月下鳴争 |旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #5
高橋広平
- 2023年05月09日
ときは繁殖期。見た目温厚なライチョウたちも、生命を紡ぐためにその生命を熱くたぎらせるときはある。日々繰り広げられる光景は、それを愛する者にとってはいずれも眩しいものである。しかし「撮れなかったことは無かったこと」。見たことはあっても、知ってはいても、写真に収めることができなければ絵空事といっしょである。思い描いた「そのとき」に遭遇したとき、いかにしてその一瞬を捉えたか。今回のエピソードはそんな1枚にまつわる話である。
編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平
「月下鳴争」
アイゼンとピッケルを駆使して氷雪の断崖に取り付く。
そんな登るのも下りるのもひと苦労な場所にいるときにそれははじま
この断崖を下りた100mほど先の別の断崖の縁でオス同士が鳴き
私のなかでも垂涎の構図であるが大きな障害がある。そう、
自分の装備を確認する。アイゼン、ピッケル、アタックザック、
断崖とは言ってもある程度の角度が付いている斜面。
本人のなかではほどよく着弾。すぐに起き上がり、カメラと体に故障がないか確かめつつ先回りしていたザックとピッケルを拾い上げ、いざ決闘の場へ。高山帯で雪上を全力疾走するというのは非常につらい。
今回の1枚は「月下鳴争」。
鳴き合う男たち、そそり立つ氷雪の断崖、頭上に輝く月を捉えた。先般の「月下に集う」もそうだが、
今週のアザーカット
今回の写真を私なりにイラストにしてみた。詰まるところ、
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PROFILE
PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家
高橋広平
1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。 Instagram : sundays_photo
1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。 Instagram : sundays_photo