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WWDC 19の主題は『根っ子の統一』と『製品構成拡大』と『プライバシー』だ

今年の基調講演は盛りだくさん過ぎた

本当に数多くのことが発表されたWWDC(アップルの世界開発者会議)の基調講演だったが、話題が多すぎて混乱をきたしたような気もする。サンノゼから日本で記事をまとめてくれているスタッフに電話をかけて聞くと、日本での話題は『iTunesがなくなる』という誤った情報と、『Mac Proのカタチに関する大喜利』ばかりだと聞く。

これらは日本だけでなく、世界的な傾向のようで、これには「本質的なメッセージが伝わらない」とアップルの広報も頭を悩ましているようだ。Keynote自体、伝えたいことが多すぎて飽和、混乱してしまっていたようにも思う。撮影していて分かるのだが、とにかくスライドの枚数も多かった。

そういえば最近、CEOのティム・クック氏が話をしている時間はとても、短くなって各部門のVPやSVPにパスされてさらに、現場のトップ的な人が詳細を語ることが多くなってきている。今回は特にクレイグ・フェデリギ氏の登場機会が多かった。iTunesの話が混乱したのは、この人の冗談が過ぎた……ような気がしないでもない。面白いから好きですけど。

さて、アップルは本当はこの発表会で何を伝えたかったのだろうか? 少し考察してみよう。

土台は共通、エンジニアはひとつのコードを書けばいい

大きく3つ掲げるとして、ひとつは根源的なプログラミング環境が統一されて行っていることだろう。

もとより、iOSも、いにしえのMac OS Xをルーツにしているのだから、iOSから派生したtvOSも、iPadOSも、Core OSやCore Serviceなどの一番の土台の部分は共通だ。

そこに、WWDC 18で発表された『iOSアプリをmacOSで動くようにする』という計画、プロジェクトCatalyst(カタリスト=触媒)が加わる。

どちらにせよ、土台は共通なのだから、iOSで動作するUIKitをmacOSで動くようにすれば、世界中で何億という端末で動いているiPhone、iPadのアプリがMacで使えるようになるというわけだ。おそらく、ゆくゆくはMacでのみ使うようなタイプの専門的アプリ以外は、iOSで開発して、iPhone、iPad、Macで共通で使える……というパターンが増えて行くのだろう。

事実、Mac用のアプリの提供をやめていたTwitterも、このプロジェクトCatalystを使って、Mac用のアプリを開発したという。

また、SwiftUIも重要な役目を担う。実はWWDC現地で、参加している開発者から一番大きな歓声が上がったのがSwiftUIの発表だった。我々非エンジニアには分かりにくいポイントなのだが。歓声が鳴り止まなくて、フェデリギ氏が話を続けられなかったほどだ。

SwiftUIはより少ないコードで記述できるようになっており、コードが動作した結果をその場でビジュアルとして見ることができる。さらに、ビジュアル側に手を加えると、コード側が修正されるという仕組みを持っており、よりコーディングが容易になる。また、ビルド時のチェックボタンの設定次第で、macOSでも、iOSでも、iPadOSでも動作するアプリを作ることができるのだ。

開発者としては、より容易に多くの人に、さまざまな環境で使ってもらえるアプリを作ることができるようになるはずだ。

製品構成の上へのシフト

2つ目は、製品構成の多様化と、ワイドラインナップ化だ。製品は全体的には上にシフトしていっている。

watchOSは限られた画面サイズと操作系で、できる範囲の機能を受け持つようになっている。すでに単独で電話もかけられるし、Bluetoothヘッドフォンに音楽を流すこともできる。今回は単独でアプリを購入、ダウンロードできるようになったことも発表された。

iPhoneの大画面化、多機能化はみなさんご存じの通り。

iPad Proが登場した影響も大きいが、iPadOSは独立して、従来ノートパソコンが受け持っていた機能の多くをこなすことができるようになってきた。

iPadをマルチタスク、マルチウインドウ的に使うことも可能になっているし、外付けHDDを繋いでファイルをブラウズすることもできるようになった。iPad Proならスマートキーボード、それ以外のiPadでもBluetoothやLightningコネクターを経由して様々なキーボードを使える。アップルは公式には発表していないが、iOS 13ではマウスを使う手段もあるようだ。タッチパネルが使えて、直接画面に触れるiPadはApple Pencilも使えるから、用途によってはmacOSより便利に使える。

