USと日本、スポーツビジネスの決定的違いはここ!【SPORTS TECH TOKYO】report.3
- 2019年09月09日
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サンフランシスコの4大スポーツビジネスのスタジアムを見学
SFの3つの巨大スタジアムを見学できたので、その様子をお届けしよう。
日本のスポーツビジネスに、そんなに詳しいワケではないけれど、アメリカのスポーツビジネスの豪華さと、スケールの大きさには圧倒された。なるほど、大リーグや、アメフトがビッグビジネスなのが良くわかった。これは、何かしら見習うべきところがあると思う。
見学できたのは、SPORT TECH TOKYOが開催された、サンフランシスコ・ジャイアンツ(メジャーリーグ)の本拠地Oracleパークを皮切りに、サンフランシスコ近郊に拠点を置く、アメフトとホッケーとバスケットボールの競技場を一気に見学出来た。
それぞれの位置を地図上に書くとこんな感じ。Oracleパークと、Chaseセンターはサンフランシスコ市街の港寄りにある。東京でいえば、お台場というか品川というか。
Levi’sスタジアムとSAPセンターはサンノゼ。僕らがiPhoneの発表会で泊まったりする街で、WWDCの会場になるマッケナリーコンベンションセンターもあるし、Apple ParkもUberで20分ぐらい。ちなみに、サンフランシスコ市街からサンノゼまで80kmぐらい。東京から言えば大磯ぐらいの距離感。
気が遠くなるほどの巨大な競技場と、テクノロジー
まず最初に行ったのが、NFL(アメフト)サンフランシスコ・49ers(フォーティナイナーズ)の本拠地Levi’sスタジアム。いやースケール感が巨大すぎて、さっぱり分からない(笑)駐車場がデカくて、歩いてもスタジアムが近づいて来ない。
ご覧のように、グランドスタンドの建物がビル状になってて、10階建てぐらいある。意味がわからない。
中に入るとこんな感じ……。7万5000人収容可能なのだそうだ(東京ドームが4万6000人)。
なんというか、スタジアムというと、コンクリート打ちっ放しっていう感じがあるんだけど、こっちは美しいガラスの窓に、フロアはカーペット。そこら中に広告を表示するスクリーンがあって、日本のスタジアムがとても貧しく感じる。
上の方にはVIP席などもいっぱいあって、多分シャンパンとか呑みながらゲームを見られるんだと思う。
見学を手配してくれた、Scrum Venturesと電通が協業して行ったSPORT TECH TOKYOのグラフィックがアストロビジョンやスタンドの前縁の帯状のスクリーンに表示されていた。
そんなコントロールを行っているのが、こちら、映像のコントロールルーム。
会場内にある何十というモニターを自在に切り換える映像の管制塔だ。
試合の最中に、それらの映像を編集してダイジェストを作ったり、ネットに投稿する用の映像を作ったり、各スポンサーに向けて、スポンサードしているチームの映像を出し分けたりすることができるらしい。
もちろん、それぞれの映像が4K以上の映像だから、これらのハンドリングにはものすごいマシンパワーが必要になるが、すぐとなりにサーバールームがあって、それの管理も一緒に行われていた。
こちらは、アナウンサーか解説者が放送を行うための部屋。グラウンドが一望に見渡せる。もちろん、各放送局の為にこういう部屋がいくつも用意されている。
さらにすごいのは全体のマネージメントをするための部屋があったこと。
この部屋は撮影NGだったので写真はないのだが、壁中に巨大スクリーンが6面ほど備え付けられ、ぞれぞれにスタジアム中の経営上の情報がリアルタイムかつ、グラフィカルに表示されるようになっている。
たとえば、A駐車場にはクルマが今何台止まっていて、どのゲートから何人ひとが入ってきているのかがリアルタイムに把握できる。あるゲートが100%の混雑率で、別のゲートが60%なら、間のパーティションを切り換えるなどして、人の流れを変えて混雑率をコントロールできるようになっている。
また、チケットの本日の売上や、実際の入場率、売店のホットドックやビールの売上、在庫管理などの一望のもとで、少し気温が低いから何が売れてないとか、何の販売が伸びていないから、ハーフタイム中にCMをスクリーンに流そうとか、会場内のマーケティングをリアルタイムに行えるようになっているのには本当に圧倒された。
これはちょっと、行列がすごくてビールが買えなくて諦める……ってなレベルの日本の競技場のマーケティングでは勝負にならない感じがする(競技にもよるのかもしれないが)。
競技場内には、49ersのレジェンドをさらに思い深いものにしてくれる巨大な博物館も併設されている。往年の名選手の写真や、装具が展示されていたら、そりゃあ、チームへの忠誠心も高まろうというものだ。
伝説の選手がアクションしているユニークな銅像が部屋中に展示されている部屋もあった。憧れた選手の像とかがあったら楽しいんだろうなぁ。
もう、ここなんて、絶対隣に並んで肩を組んだ写真とか撮っちゃう(笑)
