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ふたり|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #21

年がひとつ進んだ。すでに周知の事実であるが、年明け早々の出来事はたとえ当事者でなくても胸を抉る切ないものであった。家族や親しき者が親睦を深めるために集う時期に起きたことというのがなおさらやるせない。こういう事情もあって新年を素直に祝うという気分にはなれないのだが、それでも賀正に似合う写真はないかとセレクトしてみた。年明けのひととき、少々お付き合いいただければ幸いである。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

「ふたり」

ライチョウの冬の生態は現時点においてもまだ完全には解明されていない。いや、むしろすべてを解き明かすということ自体がおこがましいことなのかもしれない。

私がライチョウのことを調べ始めた当初は学術研究者監修の文献いわく「越冬中のライチョウはオスメス別々の群れを形成し冬を越すもの」と規定されていた。私もそれに倣い、その実物をこの目で見届けようと厳冬期の山中をさまよいながら彼らの姿を追った。生息地に赴き手掛かりになりそうなものを片っ端から自分の力量の許す限り試行して繰り返す。やがてそれが実を結び、次第に彼らを発見することができるようになっていった。

彼らに関する知識であるが、今でこそ2年に一度開催される「ライチョウ会議」という専門家会議に参加して学術研究者や飼育園館から提供される情報を得て学術視点の生態を勉強したりできている。学術的生態はもちろん大事なことである。現在、環境省をはじめとして生息数の回復を目指し各陣営が尽力している。これは学術的な裏付けがなければ実現不可能なことである。

ただ、私は生粋の独学野育ち探究者であり、ライチョウの魅力を追求する表現者である。つまり、彼らへのアプローチが学術研究者とは別軸のものということだ。基本的に学術研究者はロジカルかつ確定した情報でないと表に出さない。正確には出せないというべきか。対して私はというとそういった縛りがなく、自分の目で見て、音で聞き、肌で空間を共有したうえで生のフィールド観察から得た知識をもとに彼らを表現している。ようは「私の感じたまま」表に出せるというわけだ。

前条で挙げた「越冬中のオスメス別群れ説」に関しても2012年の段階でオスメスのペアが身を寄せながら越冬しているのを確認しているため私の胸中では懐疑的である。もちろん大多数の個体がオスないしメスの群れを形成して冬を越しているのかもしれないが、個性と感情をもった生きものである以上、例外があって然るべきである。また、そのほうが魅力的なのだ。

2024年最初の一枚は、陽の出を背にたたずむ番いのライチョウ。
彼らふたりのことは彼らにしかわからない。彼らのことを人間の物差しで測りきることは恐らく無理な話だろう。私たち人間も自分たちのことを知り尽くしている訳ではないのだから。ただその姿を見た私の目には、ふたりがそれぞれを想い合ってその意思で厳冬期においてもいっしょにいるのだと映ったのだ。

……昇る朝陽と番いのライチョウ、新年を飾る1枚としていかがだろうか。

 

今週のアザーカット

先日、新年のあいさつにと自身のSNSに挙げたライチョウの羽の写真です。山岳信仰において神の御使いとして崇められてきた霊鳥の羽として、古くから厄除け・お守りとして珍重されてきたそうです。被災された地域のみなさまの生活に1日も早く平穏が戻りますことを心よりお祈り申し上げます。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


 

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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