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【ロングボーダーズ・ムーブメント】ダ・クラシック・モーメンツ

今、世界のロングボードシーンで同時多発的にあらゆるムーブメントが巻き起こっている。仮にロングボードのスタイルを大きく2分するならば、クラシックとプログレッシブ……いや、はたしてそんな簡単な括りで片付けられるのだろうか? もはやロング乗り達の想像力と行動力は次なる段階へと突き進み、波に乗るというサーフィンの本質を同志らと共に昇華させる域にきている。ロングボーディングならではのスタイルを魅せ合うのか、同じ土俵で戦うことの少なかった2大勢力の競演なのか、ある技にのみこだわり続けるのか、それとも、ボードのスタイルにこだわるのか……。いずれにせよ、それらは視野を広く、もっと大きな世界でロングボードのすばらしさを捉えようというムーブメントに他ならない。そして華麗に波間をダンスするというロングボーディングらしさは不変だ。おそらくはそのアプローチの部分にそれぞれの個性が内包されている。

これらを読み解くカギとして、今回の我々は“コンテスト”に注目した。真のサーファーであればサーフィンを一つのスポーツという括りで片付けることにはいささか違和感を感じずにいられないわけだが、単に滑った転んだでどっちが勝った負けたということを言いたいわけではない。トッププロから一般サーファーのローカルコンテストまで、独自の解釈でロングボーディングを突き詰めようとする彼らのカルチャーは、まさしく今世界で起こる同時多発的ムーブメントの一つなのである。つまるところ、それぞれに明確な答えを見出すことはおそらく難しいだろう。しかし、これから紹介する国内外で昇華された“コンテスト”というカルチャーを読み解いていくと、その先に世界のロングボーダー達の突き進むムーブメントの一端が見えてくるに違いない。

今回紹介するのは、ロングボード黄金期の1960年代のリアル・ヴィンテージボードでヒートするという世界でもレアなコンテスト、「ダ・クラシック・モーメンツ」。レジェンド・プロロングボーダー、小室正則が半世紀以上にわたり開催している「マーボーロイヤルKJカップ」のメインイベントだ。果たしてその内容とは?
◎出典: NALU(ナルー)no.114_2019年10月号

なぜヴィンテージボードオンリーの大会なのか?

ビーチにずらりと並んだ12本のヴィンテージボード。カリフォルニアの名門ビングやコン、ハンセン、グレッグ・ノール、それに日本のマリブも並ぶ。レプリカではない、1960年代のリアルヴィンテージだ。コレクターにとっては垂涎の的ばかりだろう。とは言っても、これらのお宝ボードは展示しているわけではない。「ダ・クラシック・モーメンツ」のコンテストで、サーファーが実際に乗って競うのだ。

▲(写真右)プロクラスのファイナリストの面々。コンテストジャージもクラシックなデザインだ、(写真左)大会主催者の現役最年長プロの小室正則。今回は体調不良でビーチから見守った

▲スタイル系のコンテストではいつも上位に顔を見せるチャボこと吉田泰。準優勝に輝いた 

このコンテストは、最年長現役プロ小室正則が半世紀以上にわたり開催し続けている「マーボーロイヤルKJカップ」のメインイベント。選手はくじ引きで乗るボードを決めて、ヒート制で戦うのだ。ヴィンテージボードでのコンペティションは、海外でも開催されている。だが、これほどの規模は世界でも類を見ないだろう。何せ国内外のツアーで活躍する現役のメンズとレディスのプロ、かつてプロとして活躍したレジェンドと総勢60名以上のサーファーをインビテーションするのだ。

▲(写真右)ビーチには60年代の雰囲気が漂った、(写真左)今年で52回を数える歴史ある「マーボーロイヤルKJカップ」。「死ぬまで続けるよ」と、小室のライフワークである

▲ずらりと並んだリアル・ヴィンテージボード。重さは15キロ以上、当然シングルフィン。ノーリーシュで競う

若いサーファー達に本当のロングボードを経験させたい。

2019年で4年目を数える本イベントだが、小室は始めた理由を次のように語る。

「プロコンテストから引退した連中に、再び活躍できる場を作りたかったんだよ。それに若い世代のサーファーには、本当のロングボードがどういうものだったか経験してほしいと思ったんだ。いずれにしても、日本のロングボードを盛り上げていくことが俺の使命なんだ。いい加減、疲れたけど、死ぬまで続けるよ」

▲レディス・プロクラスのファイナルヒートの面々

これまでとは違ったコンテストを開催して、ロングボードシーンを活性化したいと考えた小室は、周りの仲間に相談をする中で、ヴィンテージボードというアイデアが思い浮かんだ。そして、すぐにヴィンテージボードをかき集めた。

このコンセプトは選手達にも好評だった。現役の選手からは、「おもしろい! 楽しい!」という声が。1960年代に活躍していたレジェンドクラスは、「懐かしいね」と当時に思いを馳せた。

「僕達にとっては1年に1度の同窓会みたいなものです。みんな楽しみにしていますよ」とは、参加者の一人、鈴木正氏。

▲(写真左)やはりロングボードにはシングルフィンが似合う、(写真中)優勝したのは田岡なつみ。さすがグランドチャンピオンの実力だ。「とても貴重な経験をしました。くじ引きで自分のボードを選ぶので、ボードによって乗り味が全く違うのでファーストライドは毎回苦戦しました。ファイナルではアウトから波をつかめ、スピード感を味わえて楽しめました!」、(写真右)女性サーファには、持ち運ぶのも大変な重量だ

とは言え、50年以上前のヴィンテージボードで競うのは、当時実際に乗っていた往年のサーファーにとっても、現役選手にとっても、ひと筋縄ではいかない。何せ重量は15~20キロ! フィンは大きくぶ厚いDフィン。当然リーシュカップはないから、ノーリーシュ。クルマで例えるなら、パワステ、セーフティ機能満載のオートマ車から、重ステでシートベルトもないマニュアルの旧車に突然乗り変えてレースをするようなものだ。まあ、それもクルマ好きにとっては楽しいだろう。路面のコンディションさえよければ……。

▲(右上)引退したプロが集うレジェンド・プロクラスを制したのは、石塚晃、(右下)強風のオンショアが吹き付けるハードなコンディション。アウトでは頭オーバーの波が炸裂、(左上)レジェンド・プロクラスのファイナリスト。往年の名サーファーが集まった、(左下)レジェンド・スペシャル・プロクラスのエキシビジョンにはキッズとともに川井幹雄が登場

大会当日、会場の辻堂の海は、頭オーバーでオンショアの強風でスーパージャンク。ゲットに手こずり、ワイプアウトをしてボードを飛ばす選手も少なくない。ケガも危惧されるクローズドのデンジャラスなコンディション。ライフガードもギャラリーもヒヤヒヤしながら観戦していた。

だが、ビーチにいた、あるレジェンドがひと言。

「昔はこんなもんだったよ」
 
60年代が今によみがえった。

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FUNQ NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

FUNQ NALU 編集部の記事一覧

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