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『誰でもクリエイティブ』なるか? AdobeのAdobe Creative Cloud Expressって使える?

何度も試みられてきたクリエイティブの民主化

Adobeから驚くべき発表があった。

『誰でもクリエイティブ』になれるように『Adobe Creative Cloud Express』という新しいサービスを始めるというのだ。

Adobe Creative Cloud Express
https://express.adobe.com/

何度も言ってることだが、今、世の中のほとんどのクリエイティブはIllustratorやPhotoshopなど、Adobeのアプリで作られている。映画のポスターも、飲食店の看板も、本の表紙も、テレビ番組も、このウェブサイトの画像も、すべてだ。

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2021年10月28日

それは同時に、PhotoshopやIllustratorを使えないと、絵筆を持てない、クリエイティブに参加できないということでもある。

しかし、コロナ禍でウェブへの依存度が高まった昨今、それでは済まない現実がある。これまで手書きのポスターや張り紙で済んでいたことが、インスタのストーリーになり、ウェブバナーになっているのだから、Adobeのクリエイティブクラウドが使えなければ話にならない。会社のプレゼンスライドだって、デザイナーではない一般の社員の人が作らなければならない場面が増えているだろう。

しかし、CCといえば、使うのに技量が要るし、月額6248円、年間7万2336円の重課金アイテムである。使いこなせるならともかく、これで食べてるのでなければこんな金額は出せない。そして使い始めないから使えないという無限ループ(笑)

筆者もそうやって、Adobe CCを使えなくて指をくわえている人間のひとりだ。

しかし、アドビが『すべての人にクリエイティブを』と考えるのももっとも。多くの人に使ってもらおうといいうことで、新たに『Adobe Creative Cloud Express』というサービスを始めたというわけだ。

このサービス、iPhone、iPad、Androidはアプリで、パソコン上ではブラウザで動く。無料アカウントでも、最大100万点の画像やその他のアセット、数千種類のテンプレート、2万種類のフォントを利用できるとのこと。

Stockの1億7,500万点以上の画像や、Adobe Photoshop ExpressならびにAdobe Premiere Rushなどの追加アプリケーションへのアクセスを含むプレミアム機能は、1078円/月または1万0978円/月で使える。Adobe Creative Cloud Expressは、既存のAdobe Creative Cloud 単体プラン(2728円/月)およびAdobe Creative Cloudコンプリートプランにも含まれている……とのこと。

簡単に言うと、一応無料でも使えるけど、月額1078円のプランにすると、もっとバリバリ使えるということ。特にAdobe Stockの1億点以上の無料写真や、Adobe Fontsの数千のフォントが使えるというのはかなり価値があると思う。

なんか、フリック!のロゴでも作ってみるかな……と10分ほど触ってみたら、こんなのができちゃうのだ。Illustratorでは、いくらなんでもこうはいかない。

また、Eで始まる初心者向けサービスか?

しかし、長らくIT関係を観察している人なら、この『Express』という名前に不安を感じるのではないだろうか?

過去、幾多のサービスの『Express』『Essential』『Element』(なぜかEばっかり)というエントリー層向けがあったが、それがなかかな上手くいった試しがない。たとえば、FileMakerの簡易版であったBentoとか、AdobeでいえばRevelとか、筆者もこういうサービスが好きだし、夢と希望を持って取材に行って記事にしたが、いずれも立ち消えになってしまった。

企業としては『すそ野を広げよう、エントリーユーザーを増やそう』という話になるのは当然だ。しかしながら、やってみるとそこから収益を上げるのが難しい。また、使い方を習得するモチベーションが低いユーザーでも使いこなせるようにするのは難しい。

このAdobe Creative Cloud Expressも使い易くは作ってあるが、何にも使ったことのない人が、何かを作ってみよう……とすると、けっこう難しいと思う。

可能な限りユーザーフレンドリーにはなっているが、『こういうものが作りたい』と思っている人は、苦労するはずだ。むしろ『何を作ったらいいか分からない……』と思いながら、テンプレートの中から好みのものを探して、適当に触っていたら、いい感じのデザインが出来た! ……となる。そのぐらいのスタンスで活用するのがコツだと思う。

使いこなしたら、Illustratorにステップアップできるのか?

