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北アルプス白馬岳に登り、“雲上に湧く野湯”蓮華温泉へ!

【後立山連峰の無垢なる麗峰、白馬岳】ー山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記 Vol.11ー

温泉大国ニッポン、名岳峰の周辺に名湯あり! 
下山後に直行したい“山直温泉”を紹介している小誌の連載、「下山後は湯ったりと」。
『PEAKS 2025年5月号(No.171)』では、白馬岳を紹介しました。
白馬岳へのアプローチルートはいくつかありますが、本連載の山行でのメインイベントは、もちろん山直温泉!
そこで、登山口にある蓮華温泉を下山後に楽しむルートを選んで歩きました。

“山直温泉”の記事・情報は
『PEAKS 2025年5月号(No.171)』の
「下山後は湯ったりと」のコーナーをご覧ください。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉山本晃市(DO Mt.BOOK)

「しろうま」と「はくば」

新潟県との県境間近、長野県と富山県をまたいで聳える日本百名山の一座、白馬岳(しろうまだけ/標高2,932m)。後立山連峰の最高峰であり、優美な稜線の一角を成す麗峰は、かつて信州側では西山や西岳、越中越後側では大蓮華山(おおれんげさん)あるいは大蓮華岳と呼ばれていた。

大地に緑の若草が萌えだし、山で雪どけが進むころ、信州側の山肌に馬の形をした岩模様が現れる。地元の人々はこの模様の出現を田植えの前に行なう農作業「代掻(しろか)き」を始める目安とした。そして西山と呼ばれていた山は、いつしか「代搔き」の時期に馬模様が現れる山、代馬岳となり、さらに「代」の字が「白」に変わり、白馬岳となった。それに伴い麓の村や駅の名も「白馬」となったが、こちらは「はくば」と読む。

一方、越中越後では、白馬岳を中心とした一連の岳峰(現在の白馬岳、小蓮華山、白馬乗鞍岳)を日本海側から眺めると、白銀に輝く山容が蓮華の開花に似ていることから「大蓮華山(岳)」と呼んでいた。

初めて白馬岳を訪れた際、山岳部出の先輩に「山の名前を間違えると恥ずかしいぞ(笑)」と教えられたことが懐かしい。ただ地元では、山も「はくば」と呼ぶことが多いようだ。

▲小蓮華山から望む、白馬岳長野県側の山肌。猛々しい絶壁に圧倒される。さて、反対側の山容は? 下写真が日本海側の斜面。
▲三国境付近から見た白馬岳富山県側の穏やかな斜面。南北方向から眺めると、非対称の独特な山容を魅せる。右手奥に、剱岳から雄山へと続く立山連峰が聳える。

新潟側から登り、雲上に湧く野湯をご褒美に

白馬岳へのルートはいくつかある。なかでもポピュラーなのは長野県の猿倉から大雪渓を登る最短コース。また、同じく長野県の栂池(つがいけ)からロープウェイを利用し、乗鞍岳、白馬大池を経て山頂をめざすルートも人気だ。いつもの水平志向なら栂池からロープウェイを使うのだが、今回は距離が多少長くなる新潟側から登ることにした。下山後、登山口にある蓮華温泉に浸かるためだ。
*蓮華温泉に関しては、『PEAKS』2025年5月号(No.171)P221の連載「下山後は湯ったりと」をご参照ください。

新潟県の蓮華温泉登山口から白馬岳山頂へと向かう今回のコースは、一般的なコースタイムで往路約7時間、復路約6時間といった行程。早朝、日の出とともに出発すれば、日帰り山行も可能ではある。とはいえ体力的に厳しいうえ、弾丸登山になってしまう。さらにネックなのは、蓮華温泉の日帰り入浴時間。夕方5時までしか利用できない。下山後ゆっくりと温泉に浸かるには、天狗さんのサポート(神通力!?)で早駆けするか、トレイルランナーのように鍛える必要がある。

そこで今回は、山頂直下に建つ白馬山荘に1泊し、翌日のんびり下山するというスケジュールにした。

▲蓮華温泉駐車場(左)から白馬岳蓮華温泉ロッジ(中・右)まで、徒歩約2分。

眺望抜群の天狗ノ庭、清浄なる地を潤す白馬大池

標高約1,470mの山中に建つ一軒宿、白馬岳蓮華温泉ロッジの裏手にある登山口から歩きはじめ、白馬岳をめざす。まずは樹林帯に敷かれた登山道を進み、蓮華の森のフィトンチッドに癒されつつ一歩一歩登っていく。

「六根清浄、六根清浄……」、斜面をひたすら登る。眺望ほぼなし。ここは辛抱の区間。だが、ある地点で視界が一気に開ける。標高2,093mの山腹の一隅、天狗ノ庭だ。ここまで登ってきたご褒美のような景観が、目の前に広がる。これは天狗さんも喜んで庭にするはず!と大きくうなずいてしまう。

▲左)ロッジ裏手の登山口。中・右)清々しい蓮華の森の中を抜け、高度を上げていく。
▲天狗ノ庭。雪倉岳から朝日岳へと続く後立山連峰の主稜線、その先には日本海までも見渡せる。

日本海へと続く大展望を楽しみ、再び「六根清浄、六根清浄……」。第二の辛抱区間だが、苦あれば楽あり。ここを登り切ると、静謐の水をたたえる白馬大池、清浄なる別天地が忽然と現れる。蓮華温泉登山口から登る本ルートは、こうした劇的な変化を楽しめる。

白馬大池は、標高2,380mの大地を潤す火山堰止湖。群生するチングルマやナナカマド、ウラシマツツジ、さらにはオコジョやライチョウ、クロサンショウウオ……、厳しくも美しい環境下、可憐な高山植物や希少な生物たちがそれぞれの命を謳歌している。
ここで少々長めの休憩。急いではもったいない。池畔を散策し、のんびりとすごす。

