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備えあれば憂いなし|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #10

ときは7月下旬。生まれの早い個体ならばおおよそ生後1カ月となるライチョウ。
ちょうど梅雨時に世に解き放たれるヒナたちにとって冷たい雨は、彼らを間引きする非情の滴である。そのためこの生後1カ月というのがライチョウ界隈では肝であり、いかにしてここまで数を減らさずに成長してもらうかを生息域での保護活動では重視している。
そして、この苦難を潜り抜けた逞しい子たちが彼らの未来を紡いでいく。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

「備えあれば憂いなし」

作品となりうる基準の写真を撮るためにはそれなりに準備が必要である。それは技術的なもの、心構え的なもの、現場での即応力などいろいろある。技術的なものは体の一部になるほどに機材を使い込めば良いだけなのでどうとでもなる。それに対し心構えや即応力に関しては日ごろからの想像力(妄想力)がモノを言う。

いままで出会った場所、それぞれの個体、そしてその動き。これらすべてを脳内再生によるシミュレートで繰り返す。私の脳内では四季折々の彼らの色・姿形・仕草や表情、さらには残雪の上を歩く足音や鳴き声が再現可能である。
そして以前にも話したことがあるかもしれないが、私のなかの撮りたい構図というものがいくつもあり、その場面を再現するために山に入る……、そういう流れである。

その年のヒナが生まれておおよそ1カ月。ところは北アルプス某所。
例年このポイントのこの時期にはライチョウの親子と遭遇することが多い。もちろん、必ず現れるわけではないのだが、確率が高いというのは大事なことである。近年やっと立山室堂に足を運ぶことになり、その生息密度に驚愕しているところなのだが、私の従来のホームグラウンド(立山室堂以外の山域)では生息はしているがやたらめったら出会えるわけではないのでそれなりに貴重な個体群である。

彼らを求めて登山道を歩く。とくに現れそうなポイントで全神経を集中し探索する。登山道脇のハイマツや近くの岩場やお花畑、あらゆるシチュエーションでの遭遇を想像する。登山道前方に張った「意識の網」になにかが掛かる。そうこうしていると登山道の真ん中を成長したヒナたちが元気に駆けてくる。道の前後には私と彼らしかいない。即座に腹這いに伏して機材を構える。

今回は、生後1カ月が経ったヒナたちを捉えた一枚。
前回と同様に登山道の真ん中をゆくものであるが、よりローアングルで躍動感を感じる構図のものを撮ることができた。
ここまで成長したヒナたちは、もう多少のことでは負けることはない。雪降る晩秋までにすくすくと大きくなることを祈るばかりである。

今週のアザーカット

ライチョウと同様にこの時期の稜線上で探しているものがある。タカネヒカゲを筆頭とする高山蝶たちだ。
ともに高山で生まれ育つ彼らは、種こそ違えど兄弟のような存在だと思っている。
かのナチュラリスト・田淵行男先生が「この地史の落とし子に、安らかな旅を続けさせねばならぬ」と評している。自然を相手にしているからこそこの言葉の重みがよくわかる、今日このごろである。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


 

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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