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かけひき|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #12

ライチョウという生きものの日々の生活において重要なこととはなにか。いくつかあると思うが、なかでも「脅威となる捕食者にみつからないこと」というのはかなり大事なことだと思われる。ほぼほぼ戦闘能力を有さない彼らが野生で生き続けるために磨き上げてきたそのスキルの一端をこの目でみたときのことをお話ししたいと思う。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

「かけひき」

私のよく訪れるライチョウの生息地では、チョウゲンボウという小型のハヤブサをよく見かける。種類にもよるらしいがハヤブサの中には突撃速度が時速300kmと言われているものも存在し、かなりの遠距離からでも優れた動体視力で動いているものを捕捉しその鉤爪を用いて獲物を狩っていく。ターゲットはイワヒバリなどの小型鳥類を代表としライチョウも含まれる。ライチョウ自身もそれは重々承知している様子で、幾代にも渡り受け継がれてきた防衛本能を発揮して日々の危機を回避している。

この日、とある岩稜帯にて1羽のメスのライチョウと出会う。残念ながら子育てをしている様子はなく、ひっそりとシングルライフを営んでいる様子である。天気は高曇、青空ではないものの視界は開けている。
器用に岩と岩を飛び移りながら、所々から顔を出す草花をゆっくりと食みながら転々とする彼女を観察しながらシャッターを切っていく。出会う個体ごとの細かな挙動差が数多繰り返す逢瀬の快楽を毎度新鮮なものとしてくれる。

例のごとく親和性を発揮し眼前肉薄していたそのとき、それまで悠然としていた彼女の動きに緊張の色が現れる。
岩と岩のあいだに素早く身を沈め、遠く上空をみつめる。ポジションを説明すると私と向かい合っている彼女が、私の肩越しになにかを気にしているという様子だ。つまり「なにか」が私の後ろにあるということだ。
しばしの緊張のときがすぎたところ、覗くファインダーの端に不意になにかが走る。反射的にシャッターを切る。気づけば少し彼女の顔から険しさが抜けた気がする。
その後、ほどなくして共にひとときをすごしてくれた礼を彼女に伝えてその場をあとにした。

今回の一枚は岩のあいだに身を潜め様子を伺うライチョウと、その背後に映り込むふたつの影の写真。あくまでピントは彼女に合わせてあるので黒い点のようなものであるが、明らかに捕食者である猛禽類(しかも2羽)が視界のなかを通りすぎるというものである。幸い彼女は無事であったが、日々危険と隣り合わせであることを気づかされる瞬間であった。はるか遠くから襲い来る捕食者と、それを躱(かわ)すライチョウの警戒能力という野生に生きるものたちの駆け引きをみた

今週のアザーカット

前回と同じく近況報告となるのだが、先日までの夏休み期間中に安曇野の無印良品さんにて写真展とワークショップをさせていただいた。トートバックにライチョウのイラストを描いてオリジナルアイテムを作ろうという子供向けのイベントであったが、連日多くの参加者に恵まれ、よい普及啓発ができた。また企画を立てて開催できればと思っている。アザーフォトはイベント対応していただいた店舗スタッフの方と。

※写真提供:無印良品安曇野穂高店ブログより

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


 

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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