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iPadの教育活用法に悩む先生のために、ADEの先生達が自主的にガイドを作成

先生達が『あらゆる学びを創造的にデザインする:小学校編』という冊子を自ら作って無料で公開

これまで、数多くの学校を取材してきたが、iPadを上手く活用できている学校では、本当に『知の革命』『学習の革命』と言ってもいい出来事が起こっている。

対して、一方では、規制でがんじがらめで、ICTデバイスを何も活用できていない学校や、ワードの使い方、エクセルの使い方……といった、パソコン教室のようなことしかできていない学校もある。

ご存知のように、iPadは『知性とクリエイティブの板』だ。

普通に使えば、子供たちのクリエイティビティを拡大し、好奇心を刺激し、どんどん出来ることが広がっていく。大人が想像以上のものを作り出してくれるし、思っている以上の知識を得て、仲間達と協業する方法を知り、試行錯誤して自分の意見を構築し、それを発表する喜びを育ててくれる。

先生が、下手な指導をしなければ。

しかし、当然のことながら、多くの先生方はICTの専門家ではない。中にはこれまでiPadを使ったことがない……というような人もいるだろう。そんな先生が、子供たちにICTデバイスを使わせなければならない……となると、不安に感じたり、悩んだりするのも当然だ。

そこで、すでにiPadを教育に活用し、大きな成功の実感を得ているADE(Apple Distinguished Educator——Appleが認めた先進的な教育者)の先生方が、これまで自分たちが行って良い実感を得たカリキュラムを紹介する電子書籍を作成し、無料で公開した。

あらゆる学びを創造的にデザインする:小学校編
https://apple.co/3sVH7QK
(無料。Apple BooksはiPad、iPhone、Macなどで開くことができる電子書籍です)
制作したのは、ADEの先生で、岳野公人先生(写真左:滋賀大学教育学部教授、今回のプロジェクトの全体のリーダー)、外山宏行先生(写真右上:近畿大学附属小学校教諭、小学校高学年算数の事例執筆者)、金本竜一先生(写真右下:関西大学初等部教諭、小学校低学年国語の事例執筆者)、

デジタルデバイスに慣れていない大人は、つい「iPadの使い方」を教えようとしたり、余計な動画を見ないように制限をかけようとかしてしまうが(それもできなくはないが)、そうではない。「子供たちの興味、クリエイティビティを引き出すために何をするか?」というテーマがあって、そこに、たまたまiPadという便利なツールがあるのだ。

(外山先生の発表資料から)

デバイスをこれまで使ってこなかった先生や保護者にしてみると、デバイス側が情報源となっていろいろな悪影響も及ぼされるのではないかと不安なのだろうけれど、実際に『能動的活用』ができれば、子供たちの想い、意見、アイデア、想像は、想像、表現として他者とのコミュニケーションとして昇華されていく。

少なくとも、余計な制限でそれを邪魔することなく、できればサポートしたいものだ。

冒頭に掲載されているカリキュラムの例が、この冊子の素晴らしさのすべてを表している。

たとえば小学校中学年(小学校3〜4年)の国語の『音読とBGMの作成』。

音読して、それをGarageBandで録音し、プリセットのループを付けるというカリキュラム。物語を友達同士で配役を割り振って音読して、それに気持ちに寄り添ったBGMを付けるというだけのタスクなのだが、上手に録音するために、これまで家で音読の練習なんてしたことなかったような子どもが一生懸命練習し、マッチしたBGMを付けるために、文章で表現されていることを一生懸命理解しようとするのだそうだ。

それは、子どもたちに驚くほどの変化を与えるという。

目からウロコの具体的カリキュラム

他にもいくつかカリキュラムの例をご紹介してみよう。

『かたかなビンゴをしょう』は、世の中にあるカタカナをカメラで撮って、Keynoteのプレースフォルダにコレクションさせる課題。

『あらゆる学びを創造的にデザインする:小学校編』では、先生向けに、プレースフォルダの使い方を解説してくれるし、クラスで共有、確認する方法までアドバイスしてくれている。そうすることで、生徒同士のコミュニケーション、教え合いも活性化するのだそうだ。

