ポンチョが2023年気になっていた「A.R.E.」を使ってみました。
PEAKS 編集部
- 2024年02月16日
INDEX
*****************************************
好評発売中「PEAKS 2024年3月号(No.164)」より、誌面記事の一部をご紹介します!
*****************************************
毎月のようにさまざまなギアをレビューしていても、使ったことのないモノは案外多くある。
レビューまもなくリニューアルした、取り上げなかったけれどもなんだかよさそう……。
そんな、2023年にちょっと気になっていたアレを集めてレビューしてみた!
編集◉PEAKS編集部
文◉ポンチョ
写真◉長谷川拓司
新作から定番まで使ってみたかったギア6選
道具好きなのに、気になっていながら使ったことがなかったモノ、じつは多い。2023年秋にリニューアルされた、ファイントラック「ポリゴンUL」ジャケットとパンツがそれ。手に持つとペラペラ。保温着として成立するのか?と疑問を抱かせるウエアはほかにない。今回はレビューに加えてメーカーへのインタビューも敢行。
モンベルの「アルパインサーモボトル」もリニューアル。春から公式HPに掲載され、昨年11月発売号のサーモボトルレビューで新作を紹介したかったのだが叶わず、今回遂に使うことができた。
2022年5月発売号でレビューしたコーヒー道具。より軽量コンパクトなモノがあり選から漏れたリバーズ「マイクロコーヒードリッパー2」と「ウルトラライトハイカーマグS」を組み合わせた美しさはずっと気になっていた。
さらに変わり種も。アウトドアショップ「サンデーマウンテン」のオリジナルブランド、「ファンデイプロジェクト/アウトドア用ボディシート」は大判ウェットシート。従来の体拭きシートでは物足りなさを感じていた人は必見!シート状になる、エスビット「エマージェンシーストーブ」はその実用性が気になっていたし、2015年発売のシートゥサミット「X‒ポット ケトル」は、昨年そのよさにようやく気が付いたので、あらためて紹介したい。悩みに悩んだ6選、どれもが個性的だ!
【ニューギア】まずはニッチなギアから使ってみた!
【ニッチなギアNo.1】ファンデイプロジェクト/アウトドア用ボディシート
大きいだけでなく、森の香りがキモチいい!
汗の不快さを拭い去り、気分や体調を整えてくれるウェットシート。問題は、小さくて乾きやすく、体を拭くには何枚も必要なこと……。しかしこのボディシートは、十分な大きさで厚みがあり、冬の日向に1時間放置しても潤いを持続。全身を拭いてもクシャクシャになることもナシ!また福井産の和精油が配合され、グレープフルーツの香りを加えて爽やかで花粉症の心配のないスギ、リラックス効果のあるクロモジの2種類をラインナップ。どちらも森林浴のような心地よさで、リフレッシュできた。
- ¥209(スギ、クロモジそれぞれ1 点)
- 重量:49g(実測値)
- サイズ:サイズ:30×50cm(パッケージ13×23.5cm)
- (問)カンパネラ
【ニッチなギアNo.2】エスビット/エマージェンシーストーブ
非常時に役立つが、簡易ゆえに注意は必要!
ガスストーブの故障など、緊急時に装備しておきたい重量100g以下の簡易固形燃料ストーブのセット。本体は携帯時に薄いシート状になり、エマージェンシーキットに収納しやすいサイズ。使用時はゴトク部分を折り曲げて立ち上げる。カタログでは約15回までの使用が可能とあるが、同じ方向のみに曲げればもう少し使えそうだ。固形燃料3個が付属し、1個12分燃焼。テスト時は気温が低かったともあり、1個では500㎖の水が70℃にしかならなかったが、カップ麺やフリーズドライご飯を戻すには十分だ。
- ¥1,320
- 重量:32g /固形燃料3 個 43g
- サイズ:115×88×0.5mm /約60×80×23mm(組立時)
- (問)飯塚カンパニー
【ニッチなギアNo.3】シートゥサミット/ X- ポット ケトル
じつはスタッキングも可能で注ぎやすさも秀逸
2015年発売の定番で、ずっと気になっていた底面アルミ、側面は蛇腹で折り畳める耐熱シリコン製ポット。収納時に高さ3.5㎝と薄くなり、バックパックのポケットや隙間に収納できるのは、想像以上に便利。ストーブに掛けた際にシリコン部に火が当たらないような火力調節、風防が必要に感じたが、集中炎タイプのストーブであれば問題ない。注ぎ口は秀逸で液だれなく、細い湯を注げる。空焚き不可のため炒めものはできないが、煮炊きは可能。側面シリコン部のスプーンの当たりがよく中身をすくいやすい。
- ¥6,270
- 重量:186g
- サイズ:Φ 15.3×3cm(収納時)/Φ 15.3×8.5cm(ハンドル除く、使用時)
- (問)ロストアロー
【アクティブインサレーション】リニューアルされた行動保温着は、薄く、軽く、ちょうどいい暖かさ!
