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近日公開iOS 14.5で、アップルは広告トラッキング防止機能を追加。アプリや広告はどうなる?

近日公開される、iOS 14.5、iPadOS 14.5、対応するmacOSなどで、アップルは昨年6月のWWDCから予告していたアプリの広告トラッキングの禁止を導入する。広告を表示しているアプリ……つまり非常に多くのアプリが影響を受けることになる。なぜアップルがここまでプライバシーの保護に力を入れるのか、おさらいしてみよう。

それはジョブズから受け継がれるアップルの背骨

アップルはそもそも、昔から『個人の情報は個人のもの』という主張を強く持っている。

スティーブ・ジョブズも、世を去る少し前の2010年のスピーチで「私は人々が賢いと信じているが、それでもしつこく繰り返して、何のデータを収集しているか説明すべきだ」と述べている。そして、彼はシリコンバレーの多くの企業が人々のプライバシーの保護を軽視している点について心配している。

「プライバシー情報保護はジョブズから受け継がれたアップルの背骨」とティム・クック

「プライバシー情報保護はジョブズから受け継がれたアップルの背骨」とティム・クック

2019年11月07日

個人の自由を尊重するのは、ビジネス一辺倒の出自ではなく、学生時代から、ヒッピー文化や、アニミズム、禅などに心酔した経験を持つジョブズならではの考え方だと思う。

正直、私も自分のプライバシーデータの管理を面倒だと思っている。最新のiOSはジョブズが言ったとおりに何度もダイアログを出して確認してくる。それに対して「いいよ、僕の位置情報ぐらいくれてやる」「写真共有しないとこのアプリは使えないから共有したっていいよ」って思っている。

しかし、アップルが新たに提供した記事を見ていると、それで良かったのかどうか不安に思う。

背筋が凍る『あなたのデータの一日』

今回、日本のサイトでも、『あなたのデータの一日』(英語版は『A Day in the Life of Your Data』)の日本語版のPDFファイルが公開されているので、ぜひこのファイルを見ていただきたい。

プライバシー-Apple(日本)
https://www.apple.com/jp/privacy/
このPDFファイルは、ジョンと7歳の娘のエマが公園に出かける日常の1シーンを描きながら、その背後で我々の個人情報がどう扱われているかを解説してくれている。

アップルによると、我々の個人情報はスマホのサイトや、ウェブサイト、アプリなどから収集され、リアルタイムのオークションで売り買いされ、年間総価値2270億ドル(約25兆円)の業界が利益を得ているという。何百ものデータブローカーが、7億人の人について最大5000もの特性を含むプロフィールを作成して、それを売り買いしているというのだ。

ジョンとエマが、天気を調べ、ニュースを見て、地図アプリでルートを検索するが、ジョンがクルマを運転している間、先に使った4つのアプリが位置情報を追跡し、データブローカーは位置情報の履歴から彼が使った外のアプリのデータと照合し、総合的なプロフィールと照合できるのだそうだ。クルマの中でジョンのタブレットでゲームをするエマの前には、彼らが公園に行くことを知っている会社から、キックボードの広告が表示される。

公園でセルフィーを撮ると、彼らはそれにウサギの耳を加える加工アプリを使うが、そのアプリはデバイス上にあるすべての写真とそれらに添付されたメタデータにアクセスできる。正直、筆者も写真にアクセスできることは知っていたが、メタデータ(写真に付属している位置情報や、デバイスデータなど)にアクセスできることは考えていなかった。このアプリはメールアドレスと、電話番号、広告識別子を使っているから、他のジョンのプロフィールと、すべての写真の位置情報、映っているモノなどを結びつけることができるというワケだ。

帰路、アイスクリームを買えば、その購入情報、他の買い物、買ったモノの嗜好などが分析され、スイーツの広告や、子どもが買いそうなオモチャの広告などが表示されるというわけだ。

このようにして、彼らが家に帰った後も、彼がどこに住んでいて、どの公園に行ったか、どのニュースサイトを読んで、どんな広告の商品を見たか……などがすべて蓄積されていく。

彼らを分析しているデータブローカーは、彼らの広告IDをオークションにかけ、エマがアプリを開いた途端にそこに表示される広告スペースについて、落札した会社の広告が表示される。通常、ユーザーの一致度が高いほど、多くの広告主がその広告スペースに入札するという。

さらに、広告表示をして会社は、広告アトリビューションといって、広告の結果、それを見た人が消費を購入したか、アプリをインストールしたか? を追い掛けて成果を分析する。そして、そのフィードバックを受けて、さらにキャンペーンの『最適化』を図っていくのだ。

概略を記したが、正確に知るために、ぜひ元のPDFファイルを読んでいただきたい。

データアクセスに関するダイアログを面倒だと思ったことはないか?

