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ルートコンプリートを目指している矢先。とうとう笠置山も雪化粧|筆とまなざし#308

登りに行くチャンスを伺いながら。さまざまな楽しみを与えてくれる山を描く。

とうとう岐阜の里山にも雪が降りました。雪山を心待ちにしていた人には「ようやく」でしょうが、ぼくにとっては「とうとう降ってしまった」。それは、笠置山でトライを始めたルートのムーブをようやく解決できたからです。このルート、これまでもときどき触っていたのですが出だしが全くできず、そのまま保留状態になっていました。2週間前になんの気なしに触ってみたとき、それまでとは全く違う方法を試すとスタート部分がこなせたのです。密かに笠置山ルートのコンプリートを目指していて、自分のプロジェクト以外は残すところこのルートのみ。俄然モチベーションが湧いてきたのです。しかしベストシーズンはとうにすぎ去り、笠置山にも雪が降りました。冬型になると曇りがちの天気が続き、山は芯から冷える寒さと湿気に覆われます。それでも登りたい気持ちが勝り、先週は極寒のなかでなんとか全てのムーブを組み立てることができました。ようやく完登へのスタート地点に立てた。そう思った矢先に里にも雪が降ってしまったのです。

家の近くから眺める笠置山は真っ白に雪化粧し、上部には灰色の雪雲が垂れ込めていました。ときおりカーテンのような白い帯が山容を隠し、再び雪が降っていることがわかります。例年11月下旬には雪が降ることもある笠置山。それに比べれば今年は暖かいほうで、きっとまだ根雪にはならずに溶けてくれるはず。登りに行くチャンスを伺いながら年末年始をすごそうと思います。

標高わずか1,128mの笠置山ですが、雪を纏うと気高くそびえる高峰に見えるから不思議です。雲間から差し込む光が淡い影を作り、森に覆われた山肌を豊かに映し出します。そういえば、これまでほとんど笠置山を描いたことはありませんでした。それは単純に描きたいと思わなかったからなのですが、今日は描きたいという気持ちが湧き上がってきました。登りに行けても行けなくても、山はさまざまな楽しみを与えてくれます。

アトリエ小屋もストーブがないといられないほど寒くなってきました。引き出しのアカネズミは今日も留守でした。冬支度に勤しんでいるのでしょうか。けれどもいつも巣がきれいに作り直されているのをみると、きっとときどき帰ってきているのだと思います。ネズミはここで年越しをするのでしょうか。師走は忙しなくすぎてゆきます。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

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