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『二度とモノを紛失しない』——アップルが公開した『探す』アプリが強力無比

Never Lost Again——もう二度と紛失しない

お気に入りのアイテムを紛失した経験はあるだろうか?

お気に入りのバッグ、財布、自転車、オートバイ、ぬいぐるみ、スマホ、ヘッドフォン……いつもそこにあったものを紛失した時の喪失感は大きい。

筆者はオートバイを盗まれたことがあるが、駐輪場に行って、最初あるはずのところにバイクがないことに気付いた時には「あれ? 今日乗ってこなかったっけ? それとも別の場所に止めたっけ」と思ったものだ。探しても探しても見つからず、盗難されたと認識した時、警察に届けても見つかるワケじゃないと知った時、非常に非常にがっかりした。

スパイ映画のようにGPSビーコンで見つけられれば、どれほどいいかと思った。あのバイクは、どこかの不良少年が乗り回しているのか? それとも窃盗団が盗んで、どこなの港からコンテナに積まれて売り飛ばされたのか……今、思い出しても辛い思い出だ(それなりに盗難防止策が講じてあったので、後者だと思う……そのころ、環八沿いで業者のフリをして昼間に5分ほどでクレーン付きのトラックに積んで盗む例が非常に多かったと聞く)。

落とした財布やバッグにしても同様。道端にあるのか、電車の中に忘れて、遠くの駅に運ばれているのか? どこにあるか分かれば、すぐにでも飛んでいくのに……と思うものだ。

アップルが4月7日に公開した、iPhone、iPad、Macで動作する新しい『探す』アプリは、二度とこんな思いをしなくてすむようにしてくれるサービスだ。

これまでの同種の製品とは、実用性が段違い

「あれ? そんな製品って、これまでもあったよね?」と思う方もいらっしゃるかもしれないが、従来存在した紛失防止タグやGPS発信機に対して、アップルが提供する仕組みは実用性が圧倒的に高い。

まず、GPS発信機は、いわばスマホのようなものだから、セルラー通信が必要だ。また、バッテリーライフが短い。GPSでの位置取得と、それを知らせるためのセルラー通信をしていたら、必然的にバッテリーを食う。従って、バッテリーライフは数日から持って2〜3週間というところ。これでは、バッグや財布、自転車などに搭載しっぱなしにはできない。

いわゆる、紛失防止タグは極めて消費電力の低いBluetooth LEで近くのスマホに向かって存在を知らせ、通信とGPS位置の取得に関しては、通りすがったスマホのものを活用するので、半年とか1年以上バッテリーがもつ。しかし、その専用アプリをインストールし、かつ立ち上げている状態の人が近くを通らなければならないから、発見の可能性は高いとはいえない。特定の紛失防止タグのアプリを立ち上げている人がどのぐらいいるだろうか? たとえば、それでも渋谷や六本木のように人通りの多い場所なら誰かが立ち上げているかもしれないが、人口密度の低いエリアとなるとそうはいかない。

世界数億台のiPhoneのBluetooth圏内にあれば見つかる

対して、アップルの仕組みは、強力無比だ。

使用する紛失防止タグ側は、一般的な紛失防止タグと同様、Bluetooth LEで通信できさえすればいいから、近くを電源が入ってBluetoothがオンになったiPhone、iPod touch、iPad、Macが通ればいいのだ。

このネットワークに協力するのは世界数億台のiPhoneだ。いたるところにあるiPhoneを通して、所有者に現在位置を伝えてくれる。日本はiPhoneの保有台数が多いし、人口密度が高いから密なメッシュを構築できるだろう。

これは強力無比だ。もちろん、デバイスの発見に関わる全プロセスはエンドツーエンドで暗号化・匿名化されるので、所有者以外は誰も—Appleやそのデバイスの製造メーカーでも、経由したiPhoneなどの位置や情報を見ることはできない。

数億台のiPhoneなどのデバイスが、あなたの大切なアイテムに付けた紛失防止タグを検知して位置情報を教えてくれるのだ(経路となって関わったiPhoneなどに関する情報は秘匿される)。これはめちゃくちゃ強力な検知ネットワークで、他のデバイスでこのネットワークを実現するのは困難だと思う(Androidでセキュリティを保ちながら、位置情報を提供することは可能なのだろうか? 可能ならそれが唯一の対抗馬だろう)

アップル純正のタグは出るのだろうか?

この仕組みを利用するためには、アップルのMFiプログラムに適合した探索ネットワーク対応アクセサリプログラムに適合させる必要があり、近日、VanMoof 社の最新の電動自転車 S3 および X3、Belkin 社の SOUNDFORM Freedom True Wireless Earbuds、Chipolo 社の ONE Spot アイテムファインダーが対応商品として登場する。

一部の噂で、アップルから紛失防止タグが登場するという話があるが、現在Chipolo社と協力しているものをアップルが発売するだろうか? ここはサードパーティに任せよう……という判断もあるかもしれない。

これはMFiの他社製iPhoneケースがあるのに、アップル純正iPhoneケースを出す必要があるだろうか? という問題に似てるので、答えとしては「リンゴマーク付きの、アイテムファインダーが登場する可能性もあるかもしれない」ということになるだろう。

ともあれ、このアップルの『探す』アプリに対応したアイテムファインダーが登場したら、従来のアイテムにない強力なサーチ能力を発揮するに違いない(浮気を疑うパートナーにバッグに忍ばされないように気をつければ!)

入手できるようになったら、フリック!でも試してみたい。

(村上タクタ)

(最新刊)
flick! digital 2021年4月号 Vol.114
https://funq.jp/flick/magazines/20159/
デジタル超整理術 リモートワーク編
https://funq.jp/flick/magazines/20164/

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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