冬の間にこの一本で海への愛を深めてみてはいかが【by 九島辰也】

海に魅せられた女性たちのドキュメンタリーフィルム

サーファーにとって海は身近であり大切なものである。サーフィン談義とはいうものの、よくよく考えると海の話をしているもんだ。言わずもがな海がなくては波乗りはできない。つまり、海に人間が入れなくなればサーファーという人種は消滅する。

なんてことを考えてしまうような映画がある。「SHE IS THE OCEAN」だ。この映画は2021年9月に東京、名古屋、京都で公開がスタートし、その後随時イベントを含め全国展開している。

主人公はタイトルからもわかる通り女性。9人の海に魅せられた女性のドキュメンタリーフィルムである。年齢、職業、国籍がバラバラの彼女たちがそれぞれの世界観を展開するのだが、共通するのは海への深い愛。さまざまな顔を持つ海に正面から向き合う姿を我々に見せてくれる。

9人の中で馴染みのあるのはCOCO HO（ココ・ホー）だろう。父はマイケル・ホー、叔父はデレク・ホーというレジェンドサーファーの家系に生まれた。8歳でプロになり、17歳でプロツアーの選手権を獲得している強者だ。

彼女以外にもサーファーは登場する。ビッグウェーバーのKealla Kennelly（ケアラ・ケネリー）とアンダーグランドサーファーの英雄ブルース・ハンセンの娘Cinta Hansel（チンタ・ハンセル）。よってライディングシーンも十分楽しめる。

ただ、サーファーだけでなくフリーダイバーなどさまざまな視点で海に接する姿が見られるのもこの映画の特徴と言える。“女性”というキーワードがその一つで、女性ならではのセンシティブな世界も見事に表現されている。というのも、フィルムを手がけたのも女性。ドイツ生まれのInna Blokhina（インナ・ブロヒナ）。ケリー・スレーターが出演した長編映画をも完成させた実績を持つ。

ということで、海に行く回数が減る寒い時期だが、この映画で海への愛を盛り上げるのもワルくないだろう。

2019年　98分　アメリカ映画

配給：レイドバック・コーポレーション

宣伝：ブライトホース・フィルム