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5分で分かるWWDC19。身近な所から、超高性能Mac Proまで『全方位OS戦略』

発表が多すぎて『頭がボーン!』

まったく圧倒され尽くした2時間半だった。

WWDCの取材に来るのは、3回目だが、これほど多くの要素を、乱れ撃ちに撃ちまくったWWDCは過去になかった。2時間半という時間も長いし、数秒に1枚スライドがあるほど、情報量が多かった。あまりに多くの要素が発表されて、終わって5時間ほどが経った今もまだぼう然としているほどだ。

招待状や、マッケナリーコンベンションセンターの外観のディスプレイが、『頭がボーン!』となって、アプリが山ほど飛び出しているグラフィックであることの意味が分かった。おそらく、中の人も『頭がボーン!』となるほど、多くの要素を伝えたかったのだと思う。

とはいえ、そんなことを言っても混乱するばかりだと思うので、ここではまず、超々重要な要素だけ書き出しておこう。詳細はまた別個の記事として、お届けする。

とても重要なポイントは
●watchOS 6、iOS 13ローンチ
●iPadOSが独立、高性能化
●Sidecar登場
●macOS Catalina(カタリナ)ローンチ
●超々々高性能な新Mac Proと、Pro Display XDR登場
……というところだろうか?

いや、項目を挙げはじめると、書かなければならないことが無限に出てくるのだが、ひとまず、上記について説明しよう。

なお、いずれのOSも、今日からβ版がアプリ開発者に向けて提供され、一般向けに公開されるのは『2019年秋』になる。

watchOS 6、iOS 13ローンチ

本来、これだけでも語るべきことがいっぱいあるのだが、駆け足で。

Apple Watchを司るwatchOSは第6世代となり、さらに洗練度を増した。ウォッチフェイスには、生活サイクルを反映した、さまざまなバリエーションがさらに増える。アプリはiPhone側と関係なく単体で動作するものを作れるようになり、Apple Watch上にApp Storeが登場し、単体でアプリをダウンロード、動作させることができるようになる。

また、女性の生理周期を管理するCycle Trackingや、耳の健康のための周囲の騒音状況を記録するアプリなど、新機軸のヘルスケアアプリも増えてきている。

iPhoneのiOS 13にはダークモードが登場。シックなデザインで統一することができる。

地図アプリが大きく進化し、新しく、さらに現実に即した地図を利用できるようになる。これは、先日フリックが!目撃したような( https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-483835/ )独自のイメージ収集車が情報収集したものから、精密な情報を盛り込んだものになるのだろう。

新たに『ルックアラウンド』という機能が登載される。つまりはGoogleの『ストリートビュー』のような機能なのだが、非常にスムーズで高精細、かつAR的な注釈の入った映像を楽しめるのだという。

iOS 13の要素はまだまだあるのだが、それは後日説明するとして、先に進もう。

iPadOS登場!

驚いたのが、『iPadOS』が登場したことだ。

もともと、iPadのOSは、誰もが知っていて使いやすいiPhoneのOSと共通のものとして進化してきた。

しかし、昨秋発表されたiPad Proをはじめ、使い方によってはパソコンを凌駕するほどの機能を持つiPadを活用するには、もともとiPhoneのOSであるiOSと分離せざるを得なかったのだろう。

これでiPhoneとの共通性を心配することなく、独自の進化を邁進することができるようになる。

代表的なのが、Split ViewやSlide Overといった機能が使いやすくなり、さらに多機能になったことだろう。

多数のSlide Overをクルクル切り替えて使ったり、作業スペースをまるでMacのExposéのように縮小して表示してみせたり、同じアプリでSplit Viewを使い、たとえばWord書類を2枚開いたりすることができるようになった(以前はSplit Viewは別アプリでしか使えなかった。

iPadがMacのサブディスプレイに!

