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日本地図センターに聞いた!地図読みの楽しみ方とその魅力

日本全土を網羅した2万5000分の1の地形図。登山者必携の地図はどのように作られているのか。また、地図読みのコツと活用法を探るべく、販売元の日本地図センターを訪ねた。

想像力をかき立てる地図の上の仮想世界

東急田園都市線の池尻大橋駅から徒歩7分。渋谷駅から歩けば15分ほどだろうか。国道246号と交差する山手通り沿いに、日本地図センターはある。

ここは、国土地理院が作成した地形図や地勢図などを印刷、またはデジタルデータなどを販売する〝生産・流通拠点〞だ。一方で、独自に地図関連の雑誌や書籍を出版するなど、地図や地理空間の情報発信、普及にも取り組んでいる。

入口のフロアを飾るのは、明治42年時の1万分の1地形図だ。

今回は編集出版部の主幹研究員であり、月刊誌『地図中心』の編集者、小林政能さんに、地形図について話を聞くことができた。
「倉庫をご覧になりますか?」
1階の売店〈地図の店〉はのちほどゆっくり見学することにして、まずは小林さんのすすめに従い、倉庫へと向かった。

エレベーターを下りた瞬間、紙とインクの匂いが鼻孔をくすぐる。
広々とした空間には、端から端まで背の高い棚が整然と並んでいた。
このワンフロアに4420面に及ぶ、日本中の2万5000分の1地形図がすべて収納されているという。

建物を入ってすぐ左手には<地図の店>がある。

「国土地理院の地形図は、国の刊行物なんです。その証として、紙には三角点の地図記号の透かしが入っています。お札の親戚みたいなものですね。ちなみに、紙地図の寸法は460㎜×580㎜。これは緯度経度に由来しているのですが、〝柾判〞(まさばん)と呼ばれる地形図だけの判型です」

登山でもおなじみの2万5000分の1の地形図は、日本全国をカバーしているものとして、もっとも詳細な地図だ。全国整備が完成したのは2年前。整備を始めてから、じつに半世紀近い月日を費やした一大事業だった。

いまや日本全土の地形図を揃える販売店はごくわずか。デジタル地図が普及した昨今、紙の地形図の販売数は右肩下がりというが、この日、売店の客足が途絶えることはなかった。大学生と思わしき若者から、仕事中に立ち寄った風の女性、年配の男性まで、客層も幅広く、地図人気の高まりが肌で感じられた。

「最後まで残っていたのは北方領土でした。以前は、航空写真から地図を作成していたのですが、上空を飛行できなかったので、作成にはいたらなかった。衛星画像の技術が進歩したことで、ようやく完成させることができたんです」

地図には歴史的な背景が反映されている。
変遷をたどることで、時代の流れが理解できる

日本全土の地形図が揃ったとはいえ、それで終わりではない。地形の変化や、新たな道路・鉄道など変化が生じたときには、データを修正する必要がある。また、より見やすく、使いやすくという観点から、デザインの見直しも繰り返し行われてきた。現在は、3色刷りから多色刷りへと、順次変更している最中で、毎月50~30面が新しいデザインに更新されているのだそうだ。

地図や関連資料、グッズ、空中写真が所狭しと並ぶ店内。

「以前の地形図では、道路の込み合う場所は省略して描いていましたが、新しい地形図では、道路の数まで忠実に反映されています」
地図の精度があがるのはよろこばしいが、ときに予想外の影響を及ぼすこともあるようだ。

「先日、世田谷区について調べたところ、区の総面積が過去に2回変わっていたんです。原因は実面積の変化ではなく、面積を計算する元の地図が変わったことでした。ほかの地域でも、おなじようなことは起こっているかもしれませんね」

やわらか素材でできた『クニャマップ』は、丸めて保管可能。現状、追加生産の見込みはないため、気になるエリアは早めに購入を!