【気になったNo.1】ファイントラック/ポリゴンUL ジャケット、ポリゴンUL パンツ
デザインの制約を解消。その結果、軽量化を実現
2013年に、ファイントラック独自のシート状立体保温素材ファインポリゴンを開発。翌年ポリゴン2ULという行動保温着を発売。以来、薄く、軽く、適度な保温力、水に濡れても落ちない暖かさを装備したそのウエアは、何度かのマイナーチェンジによって機能性をアップしてきた。
今回、2023年秋のリニューアルでは、「ポリゴンUL」と商品名を変更。ジャケット、パンツともに200g以下とさらなる軽量化を果たし、気温の低い季節はもちろん、オールシーズン携帯したくなる保温着として進化を遂げた。
しかしその軽量化は、それまで縫製に高度な技術が必要で、デザインに制約があったことを解消する上での副産物だったと、商品開発課の夏見智子さんはいう。「前モデルまでは縫製段階で保温材のファインポリゴンを表地と裏地に挟みこんで縫い合わせていました。それを新しいポリゴンULでは、保温材をあらかじめ挟みこんだキルト状の生地にしてから裁断、縫製を行なっています。それにより身体にフィットし、動きに追従するカッティングが可能になりました。そして結果的に余分な生地が削ぎ落とされ、軽量化につながったんです」。
そのフィット感はウインドシェル的で、薄く、軽やか。ゆったりと包み込まれる感覚。「前モデルと変わらないファインポリゴンの封入量にすることに苦心した」そうで、保温力は同等。またパンツは、股にストレッチ素材のマチを採用。細みで足さばきがとてもよく、トレッキングパンツの上に着用しても、ゴワつかない。
ジャケット、パンツともに保温着でありながらベンチレーションを備え、通気性の良さとともに、幅広い温度域でちょうどいい暖かさを提供してくれるだろう!
保温着なのにモコモコしないウインドシェルのような薄さ!
保温着でありながら、陽光にかざすと光を透過するほどに薄く、保温材も透けて見える。果たして、これで保温性があるのか!?と疑問に感じるが、適度な暖かさがあった。
Check1:ジャケットはほどよいゆったりサイズがいい
ウエアの着用感は体型によって大きく変わると思う。筆者は身長174㎝、体重68㎏の中肉中背で、今回はLサイズを着用。このジャケットは絶妙なフィット感で、ゆったりめだけれどもモタつくことがなく、動きやすい。インナーはTシャツ1枚でも、厚手アンダーウエアを着ても、モコモコしない。ストレスフリーだ!
Check2:動きをじゃましない袖は腕をスムーズに使える
このジャケットの袖は、二の腕付近はゆったりめながら、モタつきがなく、ツッパりもない。同社のほかのトップスにも採用しているトルネードスリーブという腕の曲げ伸ばししやすいパターンによるものだそう。袖口にはストレッチ素材の撥水ニットを用い、袖まくりもしやすい。これは本当によくできていると感心する。
Check3:ハンドポケットはやっぱり便利。ポタッブルで携行性よし!
