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登山者が知るべき温泉マナー

汗をかいたあとのひとっ風呂はこの上ないぜいたく。下山後の温泉が楽しみという人も多いのでは。自分が快適にすごすためにはもちろん、だれもが気持ちよく楽しめるよう、最低限のマナーは頭に入れておこう。

文◉根岸真理 Text by Mari Negishi
イラスト◉尚味 Illustration by Naomi
出典◉PEAKS 2020年10月号 No.131

山中・ふもと共通編

♨︎ タオルや手ぬぐいを湯船に入れない

たたんだ手ぬぐいを頭に乗せて入浴しているスタイルが温泉のイメージとして定着しているが、みんながつかるお湯を清潔に保つため、タオルや手ぬぐいを湯船に入れないというのは共同湯における伝統的な基本ルール。洗ったつもりでも皮脂や汚れがついていることがあり、たとえ使っていない清潔なものであっても、他人からは不快感があるもの。またお湯の質によっては、着色して落ちないこともあるので注意。

♨︎ 全身の汗をしっかり洗い流してから浴槽へ

登山はハードな運動であり、いくら涼しい高山であったとしても、山行中は大量に汗をかくもの。加えて、皮脂に砂ぼこり、泥などがミックスされることもあり、長期山行の場合にはなかなかガンコな汚れが体表面を覆うことになる。ふだんなら、ザっとかかり湯をしてドボン! でよいかもしれないが、お湯を汚すことのないよう、くれぐれも注意を怠らず。

♨︎ 長期山行などで汗臭い場合は脱いだ服を広げたまま放置しない

着ている本人にはわからなくても、何日も汗を吸っては乾くことを繰り返した衣服は、いくら抗菌防臭機能があるものだとしても、それなりに臭う。脱いだときにはさほど気にならなくても、入浴後にさっぱりとした気分で出てきたら、わが物であってもかなりイヤな存在に。脱いだその手で、ビニール袋などで密閉してしまおう。

♨︎ 浴室や洗面所で洗濯をしない

汗をたっぷり吸って、持ち歩くのも気が重い汚れた衣類。洗ってさっぱりさせておきたくなる気持ちはわかるが、温泉や銭湯などの共同湯で洗濯をするのはNGだ。周囲の迷惑でもあり、混雑時はとくに早く次の人に場所を譲らなければならない。ただし宿泊先のホテルや旅館など、自分の部屋の洗面所であれば問題はない。

山中の野湯編

♨︎ 入浴前にまずは水分補給を

山を歩いたあとは、しっかり水分補給をしているつもりでも脱水気味になっているもの。入浴するとさらに脱水が進むので、まずはしっかりと水分補給を心がけよう。

♨︎ 石けんやシャンプーを使用しない

下水道がない山中の温泉では、排水はすべて自然分解に頼ることになるため、石けんやシャンプー、洗顔フォームや歯磨き粉などは使用しないこと。ゴミを捨ててはいけないのと同じことで、人工物を自然界に垂れ流すことは、環境にダメージを与えることになるのだ。

♨︎ 湯につかりながら飲酒しない

雄大な大自然のなかにある野湯で、景色を眺めながら一献……というのは魅惑的だが、入浴中は血液の循環が良くなるため、アルコールの回りも早く酔いやすくなる。また、飲酒によって平衡感覚が悪くなるため、転びやすくなるなどのリスクも高くなる。飲酒後の入浴も同じ理由でNGだ。

♨︎ 温泉には「湯尻」から入る

洗い場があって、きちんとかかり湯ができるような場合は別だが、そうではない野湯の場合、湯が流れ出す「湯尻」から入るのが基本。

♨︎ 湯冷めしないよう防寒着を用意

温泉で温まると、末梢の血管が拡張して体温を放散しやすくなる。標高の高い場所にある温泉や気温が低い季節は、すぐに衣服を着られる準備をしておくと同時に、入浴後に湯冷めをしないよう、防寒着を忘れずに用意を。

♨︎ スマホやデジカメを持ち込まない

どんなにインスタ映えする景色抜群の野湯であっても、写真が撮れる機器を温泉に持ち込むのはマナー違反。カメラはもちろん、一般的にスマートフォンやタブレットも撮影可能な機器なので、写真を撮るつもりはなくても持ち込まないのが基本。

♨︎ 貴重品は見える場所に置いておく

貴重品は、防水のスタッフバッグか保存袋に入れて見える場所に。カメラやスマートフォンも、使わない意思表示も含め、防水袋に収納しておこう。

♨︎ 入浴時間は厳守!

