BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ
  • Bicycle Club BOX

筆とまなざし#164「3年ぶりの冬の八ヶ岳。厳冬期の阿弥陀岳山頂へ」

赤岳、そして阿弥陀岳北稜、冬の入門バリエーションルートへ。

冬の八ヶ岳に来るのは3年ぶりくらいでした。かつては毎週のように通っていたけれどここのところはとんとご無沙汰。しかも週末に来ることはほとんどなかったので人の多さが新鮮でした。あとで知ったのですが、ちょうどこの週末は赤岳鉱泉でイベントがあったようです。

いつもなら麓にも雪が積もっているはずが雪がない。それでも、行者小屋が近くなると積雪量が一気に増し、真っ白く雪化粧した横岳が眺められました。岩壁にもしっかりと雪が付いていて、ここまで来れば雪山は雪山です。それにしても天気が良くてとても穏やか。小屋の周りにはすでにテントがたくさん張られており、空いているスペースを見つけてテントを設営しました。時間はまだ昼前。天気も良いので赤岳へ登ることにしました。

久しぶりの山でしたが案外歩調は順調です。文三郎尾根の急な雪面を登ると視界が開け、阿弥陀北稜や赤岳主稜を登る人の姿が見られました。まだ2月が始まったばかりの厳冬期。八ヶ岳は吹雪の記憶がほとんどでしたがまるで3月のような陽気で、暑い。そう思っていましたが、さすがに稜線が近くなると風が強くなり体感温度も下がってきました。ぐんぐん高度を稼いで行者小屋ははるか下方に見下ろせるところまで登ってきました。岩場を越えて赤岳の頂上へ。来た道を下るのもおもしろくないので地蔵尾根から下山しました。小屋が近づくと山々が少しずつオレンジ色に染まりはじめ、夕食の準備に取り掛かるころには夕日が雪を纏った大同心を朱色に染め上げました。

翌朝は4時に起床。朝食をかき込み、ハーネスをつけて出発しました。今日は阿弥陀北稜を登ります。文三郎尾根のトレースから分岐を中岳沢方面へ。途中から右へトレースをたどり北稜に取り付きます。ほんの少し前を先行パーティーが登っています。ダケカンバがまばらになると傾斜が増し、雪壁となりました。じつは、核心の岩場よりもこちらのほうが緊張するところ。ロープをつけていないからです。ビレイするほどでもないけれど、落ちたらアウト。いつでもロープを出せるようにしながらゆっくり登り、斜面が緩やかになると岩壁の取り付きにつきました。

さすがに天気の良い週末の人気ルート。3パーティー7名の順番待ちです。ここで急に風が強くなり、朝の冷え込んだ空気がまともに顔に吹きつけてきました。順番待ちをしていると指先がずいぶん冷えてきます。北稜は冬の入門バリエーションルート。クライミング自体は短くて岩場も難しくありません。核心はこの岩場の出だしで、sⅢ+というグレードが付いています。しっかりとしたハンガーボルトが付いていましたがそれは使わずカムでプロテクションを取り、雪壁を越えた稜上の岩でビレイ。さらに上部の岩壁を登ると左右が切れ落ちたナイフリッジとなり、慎重に渡って雪面をひと登りすると阿弥陀岳の頂上にたどり着きました。

頂上からは見渡す限りの大展望が広がっていました。富士山が端正な姿で浮かんでいます。中央アルプスの奥にあるなだらかな山は地元の恵那山でしょう。風もなく暖かな日差しの下に真っ白な峰々。ロープを束ねてしばらく休憩したあと、この景色に名残惜しさを感じながら急な雪面を下っていきました。

SHARE

PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

No more pages to load