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クライミングのアプローチや家のまわりで気軽に楽しめるきのこ採り|筆とまなざし#391

本当のきのこの毒性とは?

きのこの季節といえば秋と思われがちだけれど、実際には晩夏からたくさんのきのこが顔を出す。きのこには決して詳しくはない。それでも、食べられるいくつかのきのこを覚えていると森がまったく違って見える。それは花でも岩でも同じことだが、食べられる、という実用性があるかないかはやはり大きなポイントである。

釣りは子どものころに少しやった程度だし、ましてや狩猟などはしない。けれど、きのこ採りと山菜採りは、手軽にそのエッセンスを体験できる行為だと思う。狩猟採集ではなく採集オンリーなのだが、きのこを探す嗅覚と鋭い視線は、獲物を探す狩人のそれだ、と思う。

きのこ採りと山菜採りが良いのは、家のまわりやクライミングのアプローチで行なえるからである。わざわざ出掛けていかなくても楽しめるというのが、出不精な自分にはちょうど良い。

きのこを採るようになったのは、友人からもらったきのこがあまりにも美味しかったからである。それ以来、イグチの仲間を中心に採るようになった。その知識はイタリアでも大いに役立ってくれ、毎日極上のきのこパスタを堪能できた。

ハナイグチ、ベニハナイグチ、アミハナイグチ、キイロイグチ、ヤマイグチ、イロガワリ。そして先日、イグチの王様とも言えるヤマドリタケを初めて見つけた。ヤマドリタケはヨーロッパではポルチーニと呼ばれ、高級きのこの代名詞である。イタリアではポルチーニのピザやパスタがレストランのメニューに並んでいるし、スーパーでも乾燥ポルチーニは結構なお値段で売られている。そんなきのこを、歩きながらふと見たところで見つけたのである。もちろん初めて見るきのこである。生憎、図鑑を携行していなかったのでいろいろなサイトで調べて同定してみる。最近は写真を撮って同定するアプリもあって、自分の見立てとアプリが一致するかどうかを基準に半信半疑で活用している。

さて、ヤマドリタケ、に見えるきのこである。大型でプリっとした傘。根元のほうにいくに従って太くなる柄。どこをとっても存在感たっぷりのそれはまさにイグチの王様といえるほどの風格がある。白っぽい色も品がある。微かに甘い香りがする。ネット検索でもほとんど同じ写真が出てきて特徴もそっくり。アプリではドンピシャでヤマドリタケという判定。

さっそくバターで炒めてポルチーニパスタを作ってみた。たしかな歯応えとふわりと香る独特な甘い香り。その香りをどう表現したら良いかさっぱりわからないが、いままでの人生で食べたきのこパスタのなかでも最高の味わいだった。確かに、これは高級食材として珍重されるわけである。

その味にすっかり取り憑かれ「ポルちゃん、ポルちゃん」と呼びかけながら山を徘徊している。が、それ以来ポルちゃんには出合えていない。そしてふと思う。こんなふうにきのこに心を奪われてしまうこと自体が、本当のきのこの毒性なのかもしれないと。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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