1日でも山をたっぷり味わえるフルコースプラン8選
PEAKS 編集部
- 2019年12月20日
INDEX
行動時間が限られるワンデーハイク。でもせっかく行くなら山で充実した時間をすごしたい。そんな少し前のめり気味の人におすすめしたい、日帰りでも内容の詰まったプランをご紹介。見どころだらけのコース、ロングルート、険しい岩場、ルートファインディングが重要な難路など、ありあまる体力と好奇心を満たしてくれる山行プランを8人のツワモノたちがセレクトしてくれた。
ラウンドで日光白根山
青く輝く五色沼を中心に360度パノラマの稜線をめぐる
- 歩行時間:7時間
- 総距離:9.5㎞
日光白根山といえば菅沼や日光湯元起点など健脚向きのルートもあるが、あえて丸沼側から登るのは理由がある。
山頂からは、日光連山や燧ケ岳、武尊山や富士山までも大パノラマで望むことができる。しかし山頂はそこそこに、岩場の急坂を経て五色沼避難小屋へ下る。登り返して稜線に出ると、五色沼が間近に姿を現す。
白根山、前白根山、五色山に囲まれた五色沼は窪地にあり、白根山頂からは遠く、麓からは見ることさえできない。明るく見晴らしの良い稜線に導かれるままにぐるりとめぐる。白根山に登頂した上で逆側に回り込むことで次第に存在感を増す白根山と碧く神秘的な五色沼の光景を全方位から眺めることができるのだ。
それはひとときも目を離したくないほど美しい。夏は高山植物、秋は紅葉、初冬には樹氷を纏った真っ白な山並みが周囲を彩る。稜線とは対称的な樹林帯と湿原の静けさも良い。たっぷり堪能した後は楽々と下りることができるのだから、こんなに贅沢な1日はない。
アドバイス
山頂駅から七色平周辺などは比較的歩きやすいものの、白根山からの下りはザレていてやや歩きにくい。稜線は風が強く、秋には凍結や積雪することもあるためクランポンを携行したい。
アクセス
登山口の日光白根山ロープウェイ山頂駅の起点となる丸沼高原スキー場へは、東武日光駅から東武路線バスが利用できる。マイカーなら関越自動車道沼田ICから丸沼高原まで約50分。
ライター 中島 英摩
テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通う。趣味が高じてライターとなり、トレイルランニングの取材・執筆をメインに、国内外の長距離レースにも出場している。
眺望バツグンの八ヶ岳・編笠山〜権現岳
森と岩。八ヶ岳の魅力が詰まっています
- 歩行時間:8時間10分
- 総距離:10.6㎞
一年を通して多くの登山者で賑わう八ヶ岳。その南端にある編笠山・権現岳を縦走するルートは、眺望あり、ほどよいアップダウンと岩場や鎖場があり、アルペン的な山行が楽しめる。
南八ヶ岳といえば硫黄岳から赤岳が人気エリアだが、このルートはさまざまな八ヶ岳の表情を撮影できるので写真好きの方にもおすすめ。樹林帯はヒカリゴケなどのコケが広がっている美しい原生林。編笠山山頂が近づき森を抜けると背後に富士山、南アルプスを望むことができる。
山頂からの展望もよく南八ヶ岳の山々を一望。途中の青年小屋、別名「遠い飲み屋」は地酒やワインなどアルコール類が充実している。ガイドでもある小屋の主人の竹内さんとの会話も楽しみのひとつだ。
高度感を味わえるギボシ、権現岳の岩稜を過ぎ、三ツ頭から景色に後ろ髪を引かれつつ一気に下る。八ヶ岳山麓には入浴施設や素材にこだわっている飲食店が多く、下山後の楽しみも充実している。
アドバイス
西・東ギボシを通過する際には脆い箇所があるので落石などへの注意が必要。夏山シーズン中はアブなどが多くストレスを感じることが多いので春か秋がおすすめ。
アクセス