MacBook Airも昨秋登場したし、Mac miniもあるから、廉価なMacがなくなることはないだろうが、Macの高性能化も著しい。

MacBook Proの15インチは8コアも登載可能で、外部GPUでさらに処理能力を向上させられる。Mac miniは複数台をスタックして分散処理をさせることもできる。また、iMac Proもある。このあたりのマシンは、明らかに従来ならMac Proが必要だった作業を軽々と行うことができるようになっているのだ。

その上にMac Proの登場である。

(それぞれの商品のカバー範囲が少しずつ上にスライドし、さらに新型Mac Proが登場した……というイメージをなんとなく図にしてみた……が分かりにくいですね)

従来、Macではできなかった高度な処理が可能になれば、超ハイエンドなプロユーザーを取り込むことができる。頂点を押えれば、それに追従するユーザーもMacを使うようになる可能性が高まる。

Apple WatchからMac Proに至る、巨大な商品構成のピラミッドが、さらに強固に高くなり、互いに連携しあって、アップル製品を使うユーザーの快適感を増していく。これの高性能なデバイスから、身体に付けるデバイスまでトータルの商品構成でサービスを提供することは、Androidを作るGoogleにもWindowsを作るマイクロソフトにもできない。

アップルにしかできないプライバシーの確保

3つ目は、繰り返し以前から言われていることだが、セキュリティとプライバシー機能の強化だ。

ビジネスとして個人情報に基づく広告展開をせざるを得ないGAFAの他の3社(Google、Amazon、Facebook)と異なり、アップルは端末が売れて利益を得られれば、ユーザーの個人情報を売る必要がない。

仕事として、SNSをしても、買い物をしても、その行動情報がクライアントに売られ、それらの会社が肥え太っていくことに貢献せざると得ない……という世の中がイヤなら、端末の価格は高いかもしれないがアップルのサービスを使った方がよい(が、正直、それだけでは済まないが)。

指紋認証(Touch ID)や、顔認証(Face ID)で個人を認証する情報はセキュリティチップT2や、Aシリーズのチップで暗号化され、アップル自身も把握しないし、流出する恐れはない。

iPhone、iPad、Macなどのアプリも、どのレベルの情報にタッチすることができるかは厳密に規定され、必要に応じてユーザーの認証を得るようになっている。

たとえば、iOSのMapで移動経路を検索したとしても、そのルートは、『現在地近く』と『途中』と『目的地近く』の3つに分割され、暗号化されてそれぞれに処理できるから、行動経路すべてをOS側も持たないようになっている。

OSが把握している情報、アプリがタッチできる情報、端末に閉じこめられる情報、ネットに出していい情報なども厳密に規定され、必要に応じて前述の生体認証を減るようになっている。このあたり、ハードもOSもアプリも統括的に設計できるアップル製品にしかできないレベルの厳密な個人情報管理が行われるよういなってるのだ。

『多彩な商品』に向けて『容易に』『プライバシーを守って』アプリを開発できる

ちょっと小難しい話になってしまった部分もあるが、WWDCはそもそも開発者向けのイベントなので致し方ない部分もある。

つまり、総括すると、秋ローンチの各OSによって、開発者は『より多様なデバイス向けのアプリを簡単に』作れるようになり、『商品構成は多彩かつ強固に』なり、『個人情報はより強固に守られる』環境ができる、ということだ。

これが、アップル製品に関わる開発者に伝えられたということは、将来的に我々はアップル製品を使うことで、そういうサービスを享受できるということ。

それが、WWDCで発表されたことの一番重要なテーマだと思う。

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年7月号 Vol.93』

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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