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ビフォー・アフター|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #16

この時期、フィールドではちょうど秋羽から冬羽への換羽の季節を迎える。秋羽は上半分が褪せた褐色でお腹から下は白。白い部分は通年変わらずなのだが、そのボリュームは季節が深まるにつれてフワフワのモッフモフの悩殺兵器へと変貌を遂げる。足元から破壊力を高めつつ、その白羽は上部へと達し、最終的に全人類陥落必至の絶対悩殺羽毛白球体・DAIFUKUが爆誕することになる。(※個人の見解と解釈です)

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

「ビフォー・アフター」

冒頭において軽く暴走させていただいたが、これが私が抱く白羽のライチョウのイメージである。とにかく愛らしい。普段多少なりとも抑えているオタクマインドの蓋がちらほら開いて中身が発露してしまう。まったくもって抗いようがなく困ったものである。

さて、例のごとく稜線を歩きながら彼らを探していると視界のなかに秋羽のライチョウを見つけた。出会ったのはオスで、ハイマツの根元で丸くなっていた。風の強い西側斜面ではあるのだがちょうど枝葉が彼を包むような形になっていて、見方によっては額に収まったポートレートのようである。こういった自然のものを利用したカットというのは大好物であり、すかさずシャッターを切らせていただいた。

余談であるが、秋羽のオスメスの見分け方にはいくつかあり、ひとつは彼らを横から見たときに夏羽がわずかに残っているとメス、もうひとつは顔の部分で、目とクチバシの間に黒い毛(過眼線という)のが浮かんできているのがオスとなる。見分けが難しいときでもこの2点を確認することが出来れば雌雄の識別は可能である。このときの日付は某年10月21日というのをまずはおさえておいていただきたい。

別シーズンの11月10日。年によって生息地の積雪などは差異があるが、ライチョウの換羽時期はおおよそいっしょである。よく周りに雪が積もったら白くなるのかと問われるときもあるのだが、それほど都合よく調整できるものではない。ゆえに積雪の遅いシーズンなどは周りがまだ草地なのになにやらメッチャ白いのが居る、という目立ってしょうがない困った状況も発生する。

このシーズンは例年並みの積雪で、風が吹き付ける場所以外はほどよく根雪がついている。定期観察している山域においてはある程度巡回ルートが決まっていて意識を向ける場所も同様におおよそ決まっている。

……そういえば、前にあそこにいたなぁと目線を送ると、……いるではないか。
まさかの千載一遇の機会を得て、静かに、素早く、刺激をしないように以前シャッターを切った場所へ歩み寄る。機材はいっしょ、立ち位置も同じく、たたずむライチョウもまるでデジャヴを見ているかのようだ。

今回の一枚、いや二枚になるのだが、二枚でひと組の作品「ビフォー・アフター」が生まれた瞬間であった。同じ場所で同じポーズ、別シーズンに別個体(秋羽がオス、冬羽がメス)で撮影することができた。およそ半月ほどでどれだけ換羽が進むのか、その比較ができる学術的にも有意義な作品となった。およそ偶然とも言えなくもないが、夥しい試行回数が生んだ必然の結果だと今では思っている。

今週のアザーカット

きたる12月9日(土)に横浜市金沢動物園にて講演会をすることになりました。横浜でのイベントは以前にカモシカスポーツ横浜店で写真展をした以来となりますが、ご都合つく方はぜひお越しいただければと思います。申し込み開始は本投稿開始の10月23日から。また、緑書房さんから発売中の「雷鳥カレンダー2023」も大変好評のようです。撮り手冥利に尽きます。ひきつづきよろしくお願いいたします。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


 

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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