することもできた。

時間も10分ほどしかなく、どのボタンがツールで、どうやったら絵を描けるのかが飲み込めなかったので(VRツールの常で、外からはとても指示しにくい)、グニョグニョした形状を空間にひねり出すことしかできなかったが、とても面白かった。

これまでのコンピュータと違って身体的でもあるので、ちょっと慣れればコンピュータに詳しくない人でも造型できると思う。

いわゆるCGをやる人でなく、実際の彫刻家や、モデラーでもすぐに使いこなせるようになると思う。

これで造型した物体は、3Dプリンターで出力することもできるそうなので、用途はさらに広がるだろう。

残念ながら、演算能力の問題で、このOculus Mediumは、Oculus Riftシリーズでしか動かないらしく、Oculus GoやOculus Questでは動作しないらしい。無念。

Oculus QuestでのVRお絵描きアプリとしては、Googleから出ているTilt Brushがお勧めだそうなので、筆者も早速帰ってTilt Brushでの造型にチャレンジしてみようと思う。

Google Tilt Brush
https://www.tiltbrush.com/

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年6月号 Vol.92』

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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