車の場合は中央自動車道小淵沢ICから県道11号、八ヶ岳高原ライン、県道618号経由で観音平駐車場まで約8㎞。電車の場合はJR中央本線小淵沢駅からタクシーで約15分。
フォトグラファー 武部努龍
日本写真芸術専門学校卒業。2015年にフリーとなり、山梨県を拠点に山岳写真やアウトドアスポーツを中心に撮影。自宅から近い八ヶ岳や南アルプスへ頻繁に撮影に入っている。
天子山塊最高峰・毛無山で富士見山歩
富士山づくしの周回ルート
- 歩行時間:9時間
- 総距離:16㎞
天子山塊の最高峰・毛無山から雨ヶ岳への稜線は富士山の展望が楽しめる随一の場所。登山口から毛無山山頂までは標高差1,000mのきつい登りですが、初夏のツツジや秋の紅葉が美しく、花や木に恵まれた登山道は年中楽しめます。
途中には不動の滝などの見どころもあり。9合目手前の展望台から見る富士山は眼下に朝霧高原が広がり、その大きさに魅了されてしまいます。毛無山山頂でも迫力ある展望が望め、多くのハイカーでにぎわっています。
毛無山以降は以前は地図では破線ルートで難易度が高いとされていましたが、近年は整備が進み、歩きやすくなっています。雨ヶ岳も展望が開けていて、ハイカーも少ないのでのんびりとすごすには最高の場所。
端足峠まで長い下りを経て、竜ヶ岳への分岐に着いたらA沢貯水池方面へ。途中から東海自然歩道のコースとなり、平坦な歩きやすい道になります。ゴールの道の駅に戻れば歩いた山々が一望でき、満足感に浸れます。
アドバイス
12月から4月上旬は雪山となるので、それなりの装備が必要。また、コース上に水場はないので道の駅で補給を。なおバスの本数が少ないので、バス利用の場合は時間を確認しておこう。
アクセス
車の場合は新東名高速新富士ICから車で40分。公共交通機関の場合は東海道新幹線の新富士駅からバスで70分、富士急行富士山駅からバスで60分。それぞれ、道の駅朝霧高原で下車。
ATC Store店主 芦川雅哉
ハイカーとトレイルランナーのためのショップを富士宮市で営む。自身はトレイルランニングに注力しているが、シリアスランナーではなく山を楽しむことを大事にしている。
奥多摩・浅間嶺からのマイナートレイル
里山の生活感と山奥の孤独感を体感
- 歩行時間:6時間10分
- 総距離:10㎞
雲取山、奥多摩三山。奥多摩と聞いてまっさきに挙げる人も多いだろう。でも、このエリアには無数の登山道がある。なかでも個人的に推したいのがここ。
地図上で見ると、なんてことのないゆるふわデイハイクルートに思える。でも、前半と後半のギャップが激しいタフな道なのだ。スタートから浅間嶺までは関東ふれあいの道「歴史のみち」。かつて檜原村の生活道、交易路でもあったため、そのなごりを感じることができる。
浅間嶺付近からは、北に大岳山〜御前山、南に富士山や丹沢を眺めることができる。さて、ここからがこのルートの醍醐味。破線ルートゆえ登山者はほとんどいない。道はあるので迷うことはないが、ゆるい感じは一切なく、途中に激坂下りも待ち構えている。
しかも、樹林帯ということもあってか、思った以上に長く感じる。なかなか下山できないな……と思う人もいるはず。ちょっとハードでマニアックなデイハイクをしたい人にぜひ足を運んでほしい。
アドバイス
前半は歩きやすく、ついついスピードを上げてしまいがち。すばらしい里山なので歴史を感じながらゆっくり歩くのがオススメ。後半は慎重に。時間に余裕を持ったプランを立てよう。
アクセス
公共交通機関の場合、JR武蔵五日市駅からバスで約20分。払沢の滝入口下車。駐車場もあるのでマイカーで行くことも可能。下山後は笹平バス停からバス。本数が少ないので要確認。
ライター 根津貴央
現在「ヒマラヤは世界最大の里山だ」をコンセプトに、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査中。国内でも里山を交えながらロングハイキングを楽しんでいる。
