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越冬群一幕|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #25

今年は例年にも増して暖かくかつ、寒暖の波が激しい。それは雪崩の発生確率が増大することを意味し、山中での行動難易度が上がることと同義である。直近でも降っては溶けを繰り返し、雪のミルフィーユという時限爆弾をコツコツと生成している。春に向かって気温が高くなるにつれ起爆の危険は高まるが、山に入るかたはくれぐれも気をつけて行っていただければと思う。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

「越冬群一幕」

3月。越冬中のライチョウたちにも動きが出てくる。生息地域や個体群の習性で差異はあるが、春の縄張り争奪に向けてオスの群れのなかでの小競り合いが活発になってくる。

この日も幾年にも渡り調べ上げたライチョウの越冬地での観察を続けていたのだが、いつもとは違い、諸事情でワイフを伴って入山していた。ワイフは学生時代から山岳部に所属していたガチ系の山女なので、私のかなり特殊な山行にも同行できる。このときは私の宣材写真を撮ってもらうために雪山について来てもらった。ちなみに彼女のカメラは私のお下がりのペンタックス機材なので極寒の山中でも問題なく使用が可能である。

余談であるが、私が普段愛用している撮影機材はリコー「PENTAX」ブランドの一眼レフシリーズである。正直、ミラーレス機が市場を占めている現在では非常にニッチなものを使っているような感じになっているのだが、私の要求に素直に応えてくれるこの機材を非常に愛着を持って使わせていただいている。ただ、他メーカーの「頭の良い機材」と比べると機材側が気を利かせていろいろやってくれるようなものではないので、便利な物に慣れている人にはまったくお勧めできない尖った機材である。……だから良いのだが。

さて、コツコツとラッセルを進めて彼らがいるであろうポイントへ向かう。暖かい日も増えるこのころは、歩く場所や方向も気を遣う。それこそ単独行ならば多少の無理はしてしまうのだが、同伴者がいるならば話は別だ。斜面の流れを読み、限りなく雪崩の可能性のないルートを縫って歩く。

私のなかにマッピングされているフィールドには複数の遭遇ポイントがあり、そのポイントを順になぞるように調査するのが基本である。幸いこの日は雪質が安定しており、それほど埋まることもなく移動ができた。どちらかというと表面が所々クラストしている状態で良く締まっている。

そんなこんなで第一村人ならぬ第一ライチョウさんが斜面に埋まっているのを捕足した。

刺激しない距離で待機し様子を見る。その後、クラストした斜面で姿勢を安定させるためにリーシュで体に繋いであるピッケルをアンカーとして地面に深々と刺す。これで万が一足爪のロックが剥がれても斜面を滑り落ちていくことはない。さながらスナイパーのようにカメラを構える。ちなみに私のいる地点より少し上の平らな場所からワイフが様子を伺っている状態だ。

しばらくしていると、近くから他の気配を感じる。再度注意深くあたりを見渡すと、周辺に潜んでいた他のライチョウが採食を始めていた。おそらく現れた私たちの様子を見てとくに害がないとみなし、表にでてきたのだろう。

あれよあれよというまに、総勢5羽の群れに膨れ上がった。ちなみにこのポイントで日中に5羽という規模は大漁である。シャッターを切りながら観察しているとやはり日陰が好きなのか、多めに雪から顔を出しているダケカンバの根本に集まり、いったん落ち着いた。

今回の一枚はダケカンバの木陰にたたずむオスの越冬群の図。この写真自体は「たたずんでいる」状態なのだが、小一時間のあいだに激しい追いかけっこなどの小競り合いを幾度も繰り広げていた。ちなみに同じ機材で同じ画角の状態で動画も撮影しているのだが、そちらの方で激しい(見ている側は大興奮の)小競り合いはしっかり記録している。

 

今週のアザーカット

写真展などでたまに使っている写真。実はこの山行の際に撮影した一枚である。ライチョウの朝の集会を撮影したあと、燃え尽きて雪原でへたり込んでいる私をワイフが撮ったものである。夜中の山行ののち、マイナス20℃のなかの全力疾走や息を止めてのシャッター切りなど、ことごとく身体を酷使し終えた完全に「抜けた」状態。自分で撮ったものではないのだが、この写真を見ると当時の記憶が鮮明に蘇り感慨深い。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


 

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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