時間によって男女交代制になっている温泉の場合、衣服を身に着ける時間も考慮して時間配分をしよう。1時間交代という設定の温泉もあるが、湯に入っていられる時間はかなり短くなるので、注意が必要だ。

♨︎ 混浴の場合はまず声掛けを

男女別になっておらず、混浴状態の温泉の場合、入っている人を驚かせないようにまず声を掛けよう。

♨︎ 裸浴で入っている人がいる野湯に水着で入らない

水着、湯着がOKと謳っている温泉もあるが、そうではない温泉の場合、裸浴が基本であれば、水着で入るのは控えよう。混浴でやむを得ない場合は、ひとこと声掛けをしておくとトラブルを防げる。

こんなところにも注意!

  • 脱衣室でも浴室でも会話は控えめ、なるべく小声で最小限に
  • アクセサリー(とくにシルバー素材)は温泉成分で変色することがあるので注意
  • ピアスなどを落とすと見つからなくなる場合があるので気をつける

野湯を組み込んだ山行であると便利なアイテム

貴重品などを入れる防水サック、または大きめジップロック

カギのかかるロッカーなどがない野湯の場合、貴重品は見えるところに置くと安心。湯船の近くに置くことになるので、防水袋に入れておこう。

お風呂セット入れのスタッフサック

着替え一式と手ぬぐいなど、お風呂で必要なアイテムは、ひとまとめにしてスタッフサックに入れておけば、そのまま持っていけるので便利。

薄くて小さめのレジャーシートか、ビニール風呂敷

野湯の場合はとくに、脱いだ衣類をまとめられるシートがあると便利。脱衣場があっても、棚が濡れていたり、置いておくのがはばかられる状態の場合にも重宝する。

速乾タオルや手ぬぐい

ふつうのタオルは濡らすとなかなか乾かないため、速乾性のある機能性タオルか、日本古来の手ぬぐいが◎。とくに端が断ちっぱなしの手ぬぐいはすぐに乾く。

サンダル

湯あがりの汗をかいた状態で靴下や靴を履くのは不快。脱衣場への出入りをスムーズにするためにも、サンダルは非常に役に立つ。

下山後の立ち寄り湯編

♨︎ 大型バックパックを脱衣室に持ち込まない

場所を取る大きな荷物は周囲の迷惑になるので、施設の人に確認したうえで置き場所を考えよう。その際、盗難に遭わないよう注意。

♨︎ 泥靴のまま施設に入らないよう下山口でざっと泥を落とす

山のなかでは気にならない靴の泥汚れも、街中の施設では迷惑そのもの。下山口に靴を洗える場所があることが多いので、靴底も含めてきれいにしておこう。サンダルがあるとスムーズ。

これはNG! 温泉施設の人に聞いた“迷惑行為”

その1

カップラーメンなど、山で出た食材のゴミを持ち込んで館内のゴミ箱に捨てていく方がいらっしゃいます。ひとりが入れると次々と増えていくので絶対にやめていただきたいです。

その2

雨天時、濡れたバックパックやレインウエアのまま入ってくるとほかのお客さまの迷惑になります。汚れた衣服のままで館内のソファやベンチに座ることも迷惑行為です!

その3

泥のついた靴を館内の手洗い場で洗うのはやめてください。またお客さま用ではない水道を無断で使用する方がいます。汚れのひどい靴は袋に入れるなどの配慮をお願いします。

その4

登山者に限りませんが、入浴時に体を洗わないで湯船につかる方が意外に多く、困っています。周りの方々のことを常に考えて気持ち良く利用してほしいですね。

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