白峰南嶺の秘境南 アルプス・青薙山
南アルプスの外れにはこんな山もあるんですよ
- 歩行時間:10時間30分
- 総距離:19.5㎞
複雑に入り組んだ南アルプスの地形のなかで、立派な稜線を持ちながらも明瞭な登山道がわずかな区間しかない山域が「白峰南嶺」。
マイナーというベきか、ツウ好みというべきか、四季を通じて、ほとんどだれにも会わない場所だ。
そのなかでも青薙山は「穴場」。踏み跡のような登山道が山頂まであるが、道標はほとんどない。夏はヤブが茂り、気を抜いているとルートを見失う。標高2,400m程度だが、舐めちゃいけない。
しかし、それだけに自然は濃厚だ。ところどころに現われる展望台のように開けた場所からは、南アルプス主稜線の眺望もバツグン。聞こえるのは鳥の声ばかりだ。
個人的なおすすめが、池ノ平という場所。「平」という地名だけあって、広々と開放的な空間で、見上げるほどの大木が林立。同様に地名通りに、おいしい清水が湧き出てできた「池」があり、バイケイソウの緑も瑞々しい。
僕ならば山頂に行かず、たんなる池ノ平往復でも満足してしまうだろう。
アドバイス
途中には小屋などはなく、エスケープルートも取れない。しかも道迷いを起こしやすい地形と、まさに難ルート。山に不慣れな人には危険だ。水は途中で通過する池ノ平で湧き水がとれる。
アクセス
沼平の登山指導センター近くに駐車場。公共交通機関を使う場合はJR静岡駅から、しずてつジャストラインのバスで畑薙第一ダムへ。ただし夏のみの運行。そこから20分歩くと沼平だ。
山岳/アウトドアライター 高橋庄太郎
得意な山域は、南アルプスよりも北アルプス。とはいえ南アルプスの主だった山やルートは歩いたが、ここで紹介した青薙山のようなマイナー峰のいくつかは、いまだ手付かずのまま。
難所連続の上級者向き裏妙義周回
スリルと展望満載。鎖が連なる岩稜歩きです
- 歩行時間:6時間30分
- 総距離:8.4㎞
木川を挟み表妙義と対峙する裏妙義は、鎖連なる迫力満点の岩稜歩きを楽しめる。国民宿舎跡の左手から林道を進み、右の籠沢登山道へ。あいまいな沢道は次第に狭まり横チムニーを抜けて2段8mの鎖を登る。慎重にルートを探って沢沿いに登り、籠沢のコルを越えて左に回った岩稜を登れば丁須ノ頭基部に着く。
西に登った中間峰は展望360度の岩峰だ。岩稜を鎖で越え、木立の尾根からチムニー内20mの鎖を下る。赤岩は左手から大岩壁の基部をトラバース。続いて足元の切れ落ちた桟道で岩壁真っただ中を通過。連なる鎖をたどり稜線に出れば浅間山がおおらかだ。
この先も左手山腹道に鎖は飽きるほど続き、岩稜の右手から尾根に出た所が風穴尾根ノ頭だ。左の岩上でたどり来た奇岩群を見渡せる。
三方境に下って登り返し、谷急山への途中で左に下るのが女道。立木の目印を追って谷急沢に下り、沢沿いから右手の山腹道に上がれば尾根を越えて林道に出る。これを下れば出発点に戻り着く。
アドバイス
丁須の頭は鎖が付いているが、登るならクライミングの装備と技術が必要。6〜9月はヒルに悩まされることがある。三方境から植林の巡視道を下れば歩行時間を短縮できる。
アクセス
国民宿舎跡へは、マイカーなら上信越道松井田妙義ICから約15分。駐車場、トイレあり。タクシーはJR信越本線横川駅から約15分。徒歩だと横川駅から片道約1時間。
山歩きライター 打田鍈一
日帰りのスリリングな低山が好き。著書に『藪岩魂-ハイグレード・ハイキングの世界-』、『分県登山ガイド埼玉県の山』(山と溪谷社)、『山と高原地図西上州』(昭文社)など。
駅から駅へ 秀麗富嶽・滝子山
夏は沢で遊びながらずんずん歩く!