もうひとつ。気になるのは、このアプリを使いこなしたら、どこに行くのか? ということだ。

習熟すると、PhotoshopやIllustratorを使いこなす基礎ができるのだろうか? それとも、Adobe Creative Cloud Expressを使うのが上手い人になるのだろうか? レイヤーとか被写体の選択とかいう考え方に共通性はあるようだが、使い方は違う。つまり、単にAdobe Creative Cloud Expressが上手い人になる可能性が高い。中学校、高校とステップアップしていくのではなく、小学校9年生や12年生になってしまうということだ。

もちろん、クリエイティブのプロフェッショナルになろうとしているワケではないのだから、それでいいのかもしれないが、アドビにとっての『将来のプロ顧客を増やそう』という結果に結びつけるのは難しそう。プロフェッショナルはお金を払うが、そうでない人はお金を払わない。プロが増えるキッカケにならないのなら、アドビがどこかで「このサービスは将来の収益に繋がらないから、止めよう」と思わないとも限らない。

もうひとつの可能性として、複雑なレイヤーやフィルター、被写体の選択……という操作ができなくてもPhotoshopが使えるようになる。つまり、プロ用ツールがこのAdobe Creative Cloud Expressに近づいてくるという可能性はある。

昔は、キャブレターのスロー調整や、タイヤの空気圧の調整、オイル交換ぐらいはできないとバイクやクルマに乗れなかったけど、今のクルマはもっと簡単に乗れるようになっている。クリエイティブツールにもそんな変化が訪れる。Adobe Creative Cloud Expressはその嚆矢……っていう可能性もなくはない。

Adobe Creative Cloud Expressが成功するかもしれない3つの理由

実はこのアプリのベースになっているのは、Adobe Sparkだ。

使ったことがある方もいらっしゃるかもしれないが、Adobeがスマホやタブレット用の公開していた一連の無料版アプリのひとつで、役割としてはIllustratorのように、写真や文字を配置してグラフィックスを作るアプリケーションだ。実験的にスマホ用アプリとして作られた……という感じのアプリだったので、日常的に利用してる人は少ないと思う。

それを、写真を扱ったり、動画を扱ったりする統合的アプリの機能を構築するベースにしようということだと思う。つまり、今後もっと多彩な機能が加わっていくということだ。

今、このアプリをスタートさせることで、Adobeの新しい試みは成功する可能性もあると思う。

筆者がこの試みが成功する可能性があると考える理由として、従来の並み居る『E』で始まるアプリ群と違う、3つのポイントがある。

1つは、このサービスがAdobe FontsやAdobe Stockを含んでいること。特にAdobe Stockはいわゆるフォトストックサービスだから、これが月額1078円のサービスに含まれているというのはとてもお得だ。プレゼン資料に使いたい人にとっては、非常に助かると思う。

(しかし、規約によるとAdobe CC Expressのアウトプットとして使うのはいいが、写真単体で使うのはNGということ。これを分けて考えるのは難しい。たとえば、Adobe CC Expressでわずかに加工した写真をプレゼンのスライドに使った場合はどうなのだろう?)

2つ目は、Adobe Senseiの存在だ。AdobeのAIであるAdobe Senseiがかなりいい感じで仕事をしてくれる可能性がある。

たとえば、これまでだとテンプレートが少ないと役に立たないが、テンプレートが多いと探せなくなるという問題があった。しかし、Adobe Senseiがあるとそのすき間が埋まる。

たとえば、「テクノポップっぽいデザインがしたいなぁ……」と思って検索すると、こんな感じ。

フリック!だから、ガジェットっぽいヤツを……と思ったら、こんな感じ。

いや、これ、実際使えるんじゃないかと思えてくる。使われている写真だって、Adobe Stockの写真なわけだから、商業的なポスターやウェブバナーにそのまま使える。

そして、第3に『Adobe Creative Cloud Express』という名前だということだ。

『Spark』からの大出世! 看板商品である『Creative Cloud』の名を冠してきたということは、アドビは本気だということだ。iPhoneや、iPadで、「こんな感じのデザインに……」って言ってるうちにデザインが完成してしまうような世の中が実現する可能性がある。

とりあえずは無料だから、ちょっと触ってみてはいかがだろうか?

実際にやってみた様子はこちらからどうぞ。

僕もクリエイターになれるか? Adobe Creative Cloud Express使ってみた

僕もクリエイターになれるか? Adobe Creative Cloud Express使ってみた

2021年12月17日

(村上タクタ)

(最新刊)
flick! digital 2021年12月号 Vol.122
https://peacs.net/magazines-books/flick-1136/
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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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