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『君の名は。』三葉と瀧君のiPhoneに隠された秘密〈新海誠インタビュー02〉

『君の名は。』主人公たちのiPhoneの世代の違いに気がついた?

美しくも移り変わり行く風景の中に、若い男女の心の機微を描く新海誠監督へのインタビュー第2弾。我々ガジェットマニアが気になる作中のデバイスに隠された秘密について聞いた。

新海誠のルーツにあるMacと、若者へのメッセージ〈新海誠インタビュー01〉https://funq.jp/flick/article/566110/

『壊れたままの世界』で生きて行くMacBook世代へのエール〈新海誠インタビュー03〉
https://funq.jp/flick/article/566134/

本当に、iPhoneの世代の違いがヒントだったのか?

筆者はマニアとして、劇中に登場するデバイスが気になる。

パソコンやスマホといったデバイスは、時にそのキャラクターの背景を説明するために使われる。

WindowsかMacか、AndroidかiPhoneかという違いは、往々にしてマジョリティかマイノリティか? 体制側か反体制側か? ビジネスライクかクリエイティブか? そんな背景が表現されていることが多い。

映画やアニメなどのクリエイティブの現場には、アップルファンが多いせいか、正義の味方はたいていアップル製品を使っている(余談だが、クルマはアウディが正義の味方で、メルセデスが悪者であることが多いような気がする)。

『君の名は。』を公開時に見た時もそんな目線で見ていた筆者は、主人公として入れ替わる宮水三葉と立花瀧が、それぞれiPhone 5s(SEかもしれないが)と、iPhone 6(おそらく。6sかもしれない)を使っていることに気がついた。

映画を見ていて「もしかして、このふたりの生きている時間軸は違うかもしれない」ということが感じられ始めた時に『だからiPhoneの世代が違うのか!』と思い当たった。単なる小道具だし、一般の人が気付くポイントではないが、ディテールにこだわる新海誠監督だからこそ、そんなヒントも隠されていたのかもしれない! と感じた。

そこで、新海監督にインタビューする機会を得られた今回、そのことを聞いてみた。

タイムギャップの演出と、さらなる理解

「一応、あのふたりにはタイムギャップがあるので、それぞれの時代に自然なモデルを持たせるようにしています。観客の方へのサインとしても出しているし、田舎に住んでいる女の子の三葉と、都会に住んでいる男の子としての瀧君の違いという表現でもあります」と新海監督。

やはり、三葉がiPhone 5シリーズ、瀧君が6シリーズというのは、タイムギャップのサインとして意図された表現だったのだ。

加えて、時に(表現としてどうかはともかく)画面が割れてもそのまま使っちゃうような田舎の女の子……だからちょっと古めのiPhone 5という記号性もあるのだろう。また、瀧くんは都会の子で、母親は不在だが、霞が関勤務の父親と2人暮らしということで、家族関係は希薄だが裕福……という表現で当時最新モデルであるiPhone 6シリーズを使っているということになる。

もう少しマニアックな話をすれば、三葉が生きているのは2013年という設定。劇中で彼女が使うのはTouch IDが付いているiPhone 5sに見える(ように見えるだけなので、5かもしれない)。iPhone 5sが発売されたのは2013年の9月20日なので、当時としては最新のモデルを持っていたことになる。

iPhone 6と6sの間には外見上の違いはほぼない。厳密に言えば3D Touchが導入された関係で0.1~0.2mmの単位でサイズが大きくなっているが、もちろん劇中の表現から識別は不可能だ。瀧君が生きている時間は2016年なので、彼のiPhoneは2014年発表のiPhone 6である可能性も、2015年発表のiPhone 6sである可能性もある。ちなみに、筆者がサンフランシスコの発表会で取材したiPhone 7の発表はこの映画公開後12日後なので、公開時にはiPhone 6sが最新モデルだった。

「でも瀧君のiPhoneには三葉の時代にはなかったOSが入ってるんです。でも、三葉はそれに気付かなかった。iOSだからOSの世代が変わっても操作感も大きくは変わらないし、一般的な女子高生である三葉はそこに気付かないでしょう」と、新海監督。

なるほど、逆に機械に興味のある僕らのようなマニアな男性が3年後のiPhoneを触ったら、「見たことのないiOSが入ってる!」と無粋な気付き方をしてしまったかもしれない。三葉がガジェットマニアでなくて良かった。

クリエイターが棲む『Macの向こうから』

先の記事にも書いたが、20年以上も前にPower Macintosh 7600を買って個人制作で映画を作りはじめた新海監督は、アップル製品を愛用されている。出世作である『ほしのこえ』もPower Mac G4で制作されたという。

取材時にお持ちだったのは、0.92kgとMac史上最軽量を誇るMacBook(12インチモデル)。

企画書を作ったりという制作活動に使われるのはこのマシンだ。

「文字を書く仕事は、いまはすべてEvernoteに書いています。コンテンツを見たり、読んだり、生活の多くのことにMacBookを使っています」と新海監督。

ちなみに、『天気の子』の主人公の帆高が、東京で転がり込んだ先である圭介のK&Aプランニングで使っているのが新海監督と同じモデルのMacBookだった。色も同じ。このシーンはアップルのCM『Macの向こうから – まだこの世界にない物語を』でも使われている。

iPad Pro 12.9インチもお持ちで、Kindleの本はiPadで読むことが多いという。iPhoneはX。

Power Macintosh 7600や、Power Mac G4で短編とはいえ1本の映画を作り上げ、今もMacBookで世界を感動させる素晴しいクリエイティブを作り続けている新海誠監督。

あなたが手にするMacも、新海誠監督が持つMacも同じデバイスだ。Macの向こう側に座って、あなたも『まだこの世界にない物語』を作る側に回ってみてはどうだろうか?

 

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新海誠監督の作品はiTunesでも配信されています。
https://itunes.apple.com/jp/artist/469413274#see-all/recent-movies

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(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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