地形図の整備のため、日本で一等三角測量が始まったのは、明治初頭のことだ。
軍制がフランス式からドイツ式に切り替わったことを受けて、地図も色彩の豊かなフランス式に代わり、よりシンプルなドイツ式が採用されることとなった。地図記号が統一されはじめたのもこのころのことだ。当時は、測量を陸軍が管轄していたため、地図記号にも軍隊のニーズが反映されていた。

「境界協会」の主宰も務める小林さん。詳細はFacebook でチェックを。

田んぼを水田と乾田などに分け、〝軍隊が通れるかどうか〞が重要視された指標の記号が多く見られるのも、興味深い。

「地図記号の図式は明治以降、何度も変更されて、いまにいたっています。時代とともに淘汰される記号も多く、その昔、養蚕(ようさん)が重要な産業だったことを意味する〝桑畑〞も近々姿を消すことになりました。反対に、老人ホームや風車のように、新しかったり、再登場する地図記号もある。地図には歴史的な背景が色濃く反映されるので、その変遷をたどると、時代の流れもよく理解できると思います」

日本地図センターが開発したiPhone版地図アプリ『東京時層地図』。明治から現在までの、7つの時期の地図や空中写真から、時代の変遷をたどることができる。iPad 版では2画面表示で過去と現在の地図を並べて見ることも可能。

地形図の作成方法についても、昔といまでは大きく異なると小林さんは言う。
「空中写真から衛星画像へ。また、測量の分野でも、レーザーなどの最新機器が導入され、飛躍的に進歩を遂げています。ただ、等高線に関しては、いまだアナログの領域ですね。昔は1本1本手作業で線を引いていたのですが、いまでも最終的には目で見て、加工する必要がある。まだまだ人の手が必要なんです」

等高線といえば、地図読みの基本。登山では地形を把握し、現在地を特定する重要な手がかりになるが、理解するには少々コツがいるのも事実だ。

地図の上はある意味、バーチャルな世界。
自由に想像を広げる楽しさがある

「色で地形を塗り分けられる〝カシミール3D〞というフリーソフトの登場により、等高線が読めなくても、だれでも感覚的に、立体的に地形を捉えることができるようになりました。僕はこのことを〝等高線からの解放〞と呼んでいるんですが、一方では色分けの弱点というのもあるんですね。

人間の目の色彩分解能力というのはそこまで高くない。ある地点とある地点の高さを比較する場合には、等高線の地図の方が、色分けよりも遥かに認識しやすく、優れていると思います」

倉庫には日本全土、4,420面に及ぶ2万5000分の1の地形図を保管。北と南でエリアを分け、地域別に分類・収納している。通常、倉庫の内部は非公開だが、イベントの際には一般公開することも。

地形を読むうえでは、等高線では表現しきれない地形の変化も、考慮すべきと小林さんは指摘する。
「等高線がゆるやかな場所では、線と線の間10mに隠れている地形が、予想とは異なる場合もある。等高線にばかり引きずられず、そうした可能性があることも、考える必要があります」
もうひとつ、現在地を正確に認識するには、距離感を掴むことが重要と語る。

地形図上に、活断層の位置や変位、地形学的な情報をカラーで表示した『2万5千分1都市圏活断層図』。

「一度、自分の歩幅がどのぐらいなのかを測ってみるといいと思います。次に、歩きやすい場所の地図を1枚用意して、実際の移動を地図に落とし込んでみて下さい。何度か繰り返すうち、自分が何分歩いたか、どのぐらいの距離を進んだか。いまは地図上のこのあたりだろうという感覚が理解できるようになるはずです。また、地図を読むときには、縮尺の確認も忘れずに。

ネットの地図をプリントアウトするときは用紙のサイズなどの都合で拡大縮小されたりしがちなので、僕は必ずスケールバーを入れて、印刷するようにしし、対応しています」

2万5000分の1の地形図の販売数では、穂高が長年不動の1位だという。地図の上はある意味、バーチャルな世界。自由に想像を広げる楽しさがある。

最近では、スマートフォンやGPSなどのデジタルマップを利用する登山者も増えているが、小林さんは紙地図の携行を強くすすめる。
「スマホやGPSは電池の問題もありますし、広範囲を見るという一覧性においては、紙地図に軍配があがります。紙の地形図は1部300円前後と安価ですし、お守り代わりに携帯して頂けたらと思います」

