笠置山の「The Last Frontier」水彩画でトポを描く|筆とまなざし#305
成瀬洋平
- 2022年11月30日
笠置山で最後となる一帯のルート開拓再開。
印象的な2本のクラックがVの字に伸びる大岩。高さは15mほどでしょうか。もうずいぶんと前に見つけて気になってはいたものの、ほかのエリアの開拓に夢中だったりエリアのなかでアプローチがいちばん遠かったりしてなかなか重い腰が上がらず、2本のクラックを登ったのは昨年の秋のことでした。谷にあるため日当りが悪く、冬になるとすっかり足が遠のいていました。
ここのところの晴天でモチベーションも上がり、数週間前からこの岩の開拓を再開しました。ほかのラインもいくつか初登し、トラッドルート5本、ボルトとカムのミックスルート2本、ボルダー課題も数本でき、めぼしいラインはひととおり出揃いました。難しくはないけれどどれも個性的。トラッド中心でプロテクションの取りにくいピリリとスパイシーなルートもあって、わざわざ登りに行く価値はあると思えるエリアになりました。
ルートのエリアとしては笠置山で最後となるこの一帯を、ひとりで勝手に「The Last Frontier」と呼んでいました。そろそろシーズンも終盤だけれど、ちょっとしたお披露目会を行ないたい。そんなことを考えるようになりました。
お披露目会に際してやってみたいことがありました。それは水彩画でトポを描くこと。最近は写真のトポが多いのですが、以前は手描きのイラストで描かれることがほとんどでした。岩の特徴をよく捉えて簡素な線画で描いた手描きのトポ。海外では手の込んだイラスト版もあったりもしてとても味わい深い魅力があるのです。
岩の特徴を簡略化するのはとても難しく、ついつい描きこんでしまう自分は不得手。ならば水彩画で描いてみよう。そう思って雨が上がった先週のある日、クライミングシューズの代わりに画材を持って「The Last Frontier」に出かけました。
あっちの角度から描いたりこっちの角度から描いたり、さまざまな場所から岩を眺めてルートがわかりやすいようにひとつの絵にまとめていきます。定点から描くいつもの絵とはまた違った作業で、難しくもあり新鮮なおもしろさに満ちていました。それは新しいモチーフとの出会いでもありました。描くのはなかなか大変な作業ですが、また気が向いたときに描いてみたいと思います。
友人たちに声をかけ、今週末ちょっとしたお披露目会を行なうことになりました。ルートとともにこのトポも楽しんでもらえますように。
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