前モデルのジャケットは胸ポケットだったが、新モデルはオープンのハンドポケットを装備。バックパックのウエストベルトを締めても手先をポケットに入れられる位置にある。また前モデルは別袋に収納仕様だったが、新モデルはジャケットは内ポケット、パンツはバックポケットに裏返して収納できるポケッタブル仕様に変更。
Check4:股下にストレッチ素材採用。細身で足さばきのいいパンツ
インサレーションパンツは、その暖かさと引き換えに、少しの動きづらさがあって当たり前だと感じていた。しかしこのパンツは違う。ジャケットとは異なり少し細身なシルエットと股下ストレッチ素材が機能して、走っても軽快。薄く、軽い保温材のよさを存分に発揮。ヒザのマチ、パターンも効果的。よくつくられている。
Check5:前立てがジッパー開閉可能。行動中の着用がラクだが……
ウエストベルトは伸縮素材でドローコードが配されフィット感を自在に調節可能。前立ても備わり、トイレや着替えをラクに行なえる。しかし行動中に寒さを感じた際に防寒着としてトレッキングパンツの上に履くとき、裾にジッパーがないので、シューズを脱がなくてはいけない……。それが唯一不満に思えた。
Check6:保温着なのにベンチレーション装備
ポリゴンULは汗処理する裏地と適度に通気性を備える表地を装備している。しかし行動中は季節や気温によって、それでもムレが溜まる。そこで同社のミッドレイヤーはすべてベンチレーションを装備、ポリゴンULも同仕様となっている。暑がりな筆者はこの換気機能により、より快適なほどよい暖かさを実感できた。
- ¥24,200(ジャケット)/ ¥21,450(パンツ)
- 重量:185g / 175g サイズ:S ~ XL
- (問)ファイントラック
【サーモボトル】シンプルさを進化させた定番登山用サーモボトル
【気になったNo.2】モンベル/アルパインサーモボトル 0.5L
1gでも軽い道具を求めUL仕様にリニューアル
2016年に発売されたモンベルのアルパインサーモボトルが、2023年冬にリニューアル。サーモスの「山専ボトル」とともに、登山で機能するサーモボトルの2大巨頭として多くの愛用者がいるボトルはどう変わったのか?
今回のリニューアルのポイントは、誤って落下させた際の衝撃緩和とグリップ性を高めるシリコンカバーの省略だ。それにより、0.5ℓモデルで旧モデルの重量265gが240gに、サイズΦ7×24cmがΦ6.8×22・5cmへと軽量コンパクト化。カップ上部はシリコンカバーの代わりに、開閉時に指を掛けやすい凹みを装備。サーモスの山専ボトルとともに、シリコンカバーは、耐衝撃性という過酷な登山シーンでも簡単に壊れないアウトドア道具としての象徴的パーツだった。しかしアルパインサーモボトルはそれを省略。よりシンプルなUL道具化を目指した。ただし必要性を感じている人は、別売りカバーを装着可能だ。
高所、低温下での保温性の高さは変わらず、高機能性を維持。正直に言えば、もう少し大きな進化を期待していたが、細かな部分であってもムダを省くことで軽量化は実現する。その取捨選択が大きな差を生む。
Check1:シリコンカバーは上下とも別売に
コーティングがされていない本体はグローブによっては滑りやすいが、落としそうになる可能性は低い。しかしバックパックのサイドポケットによっては、シリコンカバーがあったほうが脱落の可能性は低い。心配な人は別売りカバーを装着しておくといい。
Check2:頼れる保温力は変わらず!
保温力は室温20℃で、6時間後78℃以上に変更はない。今回は朝に沸騰させた湯を入れて野外でテスト。最高気温13℃の6時間後でも78℃以上をキープ。そのお湯でカップ麺を食べたが、十分に温かく、美味しく食した。冬の登山ですぐに温まれるのはありがたい。
Check3:中栓は半回転で開閉できる
外筒は0.28mm、内筒は0.1mmという極薄のステンレスで挟む真空層を1.2㎜の厚みに設計。さらに半回転で、グローブをしたままでも開閉しやすい中栓には、発砲ポリプロピレンを封入。口部から逃げる熱を断熱。注ぎ口は湯がややヨレるが、問題ないレベル。
Check4:フタは直飲みタイプに変更可
保温・保冷力の高さを誇る、コップタイプのアルパインサーモボトル。しかしコップを外して、中栓を回して飲み物を注ぐのが手間と感じるなら、別売りの「アルパインサーモボトル 交換用アクティブリッド M(¥880)」をセット可能。冷たい飲み物の補給に役立つ。
- ¥4,400
- 重量:240g
- サイズ:Φ 6.8 x 22.5cm
- (問)モンベル
【ドリップセット】ミニマムなドリップセットそのよさは機能美にあった!