これこそまさに新しい学習指導要領で言うところの『主体的・対話的で深い学び』というものだ。

『デジタル空間の中ではなく、現実に目を向けるべき』なんて言う方もいらっしゃるかもしれないが、それはiPadの活用に対する理解度が低いというもの。デジタルデバイスを活用することで、現実をより深く理解できるのだ。

『10種類の野草を見つける』という課題では、野外に出て野草を見つけて、写真に撮って図鑑を作る。

普段野草なんて雑草としか思っていない生徒達が、それに目を向け、観察し、用意したサンプルに対して同定し(先生がそれが何かを教えるよりは、アドバイスをして子どもに同定させる。植物図鑑アプリを使う際にも、名前を教えるのではなく特徴から探させるなどのアドバイスも入っている)、子供たち自身の図鑑を作らせるのだ。

注目し、観察しさえすれば、そこにいろいろな発見があることを学ぶことができるという。

『将来の夢とその理由を海外の子供たちに伝えよう』という課題も秀逸だ(2020年から小学校高学年の英語が必須になっている)。

Clipsで短い動画を作るのだが、そのために子どもは将来の夢を考え、英語で文章を考え、動画としてどう伝えるかを工夫する。

筆者が子どもの時、苦手な英語で教室で発言するのはとってもイヤだったが、こうやって動画に撮るのなら何度でもやり直されるし、夢と言わればアピールしたいことも出て来たかもしれない。また、先生がその動画を実際に海外の学生たちと交換してくれたりすれば、そこに実際に海外も自分たちと同じような子供たちがいて、そういう子供たちと英語でやりとりできるようになりたいというような希望も湧いてくれるだろう。

Apple Booksには、子供たちが実際に作った動画のサンプルを集めたものが貼り込まれているので、ぜひご覧になってみていただきたい。

iPhoneやiPadには、AR技術を使って実際に目の前にあるモノをカメラに写して大きさを計る『計測』というアプリがプリインストールされているのだが、この『計測』アプリの数値は本当に正しいのかを検証するカリキュラム。

実際に自分たちで試してみることで、アプリケーションの信用性を疑い、批判的な思考と態度を育むという。

実際、数値や統計というものを鵜呑みにする人は大人いになっても多いが、そういうものに対する批判的姿勢や、自分で検証しようという姿勢が養われるのも素晴らしい。また、前提として、ARというテクノロジーがどういうものなのか理解が進むというのも現代的で良い。

巻末には、さらにさまざまなアイデアが掲載されている。

流れる水の働きを動画でまとめるとか、第二次世界大戦を動画でまとめるとか、大人がやっても面白そうな課題がいっぱい。こちらも他のサンプルをぜひApple Booksでご覧いただきたい。

子供たちを信じて、iPadのある環境を提供しよう

子供たちの能力は、想像以上だ。iPadなんて、大人よりずっと早く使いこなしてしまう(先生も、親も、子供たちに敵わないことを知ってからがスタートラインだ)。

彼らがこれから生きて行く世界はICTデバイスのある世界。検索すればあらゆる知識が得られうる世界、どんな知識でも即座に動画で得られる世界には、その世界なりの勉強の仕方というものがある(試しに、YouTubeで『アメリカ英語とイギリス英語の違い』と検索してみていただきたい。これは我々が学生の時代には、絶対に手に入らなかったものだ)。

もちろん、iPadを使いこなしている学校なら、緊急事態宣言で在宅学習が主になっても、毎日生徒達と交流できるし、学校でやるのとは違うカタチで学びを止めずに学習し続けることが可能だ。

この環境を子供たちに与えないというのは、怠慢でしかないだろう。

あらゆる学びを創造的にデザインする:小学校編
https://apple.co/3sVH7QK

(村上タクタ)

flick! digital 2021年3月号 Vol.113
https://funq.jp/flick/magazines/20158/
デジタル超整理術 リモートワーク編
https://funq.jp/flick/magazines/20164/

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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