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あともうちょい|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #39

やはりか……というのが第一印象だが、例年ならばそろそろ稜線に雪がちらつくはずなのに今年の山はまだその気配を感じない。長期予報においては今シーズンの降雪量はやや多いという山岳関係者には明るい情報なのだが、現時点ではやきもきする状態が続いている。季節感が乱れてきている近年においては致し方ないのかもしれないが、極力降るべきときにはちゃんと降っていただきたいものである。山に降った雪はいずれ下界に住む我々のもとに水として届く。山の変化は日常と無関係ではないのだ。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

あともうちょい

冒頭からシリアスな話題に触れてしまったが、今回に関しては本文に関係ない。ただこのエッセイを読んでいる方々には少なからず山の現状を伝えることができればと思いつぶやいた。

さて、稜線上で営業している山小屋もぼちぼち小屋閉めに向けて水場を封印するところも多くなってきた。日中降ったであろう雨は、陽が沈んでいるあいだに薄氷になるほどに冷え込んでくる。秋羽のライチョウたちも足元から次第に断熱性能の高い豊かな冬羽へと換羽を進め始める時期である。ただ冬羽は純白。生息域が雪で白く染まらなければ目立って仕方がない。身を隠すことで生存を維持している彼らにとっては死活問題であるため、そろそろ雪がほしいわけである。

かれこれ4年前になるが、秋群れのライチョウの作品バリエーションを増やそうとシチュエーションを模索していた。作品撮りに通っている山域はいくつかあるが、秋のこのころはたいてい「ココ」と定めた場所で張り込む。いろんな場所のいろんなライチョウを見たいという欲求もあるが、長く彼らと付き合っていると、山域ごとの習性や個体の個性も確認できるため、私の場合は量より質を選んでいる。より深く彼らを理解するためには同じ個体を追いかけた方が良いからだ。

塵も積もった修練のおかげもあり、彼らが起こすアクションの予備動作みたいなものを察知することができる。「こうするときはこう」のように具体的に説明をしろというのは難しいが、彼らの表情や目線の動き、姿勢や空気感でおおよそ見当がつくわけである。

この日はちょうど良いところに昇る朝陽に照らされたオスがたずんでいた。朝のライチョウの動きは活発である。日中天気がよいと鳴りを潜めてしまう彼らも、朝と夕は周辺住民による会合(生存確認と近況報告や情報交換のためと思われる)が開催されることが多いため、比較的高確率で会うことができる。事前の下調べから出現場所を絞り込み、無事に彼との対面に成功する。ほかにも数羽のライチョウが左右に点々としていたのだが、このときは彼に狙いを定めて動向をうかがう。

私のセンサーの反応は、まもなく右か左に飛び上がると読んだ。向かって左には昇ってきた朝陽が、右は陽に焼かれた赤い山肌が広がっている。また地面には少し前から積り始めた雪がこがね色に輝いている。あとは彼がどういう軌道で飛び立つかだ……。しばし待つこと、彼が岩を蹴った。

今回の作品は、昇る朝陽に向かって飛び立つ雄ライチョウの一枚である。
まだまだ改良の余地があるが、こういうのはなかなか撮れるものではない……。というよりもこういう場面に出会えるほうが稀である。彼らの出方次第という運要素も絡むが、思い描く「こういう構図」を実現するべく「あともうちょい」を突き詰めていきたいと思う。

 

今週のアザーカット

今年も無事に緑書房さんからライチョウカレンダー「雷鳥 神の鳥の四季2025」が発行になりました。ちなみに次が出せるかは売り上げ次第なので、ご購入の際はおひとりさま1ダースほどお求めいただくと大変嬉しいです(笑)。全国の書店を中心に発売中で、通販サイトAmazonさんなどからもお求めできます。よろしくお願いいたします。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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