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【前編】挑戦前に学んでおきたい!岩稜歩き・クサリ場通過の注意点

梅雨が明けて、いよいよ夏山シーズン本番。今年こそアルプス、あこがれの岩稜帯へと夢を膨らませている読者も多いことでしょう。しかしそこは岩稜帯。一般登山道にはないキケンも多く潜んでいる。安全に岩稜帯を通過するための基本技術やマナーを解説します。

編集◉PEAKS編集部
文◉井上大助
写真◉黒田 誠

まずは装備と服装を確認

岩稜登山においては、それまでの一般的な登山の装備や服装に加えて、ヘルメットやレザーグローブ、岩稜歩きに適した登山靴などを揃える必要があります。専門店でそれらを適切に選び、事前にしっかりとフィッティングしておきましょう。

服装

長袖・長ズボンが基本。パンツは伸縮性の高い素材のものを選ぶ。クライミングパンツは立体裁断になっており非常に動きやすいが、耐久性を優先して速乾性が低い生地を使っているものもあるので選ぶ際にはディテールをよくチェックすること。

下の写真の人のようにサコッシュやカメラポーチが体の前にぶら下がっているのは動きのじゃまになり、岩角に引っかかる場合があるので、バックパックにしまうか、ブラつかないように固定する工夫をし、チェストベルトもしっかり留め、荷物のブレを抑えよう。

ハーネス+セルフビレイ用スリングはあったほうがベターだが、歩行時にひっかからないように掛け方には注意したい。もちろん使いこなさなければ意味がないので使うなら事前練習は必須。

レザーグローブは必須

クサリ場ではレザーグローブを着用したい。クライミング用のビレイグローブは、しなやかなレザー素材を使っているものが多く、にぎりの部分が補強されているので耐久性が高い。甲の部分にはジャージ素材を用いており通気性もいい。カラビナホールが備えられ、ハーネスなどにかけておけるのも便利。

メーカーによって指の太さなどサイズ感がまったく違うので、必ずお店で試着をしてサイズが合うものを選ぼう。布製の手袋は滑りやすく、たとえ滑り止めのついているものでも、クサリに挟まれることもあるのでおすすめできない。

ヘルメット着用時の注意点

最近では岩稜帯でのヘルメット着用率はかなり上がってきたが、どう見ても「買ってきて、そのままの状態で被っている」という人が多い。

ヘルメットは頭周とアゴ紐の調整だけでなく、耳の前後のⅤ字部分の調整もできるものが多い。この調整が不十分で、オデコ全開にうしろにズレてしまっている人や、逆に前側にズレて帽体が視界を遮ってしまっている人もいる。調整に自信のない人は購入時にお店で合わせてもらうのも手だろう。前後左右に頭を振って、ズレないように調整できればバッチリ。

ヘルメットを被る必要がないときは、バックパックにブラブラと外付けはせず、バックパック内に収納して歩くのが基本。

キャップを重ねて被るのはNG

当たり前だが、落石は上から落ちてくる。ヘルメットの下にキャップを重ねて被っている人がときどきいるが、これは上方の視界を遮るのでNG。汗が気になる人は薄い手ぬぐいや専用のツバのないヘルメットライナーを被ろう

岩稜帯ではトレッキングポールはしまう

岩稜帯では両手を空けておかないと岩やクサリをしっかりとホールドするのが難しくなる。ストラップを手首にかけて歩くのも良くない。トレッキングポールが岩にひっかかりバランスを崩すことにもなりかねないからだ。岩稜帯が近づいてきたら迷わずトレッキングポールはバックパックにしまうようにしよう。

バックパックに外付けする場合は、コンプレッションバンドをポールのストラップに通して落下防止対策をしっかりとっておきたい。マグカップやスリーピングマットなどの外付けも岩稜帯では避けたい行為だ。

ダイニーマスリングでチェストハーネスはNG!

