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『焚き火料理の本』|PICK UP BOOK

文◉猪野正哉 Text by Masaya Ino
写真◉柏木ゆり Photo by Yuri Kashiwagi
出典◉PEAKS 2021年11月号 No.144

reviewer 猪野正哉

焚き火マイスター。千葉市にあるアウトドアスペース「たき火ヴィレッジ〈いの〉」の運営管理人。テレビ番組『石橋、薪を焚べる』(フジテレビ)では焚き火を監修した。著書に『焚き火の本』(山と溪谷社)。

無駄なものは、ひとつもない。煙や焦げも極上のスパイスになってくる。

アウトドアに限らず、知識や経験がない状態で新たなことにチャレンジをするとき、人との出会いはもちろん、どんな本に出合い、参考にするかが重要になってくる。見誤ってしまうと上達するものも上達しない。

「アウトドア料理の達人・小雀陣二」に出会うまで、調理といえば焼くことがすべてだった私は、運よかったのかもしれない。小雀流を見様見真似し、ある程度は様になってきていると思っている。雛鳥が生まれて初めて見たものを親だと思うように、初めのお手本が肝心で、以降は勝手にその人のスタイルが染みついてくるものだ。料理の世界ではとくに当てはまるように感じる。

じつはこの本の撮影に関わっており、胃袋を提供させてもらった。料理のできばえはもちろん最高。小雀さん自身が煙に燻されながら作る料理は、その煙をもスパイスにし、焦げすら味のアクセントとしてしまうところに驚かされた。あたりまえだが手際もよく、道具をきちんと整えた万全な状態から調理を行なう。「塩、どこだっけ?」「お皿、どこだっけ?」と、私ならあたふたするような状況は皆無だ。料理のレベルは追いつけないが、こういうところも、マネしたくなってしまう。

本著では秋の夜長にピッタリな、じっくり時間をかける料理のレシピも紹介されている。しかし、いまのキャンプ料理の主流はスパイス調味料を使った時短メニュー。食材に振りかけるだけでだれもが簡単においしい料理を作れてしまう優れもののため、私も頼ってしまっているが、はじめからスパイスありきだと、どこか味気なくなってしまうし、上達していないのにアウトドア料理が上手くなったと錯覚してしまう。たとえるならカーナビに頼りすぎて、まったく道を覚えないのといっしょだ。せっかく料理をするなら調味料の基本である「さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)」をしっかりと学び、体や舌で覚えたい。

また “焚き火” というフレーズだけでハードルが高いと感じてしまう人も多いはず。そういう人は、まず私の著書『焚き火の本』を読んでほしい(笑)。決して難しいことはなく、理屈とコツを知ってしまえば苦手意識はなくなるだろう。「炭のほうが火力が安定して調理に向いている」と一般的には思われているが、熾火(燃やした薪から炎が収まり、芯の部分が真っ赤に燃えている状態)を作ってしまえば、炭と同じ役割を果たしてくれる。炭は薪よりも火熾しに時間がかかるし、炭で調理したあとに薪を使うのは面倒でもありコストもかかる。できることなら焚 き火のついでに料理、料理のついでに焚き火を楽しみたい。

小雀さんが「自分で火を操り、料理を仕上げるところにおもしろさがある」と言うように、自分で火を育て、薪を動かし、火加減を調整できれば、ちょっとした達成感が味わえる。炭よりも暖かい環境で調理でき、ガスバーナーにはない風情も楽しめるので、これからのシーズンにぜひ挑戦してみてほしい。

焚き火料理の本

  • 小雀陣二・著
  • ¥1,540
  • 山と溪谷社

著者は「チュンチュン」の愛称で親しまれ、アウトドアコーディネーターとしても活躍している。本書ではさまざまな調理道具を使い、“焼く” “煮る” “炙る” の全56品のレシピを紹介。なかでも焚き火と深い関わりがある「薪焼きカルボナーラ」は必見レシピだ。基礎知識はもちろん、焚き火料理に欠かせない調理グッズは著者ならでは。

「焚き火料理の本」をAmazon.co.jpで見る

出典

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PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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