アップルが、アップストアで販売するアプリにも、どんな情報を扱うか明記させる
- 2020年12月15日
アップルがプライバシー情報を守ろうとする理由
アップルが、2020年6月のWWDCで開発者に通達した、アップルストアで提供するアプリがそれぞれどんなプライバシー情報を取得するかの明記をスタートした。
本日朝6時にローンチされているはずだ。
アップルはGAFAの他のどんな企業よりも、プライバシーに関して厳しく取り扱っている。個人情報を守りたいなら、iPhone、iPad、Macなど、アップル製品を使うしかないというぐらいだ。
もちろん、それはスティーブ・ジョブズのマインドにルーツを持つアップルの伝統でありポリシーでもあるが、現在のアップルにとっては明確な戦略でもある。つまり、理由があるのだ。アップルは、プライバシーを売り物にする必要がないのだ。ハードウェアの製品が売れて、その売り上げが収益となるのだから。
対して、GoogleもFacebookも、我々ユーザーに無料で提供されるのは基本的には広告ビジネスだからだ。そしてそれらの広告は『千代田区にお住まいの40代の女性に表示されます』『ダイエットに興味のある人に表示されます』『テフロンコーティングされた鍋に興味のある人に表示されます』と、ユーザー属性が明確になるほど高い価格で販売される。
みなさんも、検索したワードやFacebookに書き込んだものがすぐ広告に出て来て驚いたことがあると思う(私は、しょっちゅう自分の作った本を売りつけられそうになる(笑))。Amazonは広告ビジネスではないが、ダイレクトに商品を売りに来る。
それはもう、ビジネスのカタチとして仕方のないことだ。
そして、アップルは個人情報を売る必要がない。逆の言い方をすれば、アップルは『個人情報を売らないサービス』『プライバシーを守る企業』として、GAFAの他の3社と戦っているとも言える。しかし、それが戦略だろうがなんだろうが、アップルが個人情報保護にフォーカスする理由があるのである。
アップルのプライバシーに関する4つの方針
アップルはプライバシー保護のために、4つの方針を打ち出している。
・データの最小化
・デバイスでの処理
・セキュリティの保護
・透明性とコントロール
たとえば、『データの最小化』。余分なデータまで取得する必要はない。取得するデータは最小限でいい……ということだ。
たとえば、天気予報アプリは、ユーザーの正確な位置情報を取得する必要はない。であれば、位置情報は『だいたいの位置情報』を取得すればいい。正確な番地までは必要ないはずだ。だから、今後は天気予報アプリには『だいたいの位置情報』だけが提供される。
また、最新のiOSでは、カメラを使用している時には、緑の点、マイクとカメラを表示してる時にはオレンジの点が、画面の右上に表示される。これは『透明性』だ。
これからのアプリはどう表示されるか?
「しかし、アップルはいいが、iPhoneには無数のアプリがインストールされているし、それらの安全性確保は野放しでないか!」という批判は、これまでもあった。
今回のステップはそこに対応したもので、アプリの取得する情報の透明性が確保されることになった。
これらは以下の3つのカテゴリーに分けられている。
・あなたを追跡するデータ
・あなたとヒモ付けされているデータ
・あなたとヒモ付けされていないデータ
これらそれぞれが、カード状になっていて、位置情報、連絡先情報、ブラウザーの履歴、決済情報、財務情報、ヘルスケアデータ、センシティブな個人情報……などのうち、どれを取得しているかを明記することになった。
アプリはそれぞれ、自己申告でこれを表記するが、守られていない場合、アップルはその点を追求したり、場合によってはアップストアでの公開を中止するという。
これらの情報は、開発者側がポータルからいつでも更新できるようになっている。
アップルは、まずはどんな状態がそれぞれに取得されてるのか、透明性が確保されている状態であることが大切だと考えているという。
プライバシーといえば、「まぁ、いいか。ネットを使っていれば、どうせダダ漏れだし」というように考える人もいるかもしれないが、たとえばヘルスケアデータが流出して勝手に、生命保険の価格が上がるようなことがあっても困るし、財務情報を取得されてクレジットカードの限度額が下がったり、信用情報が操作されるようなことがあってはならない。また、クリップボード情報を取得することで、パスワードを取得しようとしてるアプリもあったという。
まずは、自分たちが日常使っているアプリが、どんな情報を取得しようとしているのか。それをちゃんと自分で管理監督するところから始めようではないか。
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。