一部の山岳会などで、細いスリングの簡易なチェストハーネスを作り、そこにPASなどのスリングを接続したものを装備させているところがあるが、これはNG。もしこれで足を滑らせて宙ぶらりんの状態になっても自己脱出は非常に困難であり、衝撃で簡単に肋骨が折れてしまうこともある。最近は軽量なシットハーネスも発売されているので、必要な場合はちゃんとしたギアを使うようにしたい。

岩稜帯通過のための基本動作

岩稜登山はクライミング要素が強くなるので、日頃から意識的にトレーニングをしておくことが大切。もしそれが難しければ、登攀系が得意な山岳ガイドに相談し、最終目標に向けて段階を追って指導してもらうのも近道である。

日ごろからクライミングに親しんでおく

近年はクライミングブームもあってか、各地にクライミングジムや公共のクライミング施設が増えている。岩稜帯登山を目指すのならば、このようなクライミングウォールを利用しない手はない。しっかりとした指導を受ければ上達は早いが、週に1〜2日、自由に登るだけでも、身のこなしや足さばきはずいぶんと変わってくる。施設によっては登山靴やアプローチシューズで練習させてくれるところもあるので、事前に問い合わせてみるといいだろう。

十分な脚力をつけておく

日帰りならばともかく、泊まりでアルプスの岩稜帯を目指すとなると荷物の重さは相当なものになる。とくに昨今はコロナ禍もあり、テント泊を考えている登山者も多いだろう。重たい装備を背負っての岩稜帯歩きはかなりの体力・脚力を要する。負荷をかけての脚力トレーニングや、重たい装備でもブレない体幹の強化が必要だ。いきなり鍛えるのは故障の元なので日ごろから徐々にステップアップして、計画的に鍛えていきたい。

脚力と体幹の強さがあれば、大きな段差の岩稜帯も比較的ラクに歩ける

脚力と体幹が不足していると不安定に

脚力と体幹が十分でなければ、尻もちをつきながら不安定な移動しかできない。これは転倒や滑落の原因にもなる。

岩場の段差はつま先(クライミングゾーン)を使って確実に立つ

岩稜帯の歩行に向く靴はソールつま先部分にクライミングゾーンといわれる半馬蹄型のパターンをもつものが多い。このつま先のポイントで集中荷重することによりグリップ力を高めることができるようになる。岩稜帯歩き、とくにちょっとしたクライミングのような動きになった場合には、このクライミングゾーンを有効に使って登れるようになっておきたい。もちろん、つねにつま先立ちをする必要はなく、状況に応じて使い分けが必要になる。

気が抜けない場面では、つま先でしっかりと足場をホールドしたほうが滑りにくく、さまざまな動きにも対応しやすい
それほど厳しくない場所では、足裏全体でフリクションを効かせて歩く場合もある

急な体勢変化や立ち位置にも注意

岩稜帯では狭い地形に登山道が付けられている場合がほとんど。落ちるとひとたまりもないような断崖上に道があることもある。こういった狭い登山道では、上からの落石や進行方向に気を配りながら歩くのはもちろんのことだが、方向転換のときなどにもバックパックの存在を忘れないようにしたい。バックパックと岩がぶつかり、バランスを崩してしまうことがあるからだ。急な体勢変化はできるだけ控え、立ち位置にも気を付けながら、安全マージンをしっかりととって行動しよう。

基本姿勢は3点支持

よく耳にする「3点支持」。これは手足4点のうち3点でしっかりと支持して、残りの1点を動かして前進することを意味するのだが、闇雲に3点を支持することにこだわっているとスムーズに動けないこともある。対角手足(写真の場合、右手と左足)に重心があり、さらにもうひとつの手か足でしっかりとホールドを支持することで安定した3点支持ができるという場合が多い。このあたりの動き方は山で実践する前にクライミングジムなどで体得しておきたいところだ。

岩にしがみつかず、足元をしっかり見る

岩稜帯では怖さから、岩にしがみつくような体勢になりがちだが、それでは足元が見えづらく、スムーズな足さばきができない。上半身を壁から少し離すことで視界が広くなり、つぎの一歩が見極めやすくなる。また、上半身ではなく足先にしっかり体重を乗せることで接地面圧が高まり、滑りにくく、安定した歩行が可能となる。クサリ場においても同様で、腕力でクサリに頼りすぎず足にも体重をかけることで、安定した登下降やトラバースができる。腕を伸ばしたほうがラクだ。

落石・浮石には十分注意する

岩稜帯において、もっとも気を付けなくてはいけないのが、落石・浮石だ。落石については、石が堆積しているような場所(落石の巣)はすみやかに通過して、けっして山側を背にして休憩しないなど、できるだけ危険を回避しよう。また、手掛かりとして岩を掴む際には、いきなりフル荷重はせず、徐々に荷重するようにしたい。不安な場合は手で軽く叩いて浮き具合を確認するといい。下に人がいる場合はとくに岩を落とさないように注意したい。

※この記事はPEAKS[2021年8月号 No.141]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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