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筆とまなざし#166「冬型気圧配置の日は、アトリエで絵を描き、本を読む。」

 雪雲が流れる日は、ストーブを点けて、アトリエで絵を描き、本を読む。

低気圧が通りすぎて冬型の気圧配置となった朝、この冬では珍しくうっすらと雪が降り積もっていました。ときどき青空が顔を出すものの、すぐに灰色の雪雲にかき消されて冷たい北風が吹いてきます。この辺りは太平洋側なのだけれど、冬型が強くなると高山方面から雪雲が流れてきます。笠置山へ開拓に行こうか。少し迷ったけれど、こういう日はストーブを点けたアトリエで絵を描くのがいちばんです。

小さな本のなかに詰まった大きな世界に触れること。

アトリエ小屋の壁一面には大きな本棚が備え付けられています。学生時代に読んだ本、買ったものの読んでいない本、あるいは読み始めたけれど挫折してそのままになっている本。絵を描いたあとに少しだけ、そんな本を引っ張り出して読むのが最近の楽しみとなっています。東京にいたころは移動の時間に読むことが多かったけれど、岐阜での移動はもっぱら車なのでなかなかそんな時間がありません。かといって、まとまった時間があればほかのことをやってしまい、この数年はとんとまともに読書をしていなかったのです。お粗末ながら物書きを生業とする自分にとってこれは死活問題。なにより、この小さな本の中に詰まった大きな世界に触れることなくすごしていては自分の世界がさらに先細りになっていってしまうと焦り始めたのでした。そこで思いついたのが、絵を描いたあとに読書タイムを設けることでした。

仕事のあとに気軽に読めて物語が完結するので短編集がお気に入り。はからずも、2月14日に手にとったのは柴田元幸の短編集『バレンタイン』。東京にいるとき、柴田さんのトークイベントの際に購入したもので、表紙をめくるとしっかり「成瀬洋平様」とサインが入っています。日付を見ると2008年。とくに理由はなかったのですが、いつの間にか12年の歳月がすぎていたのでした。そして今日手に取ったのは、山岳図書としてはあまりにも有名なガストン・レビュファの『星と嵐』。何度か読んだのだけれど、今年のクライミングトリップへの気持ちを高めようと再び手に取ったのでした。

クライミングトリップに向かう前に読みたい『星と嵐』

『星と嵐』のサブタイトルは「6つの北壁登行」。ヨーロッパアルプス三大北壁は、マッターホルン北壁、アイガー北壁、グランド・ジョラス北壁で、この本ではさらに3つを付け加えて6つの北壁登攀のようすを綴っています。3つというのはすなわち、ピッツ・バディレ北壁、ドリュ北壁、そしてチマ・グランデ北壁。ちなみに、北壁を英語でいうと「North Face」。ブランドロゴはヨセミテのハーフドーム北壁をモチーフにしているのですが、北壁というのは日が当たらないため気候や氷雪などコンディションが厳しく、多くの山においてほかの面(東、西、南)よりも登攀が難しいことが多いのです。

今夏、ドロミテへのクライミングトリップを計画していて、ようやく安いチケットが出回ってきたのでいつ腹を括るかと思っているところです。そして、是非とも登ってみたいのが『星と嵐』でレビュファが登っているチマ・グランデ北壁の通称「コミチ・ルート」。1933年にイタリア人クライマー、エミリオ・コミチらによって初登されたドロミテを象徴するルートです。数年前にドロミテを訪れた際、ノーマルルートからチマ・グランデを登ったことがありました。ノーマルルートといってもただ歩いて登れるわけではありません。ここでの登山とはすなわちすべてクライミングを指し、少なからずクライミング技術が必要なのです。ノーマルルートはチマ・グランデを別ルートから登った際の下降路でもあり、偵察がてら登ったのでした。しかし、そのときは雪が降ってしまったため北壁を登ることは諦めたのでした。

今年の夏は登れるでしょうか。グレードはⅦプラス、デシマルグレードにすると5.11bの17ピッチ520m。グレードはそれなりですが、ドロミテ特有の岩の脆さやプロテクションなどが気になるところ。気候条件は現地に行ってみないとわかりません。まずは自分たちの技量を磨くべく、暖かくなってきたらマルチピッチのトレーニングを開始しようと思っています。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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