テント泊ソロ装備紹介〜中島英摩さんの場合〜
PEAKS 編集部
- 2021年09月24日
ソロでアウトドアを楽しんでいる業界人は、一体どのような装備を組んでいるのか? 気になるあの人の装備を、シチュエーションを設定して見せていただきました。今回はアウトドアライター中島英摩さんのケースをご紹介します。
文◎中島英摩 Text by Emma Nakajima
写真◎宮田幸司 Photo by Koji Miyata
出典◎PEAKS特別編集 【最新版】みんなの山道具
年間山行100日以上。魅せる収納よりも、効率重視でコンパクトに。
昔からゲームといえばテトリスが得意だ。空いたスペースを見つけては、計算してきれいに埋めたくなる。限られたスペースにみっちり詰まっている状態が好きなのだ。
ひとり暮らしの部屋は決して広くはない。ギアフリークに比べれば、ギアの量はさほど多くはない。なぜなら、使わなくなったものは泣く泣く手放すように心がけているから。収集癖はあるものの、こればっかりは仕方がない。あまり片づけが得意でないことを自覚しているからこそ、少しでもモノを減らすことが部屋をきれいに保つ最善の策だ。
日頃の生活は、アウトドアやトレイルランニングの取材が中心で、春~秋のシーズンはとくに山行取材が多い。2泊3日の縦走から帰ってきた翌日から100㎞以上のトレイルランニングレースの取材、戻ってきたら中1日で今度は海外、なんてこともある。その度にパッキングを解いては、シーンに合わせて準備し直す必要があり、部屋の中はもう大混乱! なにがどこにあるのかわからなくなり、パッキングにも余計に時間がかかる。そこで考えついたのが、「とりあえずカゴにざっくり入れてしまおう」という収納法。ジャンルごとに仕分けられていて短時間で速やかに必要なものを見つけ出すことができる。販売店のバックヤードから着想を得た。棚板が可動するアイアン風ラックにちょうど合う高さのカゴは100均で見つけたもの。メジャーを片手にお店を回った。アウトドアギアはそれなりに高い。そのぶんインテリア雑貨は節約。いまどきの100均インテリアはデザインもよくできていて充分。安物だと友人に気づかれたこともない(笑)。
カゴ収納の方法は、まず家に帰ったら、バックパックを逆さにして床の上にギアを全部ぶちまけて、それらのギアを決めたジャンルごとに分別。次に、仕分けしたカゴに放り込む。多少乱雑に入れても、カゴさえラックの中で直線に整列して入ればさほど散らかって見えない。大雑把な性格にもピッタリ! モノを探しやすく、一気に効率的になった。見た目はちょっとボーイッシュだけど、生活スタイルを優先して、魅せる収納はいさぎよく諦めた。
バックパックのパッキングスタイルも似ていて、余計なファスナーや飾りのないものが好きだ。一気室のバケツ型モデルを愛用しており、ジャンルごとに緩く詰めたスタッフバッグをテトリスで隙間を埋めるように詰め込んで、最終的にキレイにまとまればそれで気持ちがいい。
ただし、大きなギアはそういうわけにもいかない。そのため、簡単な壁面収納をDIY。狭い廊下でも省スペースで飾れるように施した。ここでもテトリス式を発揮。ギアのサイズや形に合わせてパンチングボードの四角に収まるように並べている。
ほぼひと部屋にギュギュッと詰め込んだ収納にはもうひとつの理由がある。リラックスする空間のリビングにだけは、ギアは置かないルールにしているのだ。グリーンや花をたくさん飾り、ソファには好みのファブリックをかける。温もりのあるテーブルに、お気に入りの絨毯。イラストや写真、置物もある。山に行かない休日は癒されるモノに囲まれた空間で、ソファに寝っ転がって、温かいものを飲みながら映画を見たり本を読んだり。たまにはギアを視界からなくして、山から離れるひとときも大切にしたい。
ちびっこサイズにあわせたギアをセレクト
旅好きな私は、約1カ月の単独行に出かけた。場所は、南仏ピレネー山脈。山を歩きながら田舎の町や村を繋いでいく。何度も試行錯誤した装備の総重量は約15㎏。
私がギア選びでもっとも重視していることは、「自分のサイズ感に合わせること」。身長155㎝の私は小柄なほう。例えば小さなクロスオーバードームfも、身長の低い私にとっては充分な広さがある。サイズが大きすぎるものは容赦なくカットし、衣類もジャストサイズを選べば生地が少なく軽量化を図ることができる。着替えは1セットずつ、洗濯をすれば多くは必要ない。寝袋は薄めだが、衣類を全部着た状態でその季節の耐寒温度を想定して選ぶ。
でも取捨選択は苦手なほうで、心配性ゆえにエマージェンシーキットがやたらとかさばる。しかしこれらは、長期縦走中にどんなことが起きても自分自身で対処できるようにするための必須装備だ。
もちろん長旅のお楽しみも忘れない。人の多い山麓リゾートに下りたときに泥だらけの短パンTシャツで歩きたくはない! そんなときはメイクをしてワンピースを着て、小さなパックで散歩をしたりカフェでの食事を楽しんだりしたい。行動食もドライフードばかりではせっかくの旅が味気ない。湖畔に腰かけ、絶景を見ながらフルーツや美味しいパンを頰張るのが至福のひとときなのだ。
【テント泊装備】フランス・ピレネー山脈縦走(30泊31日)の場合
衣[WEAR]
オガワンド OWN(カスタムオーダーver.)
