ついにゴアテックス プロも「ePE」に。2025年秋冬シーズンから新素材へ切り替え
PEAKS 編集部
- 2024年10月07日
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現在進行形で進んでいる、ゴアテックスの“新素材”への移行。
より環境負荷の小さいプロダクトを——というPFASフリーの流れのなかで近年、ePEという新たな素材が採用されてきている。
そして9月、日本ゴアが発表したのが「2025年秋冬シーズンより、ゴアテックスプロにもePEメンブレンを採用する」というもの。
果たして、ゴアテックスにどのような変化が起こっているのだろうか?
日本ゴアが開いた説明会のようすをリポートする!
※PFASはPFC(パーフルオロやポリフルオロ化合物の略称)を含む、フッ素化合物を表す。
編集◉PEAKS編集部
写真提供◉日本ゴア
PFASフリーのミッションに応える、新素材ePE
耐久防水性、透湿性、防風性、そして長い製品寿命。
ゴアテックスプロダクトが備えるこれらの特徴を可能にしているのが、ゴアテックスメンブレンだ。表生地と裏地の間に貼り合わされた非常に薄い膜(=メンブレン)のことで、雨をはじめとする外からの水の侵入を防ぎつつ、汗などによるウエア内部の水蒸気を外へ逃がしてくれる。
その主素材として採用されてきたのがePTFE(Expanded Poly Tetra Fluoro Ethylene=延伸ポリテトラフルオロエチレン)。“Fluoro”の語からわかるようにフッ素化合物だ。1969年の発明以来、半世紀の長きにわたって組み込まれ、ゴアテックスプロダクトの中枢を担う素材となってきた。
しかし、そのフッ素化合物は近年、自然環境への残留が指摘されており、欧米ではすでに使用の制限、禁止を定める規則が発表されてきている。そのため、フッ素化合物を使わない製品開発を進めよう——という環境配慮型のプロダクトが目指されており、「PFASフリー」の動きがアウトドア業界でも進展しているというわけだ。
それでも、まだ問題があった。
上の記事でもお伝えしているとおり、これまでの「PFASフリー」といえば、主として生地表面の撥水加工技術にかかわるものだった。そもそもメンブレンの主素材としてePTFEを採用している限り、「PFASフリー」は達成されることがない。つまり、求められたのはePTFEに代わる新素材の開発だった。
開発期間、10年。いくつかのアウトドアメーカーとタッグを組んだ研究開発の末、ついに誕生した新素材がePE(Expanded Poly Ethylene=延伸ポリエチレン)となる。
より環境にやさしい、新素材のサステナビリティ
ePEの採用により、劇的な進歩を見込んでいるのがサステナビリティ。プロダクトがPFASフリーになるのはもちろん、メンブレンがより薄く、軽くなっているために、製造時にかかる二酸化炭素排出量を削減できる。
耐久防水性など、従来のゴアテックスプロダクトが発揮してきたパフォーマンスの水準も変わらず、これまでどおりの性能を期待できるという。
ただ、PFASフリーのプロダクトは、皮脂汚れを防ぐ撥油性が下がることも事実。これまでと同様に、長持ちさせるためにはこまめなお手入れが重要になってくる。
撥水加工においても2018年から始まっているPFASフリーへの切り替えと合わせて、より一層の環境負荷軽減が進展中だ。
2025年秋冬からは“次世代”ゴアテックスプロに
新素材であるePEへの移行が現在進行形で進むなか、今回発表されたのが「2025年秋冬シーズンより、ゴアテックスプロにもePEメンブレンを採用する」ということ。
ゴアテックスプロダクトには、アクティビティの用途や強度に応じた3つのカテゴリーが設けられている。上表右の「GORE-TEX プロダクト」は、タウンユースや日帰り登山などの一般的な用途。
残りのふたつはより強度が高く、負荷の大きいアクティビティに対応するもので、「GORE-TEX Performance プロダクト」は、トレイルランニングなどの激しい有酸素運動を伴うアクティビティを想定している。
「GORE-TEX PRO プロダクト」は、雪山登山やアルパインクライミングなどのもっとも過酷な環境下での活動を想定したものだ。
ゴアテックスプロダクトとゴアテックスパフォーマンスは、ePEを採用したプロダクトが先行して展開中で、その流れにゴアテックスプロも続くことになる。
もっとも高い性能が要求されるカテゴリーでも、従来の機能を損なうことはない——ラボテストやフィールドテストを数多く行ない、機能水準の担保が確認されたからこそのePE採用であり、次世代ゴアテックスプロの登場となる。
登山家・竹内洋岳さんを招いたトークセッションも
説明会では、登山家の竹内洋岳(たけうち・ひろたか)さんをゲストスピーカーに招いたトークセッションも行なわれた。
ゴアテックスをはじめて知ったのは、山岳部員だった高校生のころという竹内さん。
進行役の日本ゴア・大貫英昭さんから、「プロ登山家として、ゴアテックスの素材に求めるパフォーマンスとは?」と問われると、
「それは、圧倒的に耐久性になりますね」と返答。
ヒマラヤでの高所登山、巻き込まれた雪崩から生還した際のエピソードも踏まえつつ、ゴアテックスのウエアは「人間が生きていける環境をウエアの中に保ってくれる、まさに盾となる存在」と語った。
「今後のゴアテックスに期待することは?」という最後の質問には、
「ゴアテックスを着ることでユーザーである私たちは“進化”し、人類が本来、生き残ることができない標高8,000mの世界にも立ち入ることができる。私たちが未知に挑戦するように、ゴアテックスには私たちの可能性にも挑戦してくるような、期待を裏切る“進化”を期待しています」
とトークセッションを締めくくった。
素材の移行期にあり、大きな変革が進行中のゴアテックス。
来秋から登場するゴアテックスプロをはじめ、これからの技術的な革新にも注目だ。
【GORE‑TEX】次世代GORE‑TEX
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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