歴史的タッグ! 新型コロナウイルス対策でAppleとGoogleが協力する意味を解説
- 2020年04月11日
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最初の感染者が見つかったのは、今年のはじめだったにもかかわらず、たった4カ月で世界の感染者数は160万人超に到達した。死者数も10万人を越えた。
この未曾有の危機に、これまで長年スマートフォンカテゴリーで覇権争いを続けてきたAppleとGoogleが手を結び、共通のソリューションの実装を計画していることを発表した。
AppleとGoogle、新型コロナウイルス対策として、濃厚接触の可能性を検出する技術で協力
https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/04/apple-and-google-partner-on-covid-19-contact-tracing-technology/
世界の危機に、これまで最強のライバルとして戦ってきた両者がガッチリと手を結んだ。逆にいえば、それほどの危機的状況だともいえる。
これまでの手法では、もうクラスターを追い切れない
新型コロナウィルスのやっかいな点は3点ある。感染してから症状が出るまで時間がかかること。ほとんど無症状で、日常生活が送れる感染者がいること。そして、にもかかわらず感染すると重症化し死に到る人がいるということ。
つまり、無意識のうちに感染を拡大してしまっている人がいるということだ。
アメリカでは死者数がすでに約1万8800人に達しており、特にニューヨークの患者の激増は酸鼻を極めていると聞く。
2年前、2018年の10月にiPad ProとMacBook Air、ちょうど1年前の3月末にiPad miniとAirの発表会で、ニューヨークに行った。非常にお洒落で、知的で、アーティスティックで美しい街だった。そこが、今大変なことになっている。
日本では、この病気は人の集団を介して伝染していくという概念から『クラスター対策』を行ってきたが、ついに7割が感染経路不明となって、クラスター対策は不可能になりつつある。
個人情報を秘匿したまま、接近情報を共有
感染経路を追うとなると、個人の移動経路データが必要になるが、個人情報保護の観点から言っても、アップルやGoogleがすべての人のGPSデータを提出するというのは無理がある。
中国の武漢が強制的に流行を抑えられたのは、国家が個人情報を使って、伝染の経路を抑えられるからでもある。
民主主義国家では、そうはいかないから、たとえ都市封鎖でパンデミックを抑えられても、行動抑制を緩めると、ふたたび流行が広がってしまう。
そこで、工夫したのがアップルとGoogleだ。
開発中のソリューションは、Bluetoothベースのテクノロジーで、それぞれの人の接近を感知、記録しておき、後にコロナウイルスにかかってることが分かった人はその旨入力すれば、感染する可能性がある時期に接近した人に通知を知らせるという仕組みだ。
それぞれの行動や接近の履歴は暗号化されており、個人情報は誰にも公開されない。
また、ユーザーのオプトイン、つまりこのプロジェクトに参加するという承認が前提となっており、勝手に個人情報を使われるわけではない。
最初はアプリベースで、続いてOSにも組み込む
このシステムの開発は2段階のステップを経て導入される。
第一段階は、公衆衛生当局が提供するアプリを利用するAndroidおよびiOS間で相互運用を実現するAPIの提供。
その後、数カ月をかけてAppleとGoogleは基盤となるプラットフォームにこの機能を組み込み、より広範囲なBluetoothベースの濃厚接触の可能性を検出するプラットフォームを実現するという。
こうなっていくと、アプリや政府の保健当局など、より広範囲なエコシステムとの協業が可能になっていく。
AppleとGoogleのスマホのシェアを合わせるとほぼ100%に近い。つまり、この両者が協力することで、ほぼすべてのスマホを持っている人の接近の履歴を追うことができる。
もちろん、個人情報の扱いについて非常に厳しい考え方を持っているAppleが参加するのだから、「誰が? どこで?」という点は厳密に暗号化されて取り扱うと思われる。
あなたの個人情報は誰のもの? GAFとアップル。考え方の違い
https://funq.jp/flick/article/481445/
この窮地において、個人情報の扱いについて、AppleとGoogleが協調できたということだ。
テクノロジー企業が、アベンジャーズのように強力なタッグ
いまや、コロナウイルスの問題は、世界的な最大の課題。
おそらくワクチンや治療薬の開発、生産に向けて、全世界の英知が結集されているに違いない。
また、IT業界でも、Appleが医療用のフェイスシールドを開発し生産したり、Microsoft共同創業者のビル・ゲイツがワクチン製造工場の建設に自身の財団を通して巨額の資金を拠出するなど、大きな動きが続いている。
これまで、世界の頂点を目指して戦い続けて来た巨大企業たちが、新型コロナウイルス肺炎という巨大な敵に向けて一致団結して戦う様は、さながらアベンジャーズの物語が現実になったかのようだ。
僕らが愛するテクノロジーは、きっとこの窮地にも有効な手段になるはずだ。
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。