アップルのサービスでは、これらのプライバシー領域に関する制限を年々厳しくしている。あなたのiPhoneにも、写真、位置情報、カメラ、ヘルスケア情報をアプリに提供してもいいか? というダイアログがしつこいほど表示されているはずだ。

どのアプリが、どのデータを使用するかは、『設定>プライバシー>アプリ名』のところでいつでも確認できるし、個別にオフにすることができる。

また、アプリをダウンロードする前に見るアプリの説明文には、そのアプリがどんな情報を要求しているか、すべて表記しなければならないようになっている。

実際、ここにFacebookの説明文を表示しているが、そのデータの多岐に渡ることには、理解していたはずの筆者でもちょっと驚いてしまう。トラッキングには、連絡先所在地や電話番号、デバイスIDなどが含まれているし、ユーザー関連づけられたデータには、広告表示に、購入履歴や財務情報、詳細な位置情報、連絡先情報、写真やビデオ、検索履歴、閲覧履歴、ユーザーIDやデバイスID、スマホの使用状況データまですべてが含まれている。さらにアナリティクスには、健康、フィットネス、機密情報……なども含まれている。

これを、表示するように要求したのもアップルだ。そうでなければ、我々はこれほど多くのデータが収集されていたとは知らなかっただろう。

ついに、iOS 14.5で、トラッキング防止機能が完全にONになる

近々ローンチされるiOS 14.5では、ついに、アップルがトラッキング防止機能の全面運用を開始する。iOS 14.5、iPadOS 14.5、それに対応したmacOSやSafariを使って、トラッキングの運用を許可しなければ、我々は広告によるトラッキングから身を守ることができる。

アップルが去年のWWDCから告知している改修を各アプリに適用していれば、アプリは問題なく動作するはずだし、個人情報を保護した上で、一定の情報が広告キャンペーンをしたい会社に提供される。

アップルが提供するSKAdNetworkは、ユーザーやデバイスのデータを秘匿したまま、広告を打ったアプリがその結果何回表示されたのかを表示してくれる。

また、Private Click MeasurementはiOS 14.5、iPadOS 14.5のアプリに対応し、オンデバイス処理を利用することで、アプリの広告からウェブサイトに誘導する効果があったかどうかを広告主が測定できる。広告主は、ユーザーがクリックしたという情報や、それがサイト訪問や製品購入に繋がったかどうかなどを計測することができる。

もちろん、これらによってアップルが収益を得ることはないし、アップル自身のアプリもサードパーティのアプリと同じかそれ以上に厳しい制限を課されていることは言うまでもない。

我々だって、広告を運用する側でもあるから複雑ではある

この問題をレポートすることの非常に難しい問題は、我々メディアもささやながら、広告を表示したりすることで、特定のユーザー層に広告を表示するというビジネスをしているということだ。たとえば、Googleのアドセンスや、Facebook広告を運用することで、(規模は巨大プラットフォームに比べてささやかではあるが)我々の本や、特定の商品を買いそうな人に広告を表示したりすることもある。そのことを明示せずに、この記事を書くべきではないだろう。

しかし、我々自身もユーザーのひとりであり、現在のマーケットの行き過ぎたユーザー追跡には不安を感じる。みなさんも、気になっていた商品の広告がいきなり表示されて驚いたことがあるだろう。

iOS 14.5にしたからといって、プライバシー機能を改修していないアプリが動作しないわけではない

ユーザーのプライバシーは守られるべきだ。アップルの投じた一石は、Googleをはじめ他の企業も無視することはできないから、最近ではAndroid携帯や、Googleのサイトでも個人情報を守る取り組みが行われるようになっている。今後は、他社も個人情報を守って、ユーザーの承認を取った上で、必要最低限の個人情報でユーザーに適切な広告を表示しようという流れになっていくだろう。

iOS 14.5がローンチされても、プライバシー情報の扱いに関して適合していないアプリが動かなくなるということはない。しかし、適切なプロセスを経ずに、ユーザーに関する情報は提供されなくなるから、古いままのアプリでは、必要な情報は秘匿されたまま提供されなくなる。おそらく改修されていないアプリを中心に、データ収集業者のデータ精度は、iOS、iPadOSを経由するものに関しては、しばらくの間低下するのだろう。

他のプライバシー機能についても、アップルの講じている対策を知っておきたい

その他、アップルのプライバシーに関するサイトには、アップルがプライバシーをどのように守ろうとしているか、詳細に書かれている。

プライバシーに関する機能詳細
https://www.apple.com/jp/privacy/features/

たとえば、マップアプリは、ルートを検索しても、出発地点近辺と、中間ルート、ゴール近辺の情報は別々に分割されて検索されるので、自宅や目的地に関する情報はアップルもファジーにしか分からない。Siriは余計な異音を収集しないし、ランダムな識別子を付けてサーバアクセスするので、アップル側でも誰の音声による入力なのか分からない。指紋データなどの重要な個人情報はそもそも端末のチップの中で暗号化されて保持され、外に出ることはない。

そもそも、iPhoneでもmacOSでもデータはセキュリティチップを介して暗号化されて保持されており、指紋認証やface ID、パスコードによる認証無しには引き出せないし、引き出したところで暗号化されているので、アップルでさえ内容を解析することはできない(ゆえに、バックアップを取っていないと困ったことになるが)。

アップル製品を使うということは、プライバシーに関して比較的(まだ、おそらくは万全ということではないと思う)安心して使うことができるということであるし、それがiPhoneや、iPad、Macを使う理由であるという人も増えていくことだろう。

今後のアップルの動向、そして他のシリコンバレー企業のプライバシーに関する取り組みについて、注目していきたい。

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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