【マット・チョナッキー】サーフィンを止めるな/サーファーからのメッセージ
FUNQ NALU 編集部
- 2021年11月24日
INDEX
今、世界は未曾有の変革期を迎えている。Covid-19という未知なるウイルスによって誰もが 経験したことのない自粛生活を強いられ、経済は停滞し、海に入ることさえ煙たがれるこの世の中を、誰が一体予測できたことだろう。これからのサーフシーンはどうなって行くのか。
この大きく時代が変わるその瞬間に、サーファー達は何を想い何を願ったのか。
その断片を切り取り、後世に残すためにこの特集は企画された。
『THE VOICE-サーフィンをとめるな。』
リアルなサーファー達の声をここに贈りたい。
◎出典: NALU(ナルー)no.117_2020年7月号
3月のヌーサフェスティバルを終えてしばらくして、状況は急変
――COVID-19の感染が出始めてからの数ヶ月、マットが住んでいるシドニーではどんな状況だった?
オーストラリアで自粛や隔離といった対策が取られたのは、他の国より少し後のことだったと思う。というのもオーストラリアも日本のように島国だからね。初めの頃は、中国からの旅行者を管理できれば、影響は少ないだろうと誰もが考えていたんだ。2月の後半から3月の頭にかけてヌーサフェスティバルとWSLのロングボードツアーが開催される予定だったから、いろいろな国からやってくる友達のサーファーが、僕のところに集まっていた。到着したときに空港で受けたというチェックについて少し話したけど、その時点では僕たちを心配させるようなことはまったくなかった。でもそれからほんの数週間で状況が変わったんだ。3月の中頃までに感染状況は増大していき、海外から来る人々は安全ではないという認識に変わってしまったんだよ。オーストラリア政府はその時期から移動や旅行を厳しく制限して、海外からの旅行者に対して14日間の外出自粛を義務付けることになった。
サーフィンとは別に、僕はクラシックサーフスタイルの車のカスタムショップを経営しているんだけど、カスタマーたちと直接触れ合わないように業務を行うという規制のもと、カーショップは営業を続けることができたのはありがたいことだったね。
photo: Yasuma Miura
サーフボードが次々と売れる事態に
――シドニーではサーフィンができていた?
今現在(5月下旬)、僕たちは海に入れているし、オーストラリアにおけるCOVID-19の感染は管理されている状況だよ。でも感染が拡大している頃、ボンダイやマンリーをはじめ大きなビーチは閉鎖されているところもあった。とはいえアクティブに活動してアウトドアで過ごすっていうのは典型的なオーストラリア人のライフスタイルだから、自分のローカルエリア内であれば個人的にエクササイズをすることは許されていたんだ。その中にサーフィンも含まれていたことはよかったね。
でも皮肉なことに海は常に混雑するようになってしまって。多くの人々は仕事からはなれ、サイクリング、サーフィン、家でのワークアウトといったアクティビティをして過ごすようになっていたんだ。サーフショップではボードがどんどん売れていったよ。必然的にローカルエリアの外からたくさんの人々がビーチに来るようになってしまった。だから住民やローカルサーファーは、多くの人が訪れることによってビーチがまるで”COVID-19のホットスポット“のようになってしまうんじゃないかと、すごくストレスを感じていたと思う。
photo: Daniel Gschwind
サーフィンがもたらしてくれたライフスタイルに改めて感謝するよ
――そういった状況の中で、何を考えどう過ごしていた?
オーストラリアを含め世界でのCOVID-19に対する制限とそれがもたらした生活は、自分の人生において本当に大切なこと、――家族、友達、健康についてーー 、を考えさせてくれた。幼い頃から海のそばでサーフィンをしながら暮らしてこられたことが、どんなに恵まれた環境だったのかなんて、それまで深く考えたこともなかったしね。ロックダウンが終わったあとの初めてのサーフィンは本当に気持ちよくて、自分の人生にとってサーフィンがいかに大事なものなのかということを再認識することになった。母なる自然と繋がること、海のパワーを感じることは何事にも代えられない。サーフィンは僕の生き方で、サーフィンを通して大切な友達とも出会うことができたんだ! サーファーであるということに、今心から感謝を覚えるよ。
――外出自粛中は家でどんなことをしていた? いつも通り? 何か違うことを行ったりした?
怪我をしていたから家ではその療養をして、元通り動けるようにリハビリをして過ごしてたんだ。実はヌーサフェスティバルの最終日に椎間板ヘルニアをやってしまって。ログ・プロ・ディビジョンで優勝したときも、ずっと痛みを感じながら試合をしてた(笑)。ヌーサからシドニーに帰るときの12時間のドライブでさらに悪化してしまったから、すぐにまた旅に出て試合をしなくてもいいというのはちょうど良かったんだ!
それにクラシックカー3台のカスタムをするプロジェクトもあったから、普段のお客さんの仕事をする間に、その3台を仕上げていく計画を決めたりしていたよ。
photo: Kenyu
サーフィンは僕の生き方そのもの
――今まで当たり前にすることができていた日常生活、サーフィン、旅などは、これから先どうなっていくと思う?
これまでの状況を考えれば……、近いうちはまだ海外に出ることは難しいよね。旅行が通常通りに戻るにはもう少し時間が必要だと思う。そうなるとよりソーシャルメディアでのコミュニケーションが増えたり、サーフィンの撮影なども自分のローカルエリアで行うことがずっと増えるんじゃないかな。サーフィンを発信していくことについてポジティブな面を挙げるとすれば、内容について磨きをかける時間が増えていくだろうから、コンテンツに対してよりクリエイティビティを発揮してクオリティを上げていくことができるようになると思う。
――最後に読者へのメッセージを。
サーファーはどんな状況でも変わらないはず。また海に入ることができれば、魂を清めてくれる偉大な存在として海の水はそこにいてくれるんだ。きっと大丈夫!!
photo: Yasuma Miura
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FUNQ NALU 編集部
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
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