【後編】最新テントの細部にせまる!各ブランドから聞いたこだわりのポイントとは?
PEAKS 編集部
- 2023年02月25日
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山岳テントには、快適な室内空間と優れた耐候性を保ちながら、軽量化を果たしたいという相反する要望が集約されている。こうした難題に応えるために、つね日頃からデザイナーたちは素材や構造などに工夫を凝らし、製品開発を進めている。そこで2021年におけるラインナップの事情を、テントメーカー各社の開発者や広報担当者に聞いた。
編集◉PEAKS 文◉村石太郎 写真◉後藤武久
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美しい佇まいのテントになるように心がけられた、縦・横・高さの比率の調和
ジェダイ DCF-イーベントドーム
¥126,000 / 最小重量:870g(メッシュドアパネルなし) / 収容人数:2 人
シングルウォールテントを設計するうえで、優れた強度と結露対策をいかに確保するかということが最大の命題でした。その回答が、究極の繊維ダイニーマと突出した透湿性を誇るイーベントをラミネートした、現時点で最高レベルと考える防水透湿素材DCF-イーベントです。また、立体物において幾何学的な裏付けをしながら創りだした造形については、その佇まいと美しさが強度や機能性も兼ね備えることをエジプトのピラミッドから影響を受けています。その結果、このテントの設計にあたっては縦と横、高さの比率が美しく調和するテントになるように心がけました。(ローカスギア/吉田)
▲テント本体四隅のポールエンド素材には、非常に耐久性が高いダイニーマとナイロンをラミネートしたDCF素材を採用する。これにより摩耗しやすい部分を保護できるよう配慮した
▲フロント出入り口上部にはベンチレーターが備わり、脱着可能な支柱をもつ
レインフライが別売のため、シチュエーションに応じて色を選択することが可能
モンベル/ステラリッジ テント2(本体+レインフライ)
¥32,120 / 最小重量:1,230g / 収容人数:2 人
自社テントのなかで本格的な山岳用テントという位置付けのモデルです。十分な強度を保ちながら軽量コンパクトを目指した生地や部材を使用し、細部にいたるまでシンプルで優れた機能性を追求しました。構造は、最適解を考え抜いた末に、オーソドックスなドームテントに帰結。レインフライには独自に開発したナイロン610という新しいポリマーで紡糸したバリスティックナイロンを使用しています。これは、従来のナイロンよりも保水しにくく、耐候性と堅牢性が優れた素材で、降雨時などに生地が垂れ下がってしまうのを軽減してくれます。また、インナーテントとのクリアランスを確保しながら耐久性も向上しています。(モンベル/安田)
▲不意に閉じないよう芯材を入れたベンチレーターは、インナー側も結露による通気性の低下が起こらないよう絞りきれない仕様
▲レインフライはナイロン610というポリマーで紡糸したバリスティックナイロンを採用する
テントにいる時間が長い日でも快適に中ですごすことができる
パーゴワークス/ニンジャテント
¥49,500 / 最小重量:1,160g / 収容人数:2 人
居住性にこだわった軽量ソロテントです。前室を広く使いやすい空間にするために、長辺側に出入口を設けて前室に向かって広がる台形型のフロアを採用しました。主素材は経年劣化を防ぐため、耐水性の高いナイロンにシリコンコーティングを施しています。シームテープをなくすことで軽量化も図りましたが、防水性を高めたいユーザーは付属の縫い目止めを使ってもらうようにしています。さらに、前面側のレインフライには画期的な排水機構を搭載。雨天時にガイラインをクッカーなどに結んでテンションをかければ、雨水がフライに貯まらない構造にしました。小雨程度ならフライを上げた状態でも快適にすごすことができます。(パーゴワークス/齋藤)
▲インナーテントのジッパーから手を出せば、テント内からレインフライを巻き上げて換気を促すことが可能
▲魚座型のポール構造は、横から見ると前室側(左)が高くなるように設計されている。これにより前室向きに座った際、十分なヘッドクリアランスが生まれている
いままでの既成概念を排して、それぞれタイプ別の最軽量化を目指した
ヘリテイジ/ クロスオーバードーム2G
¥48,400 / 最小重量:630g / 収容人数:2 人
▲軽く、素早い設営が可能なテントスリーブ
▲ふたつのベンチレーターは効率よく換気できる位置に配置。後面下側は絞り布の半分がメッシュで、強制換気を図る構造だ
ヘリテイジ/ ハイレヴォ2
¥61,380 最小重量:1,100g 収容人数:2 人
▲中芯にダイニーマ、外皮にリフレクターを織り込んだガイラインは、軽く強度に優れた特注品
▲強度とデザイン性を考慮しながら、ポールスリーブの肉抜きを図った
さまざまな山域で手軽に使え、簡素に就寝することを目的としたシングルウォールシェルターが「クロスオーバードーム2G」。本体は10デニールナイロンを使った極薄素材に特殊な強力糸を織り込み、軽量化と高強度を実現しています。この素材に特殊なポリウレタンコーティングを施すことで防水性と透湿性、通気性をもたせました。
