私たちがテント泊でもローカットで歩くワケ
PEAKS 編集部
- 2020年09月25日
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ウルトラライトに代表されるように、登山用品は時代とともに軽量化が進んでいる。そうした軽量化の影響もあり、テント泊でもローカットシューズで歩く人が増えている。最近増えている「テント泊=ローカット」の魅力を実践している3人に聞いた。
文◉堀内一秀 Text by Kazuhide Horiuchi
写真◉宇佐美博之、中島英摩、服部賢治、山村佳人、中村英史 Photo by Hiroyuki Usami, Ema Nakajima, Kenji Hattori, Yoshito Yamamura, Hidenori Nakamura
軽量化がもたらした新たな選択肢
道具の進化で変わったシューズの選択肢
昔は登山といえば、重い荷物に重い靴で、ひたすら修行僧のように歩くのが当たり前だった。しかしギアの軽量化で、こうした登山の重苦しいイメージは過去のものになりつつある。
たとえば昔は、テント泊の縦走ということになれば、荷物は20㎏超が当たり前。夏山でも1週間を超える長期になれば30㎏、40㎏もザラだった。しかし最近なら10㎏台前半でのテント泊もよくある話で、10㎏を切るケースだって珍しくない。
そしてこうした軽量化の影響は、シューズの選び方にも現れている。
重荷の場合、足や足首を保護するためにハイカットの登山靴が適している。これは荷物が重いと、足を置く場所の選択肢が少なくなることの結果でもある。
その逆に荷物が軽くなればローカットの軽い靴で軽快に歩いたほうが楽しい、という人も多いだろう。ハイカットのシューズには足首を捻挫から保護する役割もあるので、足首を捻りやすい人ならローカットは避けたほうが無難だが、そうでなければ足の取り回しが軽いローカットの靴を試してみる価値はある。
靴の選択は個人の自由だが、以前のように「テント泊ならハイカット」という固定概念は見直してみよう。初めは1泊程度のテント泊でも良いので、ローカットシューズを試してみても良いのかもしれない。
堀内一秀さん
大学山岳部で登山全般を始める。卒業後は登山に加えてアドベンチャーレースに参加。現在はロングトレイルが中心。好きな山域は南アルプス南部。
サロモン/Xウルトラ2 GTX
大学に入って本格的に登山を始めようと、ワンダーフォーゲル部に入部した。当時の装備はキスリングにオールレザーの登山靴で、主に鈴鹿山脈や日本アルプスの縦走をした。
2年目にクライミングや冬山もやりたくなり、山岳部に移籍。山岳部で驚いたのは、革の登山靴は夏の雪渓での雪訓や、クランポンでのクライミング練習ぐらいしか使わない、ということだった。沢は地下足袋とわらじだし、冬はプラスチックブーツなので、革の登山靴の出番はかなり少ない。
そして当時、お金のない学生登山者として愛用していたのが「世界長」のパンサーというペラペラのスニーカーだった(廃版になったが復刻版が出た)。
クライミング用のフラットソールは出始めだったので、簡単なフェイスやスラブの岩登り(さすがにクラックはアッパーが薄いので厳しい)や縦走はすべてパンサーでこなしていた。
おかげで、テント泊でも足元はローカットで軽いほうが歩きやすい、という感覚が染み付いたのだと思う。
そんなわけで、よほどの重荷でない限り、現在でもローカットを愛用している。
ゼロポイント/エクスペディションパック 80
歩行時荷物重量:20~25kg(水、食料含む)
中島英摩さん
京都出身。出張の多い仕事をしていて、たまたま東北で山に登り登山にハマる。トレランも始めトルデジアン、UTMB、UTMF、分水嶺トレイルなどを完走。
コロンビア モントレイル/トランスアルプス
登山からトレランを始めて、ずっとコロンビアモントレイルのカルドラドを履いてトルデジアンなどのウルトラロングなトレイルランニングのレースに参加していました。それでずっとローカットのシューズに慣れていました。
テントを担いでロングトレイルを歩くにあたってもトレランシューズで行きたかったのですが、アッパーやソールの強度に不安がありました。そこで、同じコロンビアモントレイルのローカットでも、もう少し作りのしっかりしたトランスアルプスというシューズを選びました。
実際にトレイルを31日かけて1,000㎞歩きましたが、アッパーが大きく破れることもなく、ソールもそれほど減らず一足で歩き通すことができ、いい選択をしたと思っています。水抜けの悪い防水シューズではないので、濡れても一晩で乾くほど乾きが早かったのも良かったと思います。
年間を通して山に行くので、ローカットのシューズだけでなく、もちろんミッドカットやハイカットのシューズも持っています。雪山になればハイカットで行きますし、槍穂のような岩稜であれば軽トレッキングシューズで行ったりもします。雪がないようなところであれば、やっぱり足さばきのいいローカットで行くと思います。
オガワンド/オウン
容量:最小25ℓ~最大50ℓ
歩行時荷物重量:13~15kg(水、食料含む)
服部賢治さん
大阪の箕面出身。主にULのギアを扱うムーンライトギア店長。現在は高尾在住でクライミング、山岳滑走、ファストパッキングなどで山を楽しむ。
アルトラ/スペリオール4
実家から歩いて数分のところにトレイルがあり、小さいころから自然に山を歩いていました。高校、大学で本格的に登山を始めましたが、そのころは普通の革の登山靴を履いていました。
大学時代のサッカー部で、山中を走る練習があり、そこでローカットのトレランシューズを使ったことがきっかけで、登山でもそのようなシューズを履くようになりました。低山はもちろんですし、日本アルプスでも雪のない3シーズンはローカットシューズで歩いています。
ローカットシューズが良いのは、足さばきがしやすく歩けること。また、下りなら走ることもできます。
ULのギアだと、20~40ℓほどのバックパックでテント泊を行なうことができ、2人用テントを入れても10㎏以内に収まります。荷物の軽量化によって自然との距離を近く感じられるようになることが、UL本来の目的であり、もともと、自然を感じたくて山に登るわけですから、このメリットは大きいと思います。
ローカットモデルでも行く場所や歩く距離の長さ、荷物の重さなどによってさまざまな選択肢があるのではないでしょうか? 近場の高尾山などは、ベアフット感覚を大事にしてワラーチのようなサンダルで登ったりすることもあります。
マウンテンローレルデザイン/バーン38
容量:38ℓ
歩行時荷物重量:4~8kg(水、食料含む)
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文◉堀内一秀 Text by Kazuhide Horiuchi
写真◉宇佐美博之、中島英摩、服部賢治、山村佳人、中村英史 Photo by Hiroyuki Usami, Ema Nakajima, Kenji Hattori, Yoshito Yamamura, Hidenori Nakamura
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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