そして、超巨大なスーベニアショップも。憧れの選手と同じウェアを買うもよし、キャップもあるし、さまざまな装具も。逆に女性がさりげなくファンであることを表明する控えめなグッズもあるし、アクセサリーなんかもある。本当に49ersに憧れている人だったら、お金がいくらあっても足りないだろう。
ボクシングや、テニスにも使えるホッケー競技場
さて、続いてNHL(ナショナル・ホッケーリーグ)のサンノゼ・シャークスの本拠地 SAPセンター。
いつも、WWDCで行くサンノゼの市街からそんなに離れていない場所にある。SAPは、ドイツに本拠地があるヨーロッパ最大のビジネスソフトウェア会社ね。コンシュマー的にはあまり知らない会社だけど。
そして、ホッケーもアメリカ(とカナダ)ではとってもメジャーなスポーツ。NHLは、アメリカンフットボールのNFL、バスケットボールのNBA、野球のメジャーリーグベースボール(MLB)と並んで、北米4大プロスポーツリーグのひとつ。つまり、今回はそのすべての競技場を見ようという趣向なわけです。
ホッケーなんで、当然、屋内スポーツ。アメフトほどの規模感はないけど、それでもとっても立派な建物です。
スタジアムに入ってみると、スクリーンが中央上部にあるのが特徴的。ホッケーだけでなく、ボクシングとか、プロレスとかもできそう。プロレスや、テニスなどにも使われるそうです。もちろん、コンサートなどにも。
バックヤードのVIPルームや、レストランもすごくゴージャス。日本でも、超高いチケットで入っている人にはこういう世界があるのかしら……?
Wi-Fiがめちゃくちゃ速いのも自慢だそうです。100MB/s近く出てる。もちろん、お客さんがたくさん入ったら速度は下がるのかもしれないけれど、こういうところにちゃんとコストをかけるの大事だそうです。
お客さんが快適にネットから情報を取れるのはもちろん、ゲームをネットに投稿してくれたりするのがとても宣伝になることを分かっている感じ。
トレーニングルームも立派。それにしても、バーベルのウェイトがすごいことなってそう。
Levi’sスタジアムほどではないけど、やはり映像のコントロールルームがあって、いろんな映像の編集、出し分けが可能なそう。それはそうとシートがなんか素敵。
全世界でのサンノゼ・シャークスに関するSNS投稿が表示されるスクリーン。普通の観客が歩く場所にも、とってもたくさんスクリーンがあって、こういう情報を表示したり、広告をガンガン表示したりしている。お金の匂いしかしない。
超多彩なVIP席を持つNBAスタジアム、1シート年間契約で約546万円!
さて、最後に行ったのが、NBA(バスケットボール)ゴールデンステート・ウォーリアーズの本拠地になるChaseセンター。
『になる』と言ったのはまだ完成していなかったから。
これが超巨大かつゴージャスだった。
普通の観客席に対して、Lower Level Club、Sideline Club、 Courtsite Club、Casa Modelo……などと名付けられたVIP席があって、それぞれに競技を見下ろせる席があって、その後ろに入ると、ゴージャスなテーブルや、カウンター、ラウンジがあって、さまざまな豪華絢爛な食べ物や、飲み物が用意されていたり……。
それぞれの部屋のモデルルームのような部屋は拝見させていただいたのだけれど、僕なんか一生座ることはなさそうな、フッカフカのソファーあがったり、中には何百本のワインが眠るセラーが用意されている席もあったりして……お金持ちってこういう世界に住んでいるのねっていうのを垣間見させてもらった。
ちなみに、一番高いCourtsite Clubの1試合の価格は1200ドル(約12万8000円)、シーズン価格は5万2800ドル(約564万円)だそうで、もはや何を言ってるかわからない価格だが、購入するのはたいてい企業だそうで、「○○の試合がちょっといい席で見られるんですが、いかがですか?」なんて言って接待に使ったりするみたい。ひええ。
いろんなイベントを周辺で開催できたり、隣に作っているビルにはUberの本社が入ることになっているとか、ベイエリアの経済力はホントにすごくて、日本からすると浮世離れした感じしかしない。
Apple MapのFlyoverで建設中のChaseセンターを見ることができたのでキャプチャ画像を貼っておこう。向こうに見える高いビルが、今サンフランシスコで一番高いビルである2年前に完成したSales Force Towerだ。
合計4つのスタジアムを見て分かったのは、スポーツがとってもビジネスになっているし、テクノロジーを使って猛烈にマーケティングされているということだ。
ちょっと日本ははるかに追い付かない状況になっている気もするが、学ぶべきところはあると思うし、日本のスポーツももっとビジネスとして構築していくことはできるだろうと思った。
今年、ラグビーワールドカップがあり、来年は東京オリンピック。日本のスポーツビジネスもまだまだ輝けるはずだ。SPORT TECH TOKYOが、その未来への足がかりを切り開いてくれることを期待したい。
(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年9月号 Vol.95』)
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。