- 歩行時間:7時間20分
- 総距離:16.2㎞
大菩薩南嶺にある滝子山は通年楽しめる山。春は新緑が美しく、夏はなんといっても沢沿いの登山が気持ちよく涼しく歩くことができます。場合によっては、軽い沢登りも可能です。
秋は紅葉ハイク。広葉樹が多く赤や黄色と青空のコントラストはインスタ映え必至。初冬は、落ち葉を踏んでフカフカした登山道が楽しめます。
このルートはなだらかな登りが続き、キツイ登りはあまりないですが、その分距離は少し長めです。途中の曲り沢峠の手前の分岐では滝子山へは行かず、大谷ヶ丸へ向けてなだらかな登山道を進みます。これまでとは違い少し踏み跡が不明瞭になるので注意して進みます。
大谷ヶ丸は山頂標のみで眺望は期待できませんが、樹木に囲まれており休憩にはもってこいの場所です。そこから滝子山へと歩を進めます。滝子山の山頂付近に差し掛かると急に視界が開け、空気の澄んだ日には遠くに富士山を見ることができます。あとは、初狩駅に向けて登山道を下るだけです。
アドバイス
曲り沢峠の手前にある分岐を滝子山へは行かず大谷ヶ丸へ向かうので、分岐でしっかりとルートを確認しよう。またこの先は少し踏み跡が不明瞭になるので、注意して進むこと。
アクセス
登山口の吉久保入口までは中央本線笹子駅からアプローチが可能。下山も初狩駅まで下りてくるので、そのまま電車に乗れる。駐車場は両駅の近くで便利に使えるところがあまりない。
コロンビアスポーツウェア 営業 山岡英樹
フリークライミング、雪山アルパイン、アイスクライミング、トレイルランニング、沢登り、バックカントリー……。幅を広げすぎてしまったが季節を通して山を楽しむ。
地図読みで奈良の名山縦走 三峰山〜高見山
冬の樹氷ハイクもオススメです
- 歩行時間:8時間20分
- 総距離:20㎞
奈良を代表する台高山脈とは、北は樹氷で有名な高見山、南は百名山である日出ヶ岳を含む大台ヶ原までをいう。今回ご紹介するコースは高見山より北東に続く稜線を歩くコース。
まずは青少年旅行村の登山口から不動滝コースで三峰山山頂を目指す。冬の澄んだ空気であれば、遠くアルプスの山も望める展望もある。途中の八丁平で台高山脈を眺めながら食べる食事は格別。
今回のコースの目玉でもある八丁平から高見山までの破線ルート歩きとなるが、細かいアップダウンが非常に多い。大きくみると三峰山から請取峠まで下り、そこから高見山に登り返すイメージ。累積標高は1,900mくらい。
ちなみに、近々このルートを使ってトレイルランニングの大会が行われるかもしれません。アクセスは公共交通機関利用が難しいのでマイカーが基本になりますが、登山口に戻るのが大変なので2台で1台を下山口に置いておけるとベストです。
アドバイス
コース全体として細かいアップダウンが多くペース配分が難しい。コース上にテープも少ないので地図とコンパスは必須。冬季であればルートファインディングがさらに重要になる。
アクセス
大阪からは名阪国道針ICで降りて369号でみつえ青少年旅行村の登山口へ。三重からは名阪国道上野ICで降り、そこから368号を南下。369号に入りみつえ青少年旅行村の登山口着。
ヨセミテ 店主 豊田祥大
奈良県橿原市にあるアウトドアショップ「ヨセミテ」の店長。ハイカー&トレイルランナーであり、2017年夏には念願のヨセミテへ行き、ジョン・ミューア・トレイルを踏破。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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