山にある三角点のように都内にも測量の痕跡は多く残っている。「高さを測量する“几号水準点(きごうすいじゅんてん)”は、神楽坂の毘沙門天や江戸城の石垣にも見られます」。

また日頃から地図に慣れておくことも、地形を画像としてイメージする練習になるという。

「慣れてくれば、地形図に目を通しただけでも、迷いやすいポイントがわかるようになります。また、ここまで歩いたら、こういう景色が見えるはずという具体的なイメージを描くことができるので、道を間違えた場合でも早めに気づくことができます。現在は空中写真から地図を作成するのが主流で、現地調査は以前よりは行われないため、地図上と実際の登山ルートが多少、異なっているという場合もあります。あくまで地図は基本の情報。地形を読むためのひとつのツールと考えて下さい」

地図の上はある意味バーチャルな世界。だからこそ、自由に想像を広げる楽しみがある。小林さんの趣味のひとつが〝境界線〞をめぐることだ。2年前からは東京の区と区の境をめぐる街歩きイベント『境界協会』も主宰しており、クチコミで人気を博している。

地図記号というと目印になるような構造物などを想像しがちだが「等高線も道路も、じつは記号。地図は基本的にすべて記号で描かれているといっても過言ではないです」。

「境界線というのは、地図上にはありますが、目には見えません。実際にその場所に立ってみると、思わぬ発見があります。山の県境でおもしろいのは飯豊山ですね。一見山形県と新潟県との県境にも見えるのですが、尾根筋から、飯豊山神社のある山頂付近にかけては、福島県が細く伸びています。また一時期、湖の中に境界を引くブームがありましたが、琵琶湖の境界線はパズルのように入り組んでいてユニーク。湖岸の長さの比率で分配が決まったのだと思いますが、なぜそういう線が引かれたのか、想像するのも楽しい」

じつは、まだはっきりとした線が決まっていない境界というのも、全国各地に多く見られるという。

小林さんが編集する月刊誌『地図中心』。

たしかに地図を見ると、境界線が途切れている箇所が、あちこちに散見する。一方、地方の自治体では、〝境界線〞を打ち出して、観光地化しようという、新たな動きも生まれているというからおもしろい。

「地図そのものを作ることが好きな人もいれば、地図を趣味の道具として活用する人もいる。僕は、地図というのは、器のようなものだと思っているんです。お皿に好きな料理を盛りつけるように、思い思いに楽しめる自由がある。それが地図の魅力だと感じています」

Profile

日本地図センター 地図研究所 編集出版部/小林 政能さん

1967年埼玉県生まれ。千葉大学大学院理学部を修了後、国際航業に入社。国土地理院出向を経て、一般財団法人日本地図センターに入職。月刊『地図中心』の編集を担当している。

日本地図センター・地図の店

東京都目黒区青葉台4-9-6
流通事業部販売営業課
TEL.03-3485-8120
営業時間:10:00~17:30
※現在は新型コロナウイルス感染防止のため、16:00までの営業となっています。
休業日:土日祝、年末年始

地図と学ぶ月刊誌・地図中心

古地図から最新地図まで毎号、多彩な地図を掲載。それぞれの特徴や開発秘話に迫り、地図のさまざまな楽しみ方を紹介している地図専門誌。毎月10日発売。電子版も好評発売中。

日本全土の地形図を発行&空中写真も扱う

国土地理院の作製した地図や航空写真の生産・販売を一手に担い、月刊『地図中心』などの雑誌や書籍も発行。デジタル地図やソフトウェアの開発・販売なども行っている。また、地理空間情報に関連した情報収集や調査研究、『地図地理検定』やイベントを実施するなど、普及活動も展開。現在、建物改修工事にともない、地図資料室は閉鎖されているが、売店は通常通り営業中だ。地図に関する質問や相談は、地図相談室03-3485-5417まで。

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PEAKS 編集部

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