▲斜度が急に緩やかになり、ここを抜ければ、別世界が待っている。あとひと息。
▲白馬大池手前。紅葉の時季になれば、赤く染まったウラシマツツジなど、さまざまな高山植物の草紅葉が大地を彩る。
▲白馬大池と北西畔に建つ赤い屋根の白馬大池山荘。山荘のテント場にテーブルとベンチがあるので、ここで早めのランチでもいい。

白馬大池でエネルギーを充電し、いよいよ白馬岳へ。ここから先は稜線歩き。前半の行程とは趣の異なる山行を味わえる。

まずは船越ノ頭をめざし、標高を上げる。振り返るほどに白馬大池が小さくなっていく。前方には後立山連峰の稜線が延々と連なり、小蓮華山、三国境を経て、白馬岳山頂へと続いていく。稜線上の登山道から周囲を見渡せば、どの方向を眺めても心躍る。

▲船越ノ頭への途上から見下ろす白馬大池。鏡のような水面に見とれ、何度も振り向いてしまう。

船越ノ頭を越え、さらに小蓮華山へ。この日の天候は下り坂。次第に大きな雲が湧き始め、稜線上に迫ってきた。白馬岳山頂までなんとかもってほしい。そう願いながらも、マイペースでのんびりと歩く。

三国境に着くと、富山県側はすでに雲海に包まれていた。雲の上に浮かぶ峰々は、まるで地球が生み出すアートのよう。しばらく見とれていた。

▲船越ノ頭、標高2,612m。すでに雲上の世界。この先、ずっとこんな景観のなかをゆく。
▲左手に白馬岳から杓子岳、鹿島槍ヶ岳へと続く岩稜帯(長野県側)、前方右側には小蓮華山へと連なる色鮮やかな斜面(富山県側)。東西で異なる山容に、自然の織り成す不思議を思う。
▲天候に恵まれれば、南アルプスはもちろん、さらには富士山まで眺望がきく。
▲標高2,751m、三国境。前方の稜線を進めば、雪倉岳など経て、日本海までたどり着ける。
▲鉢ヶ岳、雪倉岳へと続く稜線は、あっという間に雲海に包まれてしまった。

白馬山荘ですごす至福のひととき

そして、白馬岳山頂。かなりガスが登ってきたが、そのおかげで多彩な光景を楽しめる。刻一刻と様相を変えてゆく標高3,000mの世界。それをまざまざと感じながら、白馬山荘へ向かった。

夕食後、小屋の前でボーっとする。目の前には、ぐるりと壮麗な峰々。東側から富士山、南アルプス、そして穂高連峰、剱立山。さらに西に目をやれば遠くに富山湾……が見えるはずだが、残念ながらいまは雲の下。雲海に包まれたこの日、3,000m峰の稜線だけがぽっかりと浮かんでいる。晴れていれば天の川もくっきりと見えるのだが、見上げた空もどんよりとした雲に覆われていた。

日が沈むにつれ、冷えが厳しくなってきた。
さて、明日の復路と下山後の蓮華温泉を夢見て、早めに休もう。
きっと帰ったら、また来たくなるのだろうな……そう思いつつ、寝床に入った。

▲左)標高2,932m、白馬岳山頂。右)白馬岳山頂付近から見下ろす今宵の宿、白馬山荘。
▲眼下中央の建物は、白馬村営白馬岳頂上宿舎。前方奥に立山連峰が連なる。白馬山荘前より。
▲日没が進むにつれ、打ち寄せる波のように雲海が広がり、立山連峰を少しずつ飲み込んでいった。

山行&温泉data

コースデータ 白馬岳

コース:蓮華温泉駐車場~白馬岳蓮華温泉ロッジ~天狗ノ庭~白馬大池山荘・白馬大池~~船越ノ頭~小蓮華山~三国境分岐~白馬岳~白馬山荘(泊)~白馬岳~三国境分岐~小蓮華山~船越ノ頭~白馬大池山荘・白馬大池~天狗ノ庭~白馬岳蓮華温泉ロッジ~蓮華温泉駐車場
コースタイム:約7時間(1日目)、約5~6時間(2日目)
標高:2,932m
距離:約20km

下山後のおすすめの温泉 新潟県/蓮華温泉

▲それぞれ趣の異なる四つの野天風呂(黄金湯、仙気ノ湯、薬師湯、三国一ノ湯)が、約1.5kmの周遊路上に点在する。白馬岳蓮華温泉ロッジ宿泊者はいつでも利用でき、日帰り入浴ももちろん可能。ロッジに内湯もある。
  • 蓮華温泉
    新潟県糸魚川市横町5-5-14(事務所)
    TEL.090-2524-7237(ロッジ直通/開設期間)、025-552-1063(事務所/冬季問い合わせ)
    入浴時間(日帰り):9:30~17:00
    営業期間:3月半ば~10月20日頃
    入浴料(日帰り):大人¥700/小人¥200(野天風呂)、大人¥1,000/小人¥500(ロッジ内湯と野天風呂)
    泉質:含硫黄マグネシウム炭酸水素塩泉(黄金湯)、単純硫黄泉(仙気ノ湯)、酸性硫黄泉(薬師湯、三国一ノ湯)、単純温泉(内湯)
    アクセス:蓮華温泉駐車場より徒歩約2分

“山直温泉”の記事・情報は
『PEAKS 2025年5月号(No.171)』の
「下山後は湯ったりと」のコーナーをご覧ください。

▶「山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記」一覧はこちら

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PROFILE

山本 晃市

PEAKS / 編集者・ライター

山本 晃市

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

山本 晃市の記事一覧

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

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