雪山テント泊 HOW TO!風対策や雪を入れない工夫など…快適な一夜を過ごすためには
PEAKS 編集部
- 2023年01月30日
雪山でのテント泊には、夏山とは異なる作業が必要となる。設営までの基本的な流れと内容を紹介するので、事前の予習に。手順を理解したら、あとは実践あるのみ。楽しい雪山テント泊に挑戦しよう!
文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
写真◉宇佐美博之 Photo by Hiroyuki Usami
雪山のテント泊は強風対策を忘れずに
雪上でひと晩を明かす雪山のテント泊。寒さをいちばんに心配するかもしれないが、その前に気をつけたいのが風の影響だ。夏山でも注意すべきポイントだが、雪山では夜になるととくに強く風が吹くことが多いため、強風でポールが折れないように風除けを作り、その中にテントを張る。これが夏山と雪山の大きな違いだろう。この作業は整地と呼ばれていて、雪面を掘るスコップが欠かせない。整地は疲れた体に応える肉体労働だが、ていねいに行なうか否かで、静かな夜を迎えられるかどうかが決まってくる。大変でも手を抜かずに作業しよう。
装備が濡れると雪山では乾かすことは困難なので、設営したテントに入るときは、中に雪を持ち込まないように注意する。用意したブラシなどで、登山靴はもちろん、ジャケットやバックパックに付着する雪も払うようにする。ほかにも内側にテントマットを敷くなど、テント内で快適にすごすコツをいくつか紹介する。小屋が近くになく水がもらえない場合もあるので、水作りの手順も覚えておこう。
もうひとつ気をつけたいポイントを伝えておく。生地が薄いテントを破かないために、テントを張る場所に到着したらすぐにクランポンを外す癖をつけておくといい。見失わないよう、アックスといっしょに一カ所にまとめて離れた場所に置いておこう。
【1】小屋で受付をする
テントを設営する前にテント場を管理している山小屋で受付を行なう。クランポンを装着した状態で中に入ると床などが傷ついてしまうので、必ず入口の外で外すこと。ほぼすべての山小屋に共通するルールだ。
【2】整地する
テントは斜面の一段下など、風が通らない場所に張るのがおすすめ。設営場所を決めたら雪を掘って地面を平らにする。これを整地という。掘り出す雪はブロック状に切り出して、周囲に積み上げて風除けを作る。
【3】テントを張る
風で飛ばされないように、中身を出した収納袋はウエアのポケットなどに入れる癖をつけよう。ペグが掘り出せない状況を考慮して竹ペグがあると便利。トレッキングポールやアイスアックスなども使ってペグダウンする。
【4】完成!
今回は写真の左側から右方向へ風が吹いていたので、このようにブロックを積んだ。もちろん入口の前と風下にブロックは必要ない。地面を平らにしてしっかり風除けを作るのが雪山のテント泊で快適に眠るコツだ。
快適にすごすコツ
テントマットを敷く
片面が銀色に輝くシート状のマットがアウトドア用品店で市販されている。これがテントマットと呼ばれるもので、スリーピングマットのさらに下に敷いてあげると足元が冷たくならない。写真のように冷気を遮断する銀色の表面を下に向けて使用する。
荷物を整理する
テントの中が散らからないように大きな袋を用意して荷物をまとめておく。大きな袋は防水性があるドライサックなどがおすすめで、テントの中に発生した結露から守ることができるし、パッキングするときもこれに荷物を入れると雪で濡らす心配がない。
水の作り方
①ビニールや土のう袋などに雪を集める。量は多いくらいがちょうどいい。木屑などが入っていない、できるだけきれいな雪を集めよう。
②集めた雪をクッカーに入れて、火にかけて水を作る。お湯か水を注ぐと溶けるスピードが早まる。必要な量ができるまで作業を続ける。
③作った水を水筒に入れるとき、ゴミを濾す茶こしや、こぼさないように漏斗があると便利。いずれも100円ショップで購入可能。
雪をテント内に入れない
雪を落とすためのブラシは大きいほうが使いやすい。登山靴はソールに詰まった雪までかき出す。濡れた靴を入れるためのビニール袋や大きめのスタッフサックもあるといい。それでも内側が濡れてしまったときに備えて、吸水性に優れるセームタオルなども用意する。
ギアは外に出す
雪山装備にはクランポンやアックスなど鋭利なギアが多い。クランポンの爪などでテントを傷つけないように、外したギアは外に出しておく。降雪で埋もれてしまっても見つけやすい場所に置くこと。じゃまにならなければケースに入れてテント内に入れてもいい。
撤収
テントを片付けたら、テント場を管理する山小屋の指示に従って積み上げたブロックを処理する。今回の取材でお世話になった西穂山荘のテント場では、あとから来る人が穴に落ちないようにブロックを崩すのがルール。最後に忘れ物がないことも確認しよう。
※この記事はPEAKS[2021年5月号 No.138]]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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