容量:25~50ℓに可変
総重量:約15㎏
(左から)
- マウンテンハードウェアのレインジャケット。過酷な嵐も想定して、屈強なものをセレクト。
- ティートンブロスのレインパンツ。ポーラテックのネオシェルを使用。
- レーヨンのワンピース。街に下りたときのお出かけに。
- ウールのインナー付きランニングパンツ。
- ポーラテックアルファダイレクトを使用した山と道のアルファアノラック。
- モンベルの腿まであるロングレッグウォーマー。
- Tシャツの替え。
- 水着。
- 指あきグローブと防寒テムレス。
- 速乾タオルと手ぬぐい。
- ソックスはドライマックス。
- 軽量ウォーターシューズ。
食[COOK]
(左から)
- バケット、ワッフル、菓子パンなど。
- 食料はおおよそ5 ~ 6日分。日本からはウルトラランチのビバークレーション、ドライフードのたまごスープや親子丼を持参。
- アルファ米のご飯類。
- なとりのペンシルパルカス。
- ビタミン補給の果物。
- ボトルはコンパクトになるようにソフトなものを使用。浄水器は必須。
- ジップロックコンテナは水漏れが少なく、いろんな使い道があるのでひとつは持っておくと便利。
- トレイルバター。
- ナッティハニージェル。
- タイガー魔法瓶の夢重力ボトルは、200㎖用でわずか110gの保温ボトル。
- クッカーはチタンマグのみ。ガスは現地調達。
- お手製スタッフバッグ。
- サプリメント。
- 粉末スープ、ココア、コーヒーなど。
住[STAY]
(左上から)
- クロスオーバードーム。収納ケースは、雑に入れられるようにやや大きめのものを利用。
- マットは折りたたみ、バックパック内の背中側に入れて外付けはしない。
- オガワンドのOWNは荷物を出すとぺたんこになるので、テント内でも場所を取らない。
- OMMのマウンテンレイド1.6。
- スリーピングバッグカバー代わりのSOLエマージェンシービビイ。
その他[OTHER]
(左上から)
- EOSのミラーレス一眼とGo Pro。
- ヘッドランプはUSB充電式のぺツルNao。
- SOLのエマージェンシーポンチョは、急な夕立ちでもバックパックごと覆うように着ることができる。
- ノーテックのクランポンはワイヤー式。
- 現地SIMカードとスマートフォン2台。
- 30日間縦走するためのエマージェンシーキットはいつもの登山の2倍の量。
- パッカブルの携帯パック。
- 浄水タブレットは念のため。
- GPS、ガーミン eTreck 30xJには現地のトポとルートをインストール。
- 熊鈴では音が小さいため、カウベルで。
- 針と糸、細引き、カラビナ、バンジーコード、洗濯バサミなど。
- ニーベルト。
- 女性としてメイクグッズも忘れない。
- 英字のガイドブック。終わったルートから破って捨て、最後には極薄に。
- 自作の行程表。重要なポイント(キャンプ場、簡易宿、山小屋、避難小屋、スーパー、銀行、薬局、病院、近くの駅)などを記載している。
こだわりアイテム
小さなチタンカップにすべてが収まるギア選び
バーナーにナイフ、マッチやライター、折りたたみカップに固形燃料まで、多彩なツールがノルディスクのチタンマグ450㎖にパズルのように収まる。
化繊素材でレイヤリング。濡れの心配なし
長期縦走では嵐や渡渉などパック内部まで濡れるようなリスクもある。水に弱く乾きにくいダウンは持たず、すべて化繊素材の高機能な防寒着でレイヤリングを構成。
マットは身長に合わせて必要サイズにカット
155㎝の身長に合わせて、サーマレストのZライト・ソルのSサイズ(130㎝)を約100㎝にカット。マットは腰下まで、足元はバックパックを敷く。
テント間取り図
ヘリテイジ クロスオーバードームf
重量:600g
収容人数:1人
同ブランドのクロスオーバードームよりもさらに軽量・コンパクトな自立型ツエルト。使用環境は限られるが、ポール込みで600gと軽量。この狭さでも装備を全部内部に収めることができたのは小柄な人の特権だ。
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Info
- BRAND :
- PEAKS
- CREDIT :
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文◎中島英摩 Text by Emma Nakajima
写真◎宮田幸司 Photo by Koji Miyata
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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