「ハイレヴォ2」は強度を保ちつつ軽量化のために生地のデニール数にこだわったダブルウォールテントです。ポールはユナン社製でもっとも細い7.5㎜径を採用していますが「検張で1,000張以上張っても折れることなく、工場責任者を驚かした」という逸話があり、これにより耐風性を維持しました。(ヘリテイジ/野中)
クリップ式とスリーブ式両方の利点を備え、重量対比強度が格段に向上
スリングフィン/クロスボウ2
¥104,500 / 最小重量:1,900g / 収容人数:2 人
創業者であり、チーフデザイナーを務めるマーティン・ゼミティスは、’80年代初頭のザ・ノース・フェイスなどでデザインを学び、マウンテンハードウェア創成期のテントをすべて設計した伝説のデザイナー。高名なフラー博士が提唱したテンセグリティ概念を応用して、最小の重量で最強のテントを生み出しています。今季からフロア素材には疎水性があるPEコ ーティングに変更し、湿気に強いためカビの発生を押さえ、加水分解の進行を防ぐように配慮しました。(ヴァーテックス/鈴木)
▲テントポールをスリーブに通してフレームを先に組み立て、そのあとでインナーテントをクリップ留めして設営する「ウェブトラスト」構造を採用。これはクリップ式の軽さとスリーブ式の強度の高さの両方の利点を備え、重量対比強度を格段に向上する同社自慢の独自技術だ
軽さばかりを求めず信頼性と耐久性を重視した最新作
ライペン/ドマドーム1プラス
¥56,100 / 最小重量:1,680g / 収容人数:1 人
真面目に「おもしろいものができないか……」と考えて設計しました。ソロテントとして使いやすく、自立する前室と室内を仕切る面、ボトムフロアの曲面にすごくこだわっています。何度も作り直したのですが、でき上がったら想 像以上に広くて設計者自身もビックリしたほど。また、うちのテントに共通した特徴ですが、十分な耐久性を備えたフロア素材を使用するよう心掛けています。テントは一度買えば最低5~6年は使用する登山装備ですから、長年使い続けられることも大切にしているのです。(アライテント/宮沢)
▲ペグなしでもポールのみで前室が自立する。フロアは耐久性と広さを確保したユニークな形状
▲写真のように前室の一部はグラウンドシートが敷かれており、濡れたレインウエアなどのなるべく汚したくない装備を置いておくスペースとして活用できるようになっている
すべてにおいて妥協のないオンリーワンな超高性能アルパインモデル
サマヤ/サマヤ2.0
¥187,000 / 最小重量:1,350g / 収容人数:1 〜2 人 / お問い合わせ先:スタティックブルーム
アルパインエリアで求められる耐久性と耐候性を維持しながら、軽さや快適さも妥協しない超高性能シングルウォールテントに仕上げました。本体には通気性のある防水透湿素材を採用し、結露の発生を軽減させました。フロアは超軽量で、防水性と耐久性に優れたDCF(ダイニーマ・コンポジット・ファブリック)を用いて、耐水圧20,000㎜と驚異的な値を達成しています。これにより豪雨をはじめ、激変する山岳環境に十分に対応できる機能性をもたせました。 また、長辺を220㎝に設定しているので室内が広く、側面や上部にメッシュスクリーンを設置して、 日本の夏山縦走などでもとても使いやすくなっています。(スタティックブルーム/田中)
▲天井部のカバー下にベンチレーターを設けることで余分な熱気を効率的に排出する
▲出入り口の逆側にはアジアモデルにのみメッシュスクリーンが採用される。また、サブポールを使って室内を広くして、出入り口にも庇を設けた
軽さはもちろん、快適性も追求した個性の異なる2タイプのテントをラインナップ
プロモンテ/ VB-22Z
¥63,800 / 最小重量:1,220g / 収容人数:2人
▲DAC社の超軽量NFLポールを採用し、強度と軽さを両立。センターハブを採用することで剛性も向上させた
▲四隅のスリーブに差し込むだけでポールが自立し、簡単設営と剛性向上を実現する
プロモンテ/ VS-22
¥45,100 / 最小重量:1,660g / 収容人数:2人
▲どの方向からの風でも外れにくいスクリューフックは、固定・解除も簡単
▲上部と下部で異なる太さのテントポールを使用することで上部を曲がりにくくし、良好なヘッドクリアランスを確保した
快適性を追求しつつ、軽さにもこだわったシングルウォールテン トが「VB-22Z」です。本体には防水性と透湿性に加え、通気性にも優れた素材を使用することで、結露を最低限に抑えることに成功しました。この3層構造素材の内側には、7デニールの超軽量トリコットをラミネートしており、室内の湿気もコントロールしています。
一方の「VS-22」は、耐久性重視の山岳テントです。本体とレインフライにはナイロンではなくポリエステルを採用することで、生地が水分を吸収するのを抑える設計にしました。速乾性にも優れ、濡れても生地が伸びにくいという特徴も備え、レインフライと本体が接しにくいため雨天時も快適で す。(HCS /館野)
※この記事はPEAKS[2021年6月号 No.139]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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