ついにiPhoneから独立した『iPadOS』。何が変わるのか?
- 2019年06月07日
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iPhoneのOSから離脱した、『iPadOS 13』
「みんなが使い慣れたiPhoneと同じ使い勝手だ!」と言ってジョブズがiPadを発表したのが9年前。iPadは高性能化を続け、ある部分ではノートパソコンを凌駕する性能を持つに至った。
マルチタスクや、スマートキーボードなどを組み合わせて、どんどん高度になっていくiPadは『パソコンでやっていた仕事をする』ための機能も求められてきていた。
そこで、今回発表されたのが『iPadOS』の、iOSからの分離だ。
ちなみに、バージョン番号はiOSのものを引き継ぐので『iPadOS 13』からスタートすることになる。
内部構造は共通化、インターフェイスは個別進化
もとより、MacとiPhoneのOSも根幹のCore OSやCore Servicesの部分は共通。
ディスプレイへのタッチイベントなどを制御するiOSのUIKitと、マウスコントロールやウインドウサイズの制御などを行えるmacOSのAppKitが、その上に乗ることでそれぞれの違いが出来ていた。
また、プロジェクトCatalystによって、macOSにもUIKitの一部機能が登載され、この秋からiOSアプリをMacでも動くように開発するのがさらに簡単になる。SwiftUIを使えば、同じコードを書いて、iPhone用アプリ、iPad用アプリ、Mac用アプリをそれぞれ生成することもできる。
つまり、内部構造はどんどん共通化が進み開発は容易になっているのである。
その上で、iPhone、iPad、Mac、それぞれの特徴を活かした、利便性、機能が追求されていくということだ。
やっと間延びした感じのなくなったホーム画面
象徴的なのが、iPadのホーム画面だ。従来は左からフリック!すると見ることができていたウィジェットを、ホーム画面に表示する設定が可能になった。
iPad Proのホーム画面は、縦横、それぞれ1列アイコン表示が増えており、さらにウィジェットを表示することで、アイコンが詰まった表示になる。
思えば、最初にiPadが登場した時に、『アイコン表示がずいぶん間延びしている』と思ったものだが、iPhoneとのOSの連携を断ち切ることで、ようやく情報密度の高いホーム画面を得ることができたのである。
パソコンとは違う『iPad』のホーム画面である。
同じアプリの別書類を、Split Viewで同時に開ける
機能として強力なのが、マルチタスキング機能の強化である。
iPhoneと違って、『作業をする』可能性のあるiPadでは、複数のアプリを立ち上げて、操作する昨日が求められる。
新しいiPadOSでは、右側からフリックインすると、すぐにSlid Over(アプリをiPhoneアプリ幅で縦長に表示する)として、小さい画面でアプリを立ち上げることができる。必要に応じてこのSlid Overのアプリは簡単に切り替えられる。
また、Split View(iPadアプリを複数表示する)では、同じアプリの画面を複数表示できるようになったのが大きなポイントだ。これまではアプリ単位での表示だったので、たとえば原稿を2枚表示するとか、ウェブサイトを2枚表示するとかいうことができなかったのだ。
さらに、つまむようなアクションをすることで、MacのExposeのように特定のアプリの全ウインドウを開いて見ることもできる。
3本指を使ったジェスチャーも増えており、画面や開いているウインドウをより自由に扱えるようになっている。
外付けHDDの画像をブラウズできるなんて!
また、ファイルアプリも進化した。これまでできなかった『新規フォルダを作る』というようなこともできるようになったし、リスト表示で階層を下って行くこともできる。ここにきてようやく、iOSが拒絶してきた。ファイルを扱うということができるようになったのだ。
さらに、USBメモリーを扱えるようになったというアナウンスもあった。
実はこの機能、iPad ProでUSB-Cメモリーを扱えるだけでなく、Lightningコネクターから変換アダプター経由で、USB-Aのメモリーも使える。そればかりか……実は、USB-Cや、USB-A経由で、HDDやSSDドライブを接続しブラウズすることができるのだ!
画像を保存したHDDを繋いでiPadでブラウズできるって、なんて素敵なんだ!
その他、ウェブをパソコン表示で見ることもできるようになったし、Macと共通のショートカットも数多く使えるようになった。テキストの選択、ドラッグ&ドロップもジェスチャーで行えるようなったし、カーソル、選択の操作もとてもやりやすくなっている。
要するに、iPhoneのOSと分離することで、従来パソコン経由でしかできなかったことの多くを、iPadOSでできるようになっているのだ。
いよいよ、iPhoneと分かれて進化しはじめたiPad。もちろん、iPad Proの登場が大きなきっかけになっているのだろうが、これらの機能のほとんどはiPad 9.7インチや、iPad mini でも使える。これまで、ノートパソコンでこなしていた作業の多くは、iPadでできるようになるだろう。
iPadは来年の登場10年に向けて、さらに大きく進化しそうだ。
(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年6月号 Vol.92』)
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。