【気になったNo.3】リバーズ/マイクロコーヒードリッパ ー2、ウルトラライト ハイカーマグ S
美味しいコーヒーが飲める世界最小クラスのセット
ステンレスメッシュをフィルターに採用したミニマムなコーヒードリッパー。初代は2014年に発売、2021年に内径8㎝までの広口のマグでも使えるようリニューアル。山ではドリップ後のコーヒーかすを取り除くのに多くの水が必要になるペーパーレスタイプは敬遠されがちだが、金属フィルターならクッカー同様に水ですすげばサッと取れるのでは?と気になっていたのだ。
実際に使ってみると、想像以上にサッとコーヒーかすが取れ、2杯目以降もキレイな状態でドリップが可能だった。
際立ったのはカップとのフィット感の高さ。ペーパードリップだと軽さを重視したドリッパーは風に飛ばされがちだが、コレは問題なし。ULハイカーマグSはもちろん、内径7〜8㎝のカップなら安定感があり、ペーパーレスの手軽さ以上のよさを実感。山コーヒーに最適のモデルといえる。
Check1:風に負けないフィット感!
シリコン製のホルダー部は、内径7~8cmのカップにジャストフィット。少し径が大きくても、カップの口に段差があったり、すぼまった形状なら脚部分が掛かりフィットする。シリコンは滑り止め効果もあるので、風に吹かれても簡単には飛んでいかないのも利点だ。
Check2:ドリップ上手になるサイズ
容量180㎖のULハイカーマグSは、コーヒー1杯分サイズ。またドリッパーは高さがないので、1杯分を2~3回に分けて湯を注ぐことになる。大きなドリッパーと違い一気に湯を注げないことで、だれでも美味しいコーヒーになるドリップをできるのがいい!
Check3:スタッキングも考えられた設計
デイハイクなどで1回だけのドリップであれば、ULハイカーマグS内に小分け袋に入れたコーヒー豆を入れて、逆さにしたドリッパーでフタをすれば美しいスタッキングが可能。また700㎖縦型クッカーなら、ドリッパー、ストーブ本体、X-カップを収納できた。
Check4:ペーパー不要のステンレスメッシュ
細かい目のステンレスメッシュのフィルターは、中挽き~粗挽き160gの豆で抽出。コーヒーに微粉が入ることもなかった。またフィルター部は円錐状になっているので、その先端からゆっくりとコーヒーが落ちる。ペーパーと違いオイルが残るので味わいも深い。
Check5:大カップにもひと工夫で対応
内径8cm以上のシエラカップなどでドリップしたいときには、ホルダー下部に配されたスリットに箸を通してカップに渡せば使用可能。またこのスリットは、ジャストフィットするカップ使用時に、カップのどこまでコーヒーを抽出できたかを目視できて便利だ。
Check6:コーヒーかすはサッと落とせる
抽出後にドリッパーに残ったコーヒーかすは、ホルダーからフィルター部を外してジッパー付きビニール袋などにコーヒーかすを叩き落とし、残った分は少量の水に通せばほぼ落ちる。さらにウェットティッシュやダスターで拭けばキレイさっぱり!想像以上に手軽だ。
- ¥990(ドリッパー)/¥3,080(マグ)
- 重量:37g / 34g
- サイズ:84× 78×47mm /113×85×56mm(容量180㎖)
- (問)リバーズ
※この記事はPEAKS[2024年3月号 No.164]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
**********
▼PEAKS最新号のご購入はAmazonをチェック
SHARE
PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。