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ショップスタッフに聞く効果的なアプローチ。装備を軽量化するために【後編】

装備を軽量化するために登山装備の基本は軽量・コンパクトであること。軽量化は永遠の課題だ。各論に入る前に、ここで基本的な考え方を整理しておきたい。軽量化に取り組む前に知っておきたいことを、ヨシキ&P2の吉野時男さんに尋ねた。

文◉伊藤俊明
イラスト◉マイコペリー

装備を知る。自分を知る。

道具の重さを測る

自分にはなにが必要か、それがわかれば軽量化は簡単だ。いらないものを削ればいい。

では、そのためになにをするか。漠然とした目標は、数値化することで具体化する。自分が使っている道具の重量を測ることからはじめよう。

登山装備の軽量化について言及するとき、必ずいわれるのが「道具の重さを測る」ということ。カタログスペックではなく、実物一つひとつの重さを実際に計測する。たとえばテントなら、フレーム、インナーテント、フライシート、張り綱、ペグ、スタッフサック、それぞれ何グラムか確かめる。

テントそのものを変えるのはコストがかかるが、ペグやスタッフサックならもっと気軽に考えられる。スタッフサックはナイロン生地の丈夫なものもあれば、シルナイロンでできた軽いものもあるが、自分の装備のなかにスタッフサックがいくつあるか、すぐに答えられるだろうか。スタッフサックの重さを合計すると何グラムになるか。それらは全部なくてはならないものだろうか。

すべての装備を測るのはそれなりの手間がかかるが、何度か繰り返せばそれぞれがどのくらいの重さなのか、だいたい掴めてくる。具体的な重量がわかれば軽量化に取り組むターゲットも見えてくる。山行準備をしながらやれば一石二鳥だし、手間以上の多くの発見があるはずだ。

山の気温を測る

簡単にわかるもうひとつの数値がフィールドの気温だ。バックパックにはキーホルダータイプの温度計を付けておこう。暑いと感じたとき、寒いと感じたときに気温が何度なのかチェックする。そのとき自分はどこにいたか、なにをしていて、なにを着ていたか、どんなふうに感じたか。繰り返すことで、その気温ならどんな風に感じるかをイメージできるようになる。次に出かけるときは、山小屋が公表している気温や、天気予報の予想気温が道具選びの指標になるだろう。一般的な持ち物ではないが、携帯用の風速計も大いに役に立つ。安価なものなら2,000円程度で手に入る。

山から帰ったら装備を検証する

同じ山に何度も通う人は、過去に行なった数値化がより役に立つ。いつもの登山口からいつものテント場まで、どのくらいの時間がかかるか。装備が軽くなるとどのくらい変わるのか。

同じ装備を使っていても、天気や体調によって歩く時間は変わってくるだろう。暑くなるとどうなるか、寒くなるとどうなるか。同じような天気で、同じウエアを着ているのに疲れを感じるなら、体調に問題があるのかもしれない。繰り返すことで感覚は磨かれ、自分自身の体力や限界もわかってくる。

山から帰ったら使った装備を検証する。なにが快適でなにが不便だったか。足りなかったものはなかったか、持っていったのに使わなかったものはないだろうか。ホームマウンテンをつくり、データを蓄積することで装備は洗練されていく。

失敗ノススメ

新しい道具を買うのではなく、いまある手持ちのもので軽量化したいと考えるなら、余裕のある山行の際に新しいことを試してみるのがいいだろう。トラブルがあってもすぐに引き返せる日帰りの山や、日程にゆとりがある山、危険箇所が少ないルートでちょっとチャレンジしてみる。水や食料を減らす、ウエアを減らす、ローカットの靴で歩いてみる、テントをツエルトに変えてみる。やったことのないことをやってみる。失敗したらどうなるかもイメージしておくと、いざというときにも慌てずに済む。

だれしも失敗したくはないが、失敗を恐れて安全策ばかりとっていたら次のステップには進めない。失敗は多くのことを教えてくれるから、リカバリーできる余裕があるときに、ぜひ新しいことに挑戦してみてほしい。その経験は、登山を続けていくうえで必ず役に立つ。

軽量化に正解はない。答えは自分で見つける。

登山装備の軽量化は永遠のテーマだ。軽くすることは古くから良しとされてきたし、「どうしたら軽くなるか」は、これから先も変わらず問われ続けるだろう。

ここで紹介してきたことも特別新しいことではなく、すでに知っているという読者も多いかもしれない。では、あなたはそれを実践しているだろうか。

漠然と山に行き続けても装備は1gも軽くならない。その方法を知っているだけでもダメ。軽量化するためには、少しでも軽くしようと意識して実際にやってみること。そうして経験と知識を積み重ね、いらないものを削ぎ落としていく。地道なやり方だが、これを繰り返すことで軽量化は必ず実現できる。

体格や体力、趣味指向は人それぞれだ。人によって快適と思える道具が違うように、軽量化も万人に当てはまるただひとつの正解はない。だれかが教えてくれるものではなく、自分で自分の答えを見つけるしかない。次の山行が、その最初のチャンスになる。

教えてくれた人

ヨシキ&P2スタッフ
吉野時男さん

千葉県習志野市にあるヨシキ&P2のスタッフにして、本誌ではおなじみの頼れるご意見番。山ならなんでもござれだが、軽量・コンパクトな装備でいくスピード重視のスタイルが好み。夏ならバーナーも持たないストイックな山行をすることもある。

※この記事はPEAKS[2022年4月号 No.149]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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