ベストがあるとベストです
PEAKS 編集部
- 2021年10月28日
まず、はじめての一着に入ることはなく、結果使っていない人も多いアイテムがベストの保温着。しかし、ベストは無限の可能性を秘めている。投入しないのはあまりにももったいないウエアなのだ。
文◉杉村 航 Text by Wataru Sugimura
イラスト◉佐々木悟郎 Illustration by Goro Sasaki
※この記事はPEAKS 2020年11月号 No.132からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。
フリースやダウン、化繊インシュレーション……。ミドルレイヤーはどうしても防寒の意味合いが強いので長袖のイメージだが、そこにベストという選択肢を入れてみてはどうだろう。袖はないけれど、体幹をしっかりと温めてくれるので保温効果は絶大。それでいて暑すぎることなく、行動中も動きも妨げないので、着ていることを忘れるくらい。防寒着1着では不安、かといって2着持っていくのは少々やりすぎだし、荷物がさらに増えてしまう。その点、ベストなら嵩張らないので、バックパックの片隅にパッキングできるし、ベストの上からフリースやダウンを重ね着するのもあり。
ベストの魅力はほかにもある。僕はベストのヘビーユーザーなのだが、その理由のひとつに収納力がある。状況に合わせて着たり脱いだりを繰り返すジャケットや長袖のミドルレイヤーと違って、常に身につけていることが多い。このため、頻繁に使うものはベストのポケットに入れておくと、中身を入れ替える手間が省けるのだ。携帯や財布、サングラスといった小物類に始まり、ときにはカメラのバッテリーやフィルター類、小さ目の交換レンズまで入れてしまっていたりする。うっかり写真に撮られると、いびつに膨れ上がっていたりして格好悪いのだが、気にせず便利に使っている。袖がない分、動きに窮屈さもなく快適。寝るときまでそのままのこともあるくらいだ。
ミドルレイヤーとひとくちにいってもいろいろな種類があるが、僕はざっくりと以下のように使い分けている。低山や比較的短めの山歩き、キャンプサイトで焚き火をしたりするときはフリース。残雪期から夏山、秋山では、雨や汗、ときに沢で濡れることも多いので、化繊のインシュレーション。そして、極寒の冬山、本気モードで装備を極限まで軽量化したい登山のときはダウンといった感じだ。
ちなみにベスト以外のミドルレイヤーは、中間着という名のとおり通常はシェルジャケットの下に着ているのだが、実は一番上に着ることも多い。休憩時にサッと暖を取ったり、稜線上で立ち止まって写真を撮ったりするとき、シェルの上から羽織っている。短時間ならそのまま行動することも。わざわざシェルを脱いで着たり脱いだりしていては、時間もかかるし体温も奪われてしまうからだ。よほど過酷な天候状況でない限り、この方法はかなり有効で、シェルで中綿のロフトが圧縮されることもなくふっくら。保温効果を十分に発揮してくれる。防風性や防水性のあるモデルなら、アウターとしても心強い。
さて、ベストの話に戻ろう。実はファッション的にもお洒落なアイテムだと思っている。重ね着してもシルエットが膨れ上がらないので、コーディネイトしやすいのは街着といっしょ。ボタンダウンのシャツの上にベストを着ていると、イカツイおじさんもちょっとスタイリッシュに見える(見えてほしい)。ベストを一枚加えるだけで、山着のバリエーションが増えてお得な感じだ。とにかく、シーズンを問わず、一着あると活躍してくれること間違いなし。きっと手放せなくなるだろう。
あと、個人的な意見としては、女子のベストはフード付きが好み。たまにフードをかぶってくれたりしたらたまりません。でも、防寒着が足りないくらいのほうが、「僕のを貸そうか」って展開になるから、結果的には良いのですが。
杉村 航
エクストリームな撮影が得意なガチガチの山岳フォトグラファー。でもいかつい風貌とは裏腹に、繊細な感覚の持ち主。ウエアの見た目だって意外と気になる。
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文◉杉村 航 Text by Wataru Sugimura
イラスト◉佐々木悟郎 Illustration by Goro Sasaki
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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