さらに! 私のようなMacBook ProとiPad Proを持ち歩いている人間にとってはとても便利なことに、iPadをMacのサブディスプレイとして使えるようになった。

これはUSB-Cによる有線接続でも、Bluetoothを使ったワイヤレス接続でも可能。MacとiPadを別々に使ったり組み合わせて使ったりできるから、使い方のバリエーションが増える。

また、iPad側は、タッチパネルとして使うことができるから、アプリの対応次第では、ペンタブレットのように使うことができる。つまり、MacアプリにApple Pencilで書き込むことができるのだ。

グラフィックアプリなどでは、非常に大きく可能性が広がりそうだ。

macOS 10.15 Catalina(カタリナ)ローンチ

さて、話はさらに広がる。

MacのOSであるmacOS 10.15はCatalina(カタリナ)と呼ばれる。こちらの予想( https://funq.jp/flick/article/486807/ )は外れたワケだ。カタリナはロサンジェルスの沖合いに浮かぶ、ハリウッドセレブも訪れるリゾートアイランド、サンタ・カタリナ島を示していると思われる。

macOS 10.15 Catalinaにもさまざまな新機能がある。iTunesは分割され、Apple Music、Podcast、TVアプリケーションiTunesはむしろTVとPodcastの機能を取り込むものになった。

写真アプリの写真管理も進化し、レシートやメモの写真などがあっても、それを無視してベストショットだけをセレクトしてみせてくれる機能が付いた。その他、リマインダーがまったく新しくなり、メモもリニューアルされた。

超々々高性能な新Mac Proと、Pro Display XDR登場

さて、そして、超絶進化を遂げたMac ProとPro Display XDRである。

Mac Proはデザインも一新され、高負荷な仕事を速くこなしてくれるマシンになら、いくらでもお金を払う……という人にとって最高のマシンになった。

CPUは最大で28コア登載可能。電源は1.4KWで、3つの冷却ファンを持ち、12のDIMMスロットを持ち最大で1.5TBのメモリーを登載可能。GPUはRadeon Pro Vega II Duoをさらに最大で2台登載可能。2つのMPXモジュールか、4つのPCI Expressカードを登載可能。さらに8Kビデオを平然と扱えるPCI Express x16のAfterburnerを登載可能。

その性能は最大で8K・30fpsのProRes RAWビデオを3本、もしくは4K・30fpsのProRes RAWビデオを12本扱えるという超絶的な性能。

さらに、一緒に使うのに最適なPro Display XDRは32インチ、6K(6016×3384ピクセル)、1600ニトの圧倒的明るさ、100万:1という凄まじいコントラストで、P3色域の10ビットカラーを扱えるという、これまた意味が分からなくなるほど圧倒的な性能を持つディスプレイ。

1台で2040万ピクセルを表示できるこのディスプレイを、Mac Proは最大で6台接続できる。つまり、1億2240万ピクセルを扱える(ちなみに、普通のMacBook Airのディスプレイが約400万ピクセル)という。もはや何がなんだかわからない。

ちなみに、スペックもすごいが当然のことながら価格もすごそうで、Mac Proが5999ドル〜、Pro Display XDRが4999ドル〜……なので、両者を揃えると最低限のスペックでもおよそ120万円〜ということになりそうだ。

ここから生み出されるものこそ大事

いろいろなものが発表されたWWDC19だが、現場で一番の喝采が起こったのは先進的な開発ツールであるSwift UIが発表された時だった。

Swiftのコードを書くと、そのままグラフィカルに表現され、逆にその画像の方に手を加えるとコードの方が変化するという先進的なプログラミングツールなのだが、その他にもAR関連のツールの発表もおおいに盛り上がっていた。

これらのOSが我々の目の前に現れるのは秋。その頃には、今日のKeynoteを聞いていた人たちが、このOSに適合したアプリをリリースしてくれるはずだ。

プロ中のプロ向けのMac Pro、iPadOSの分離など、超プロ向けプラットフォームの充実をはかりながらも、Apple WatchやiPhoneなど身近なデバイスはどんどん使いやすくなってくる。

これらをすべてまとめて、関連付けて提供する『全方位戦略』を展開できている企業は他にない。

アップルは他に類を見ない世界観で、超プロ用のパソコンから身近な、パソコン、タブレット、スマホ、スマートウォッチまでのデバイスを連携させて使える環境を提供していることを、あらためて感じさせられる発表会だった。

明日以降は、発表されたそれぞれのテーマについて、個別に解説していきたい。

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年7月号 Vol.93』

(村上タクタ)

 

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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